建築家を目指した男の話

あるところに有名な建築家がいた。彼の作る建築物は万人に受け入れられる美しさであったため、多くの人から支持を受けていた。また、あるところに独創的な建築家がいた。彼の作る建築物は決して万人からの評価は得られなかったが、独特な感性を生かした唯一無二の設計は一部の人々から熱烈に支持されていた。ある男がいた。その男は独創的な建築家の熱烈なファンの一人だった。彼はそのカリスマ性に憧れ、自身もそうなりたいと思い建築家を志した。しかし、彼には独創的な建築家とは違い強い承認欲求があった。今までのどの建築家よりも評価されたい、そう思い有名な建築家がなぜ有名なのかを自分なりに分析し、それも自身の建築物に取り入れた。有名な建築家の幅広い人気と独創的な建築家のカリスマ性の両方に憧れた彼の作る建築物は、結果として万人からの評価は得られず、誰かの心に強く刺さることもなかった。それどころか、それを見た多くの人は彼の作品を建築物として認識すらしなかった。晩年、彼は思った。どっちつかずだったからいけなかった。せめてどちらか片方のみを目指せば、多少は何かしらの評価を得られたのではないだろうかと。しかし、彼は重大なことを見落としていた。彼が作る建築物には柱がなかったのだ。柱がない彼の作る無機物の寄せ集めを、周囲の人は建築物として認識していなかったのだ。

彼らが作る建築物は、ツイートと呼ばれている。

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