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パズル13(2次小説:類つく)

このお話は花より男子の2次小説(類つく)です。作者様・出版社様とは関わりがありません。妄想の世界へようこそ…

〜楓視点〜
私はホテルの自分の部屋で昼間の光景を思い出していた…つくしさんは部屋の窓いっぱいに広がった海を見て震え気を失った。まだあの子の心の中には暗闇が広がっているんだろう

**回想**

司が牧野つくしの記憶だけを失った時、これであの娘との縁が切れるとホッとした…はずなのに心が少し痛んだ。初めの頃は彼女も司に思い出してもらおうと 必死に頑張っていたようだけど、司の態度は酷かった。いつもイライラして横暴で乱暴だった
「タマ、司は今日も暴れたようね。メイド達も怖がって部屋にも近寄れないと聞いたけど…どうしちゃったのかしら?」

タマ「お言葉を返すようですが…坊ちゃんは元に戻っただけですよ、つくしと出会う前の坊ちゃんにね。あの子…とうとう今日坊ちゃんにお別れを来たそうです。メイド達が泣きながら言いに来ましたよ」

タマが辛そうに言った…忘れていたわ、司は元に戻ったんだったわね。
牧野つくし…司にとってあの子はどんなに大きな存在だったんだろう。私は司をNYに連れて行く事に決めた。その前に何故だかわからないけれど私は彼女に会いに行き『今度会う時を楽しみにしている』なんて自分でも驚くような言葉を口に出していた。司はNYに行ってからも酷かった…昔以上に冷酷で誰も信じず自分以外の人間は全て敵だと感じているように見えた。
その頃はもう司を救えるのは 牧野さんしかいないと考えていた。
でも…このままの司では牧野さんを傷つける司の記憶を戻す事が先決だと精神科医とも相談した。そう思うと牧野さんの事も気になり…来るべき日に備えて見守ろうと決めた。 
まずは定職を持たない父親に仕事を与えて自立させ、彼女と離れて生活する様に仕組む。突然の好条件の話に家族は喜んだけど、彼女は美作、花沢などを疑っていたみたい。流石に私が裏で絡んでいたとは思ってもみなかったでしょうね。 女子寮を用意したのは司の友人達が彼女に好意を抱いていると報告を受けたからそれでも彼女の気持ちまではどうする事も出来ず…類君と交際を始めたのよね。

類君も社会人になって私の所にも噂が入るけどどれも将来が楽しみ花沢Jrと言うものばかりで…仕事は出来るが冷酷で非常と噂の司とは対照的だった。もし…あのまま彼女が司の側に居てくれたら、類君の名声は司のものだったかもなんて事も考えてしまったわ。司は精神科医に通っても記憶が戻る気配もなかったわ
いつしか私は司のため…と言う言い訳も頭から消え彼女の報告書を読む事で安らぎを感じていたし、類君の彼女への愛情も信じられこのまま幸せになって欲しいと母親の気分で見守っていた。
一方、司にも縁談がたくさん持ち込まれるようになり、司は相手には興味が無く仕事でプラスになる縁談を選んで23歳の誕生日に挙式と、トントン拍子に話がまとまった。
この決定がもう少し遅かったら…今ならそう思うけれど、あの時はこれで司も少し変わるかとホッとしていた。結局は何も変わりはしなかったのだけれど…

あの日の事は今でもよく覚えている。
西田から至急の電話が入ったと受話器を取ると彼女の住む女子寮の管理人の声
「お仕事中に申し訳ありません。実は…牧野さんが急に寮を出ると言ってきまして…それもこれから荷物をまとめ明日の朝には退去すると言うんです。
次に住む所を聞いても教えてもらえませんでした。彼女らしくない気がして連絡しました。」
胸騒ぎがして、彼女の報告をさせている探偵に直ぐに様子を見に行ってもらった。朝出発と言っていたのに探偵が着いた時には誰かが迎えに来て車に乗って走り去る所だと連絡が来た。そのまま追跡を頼み3時間ほど走ったインターチェンジで車が止まり運転席の人間はトイレに行ったが彼女は降りて来ない…探偵は機転を効かし車に追跡信号を付けて離れ、少し離れて追跡すると言って来た。
途中から九州行きのフェリーに乗り込んだのを確認、怪しまれる事を警戒して他の探偵が飛行機で先回りして追跡を続けてくれた。車は田舎道を走り山へと続く一本道に入ったので追跡は無理だった。
そこまでわかった時点で西田に救出を頼むと

西田「社長、その場所でしたらSPの山中の出身地のはずです。彼にも手伝ってもらいましょう。」
その偶然が牧野さんにとって幸運だった。山中の両親はその一本道の入り口近くで農家を営んでいるからと、親に電話をしてくれ

山中「社長、あの山の中に一軒別荘があるそうです。私有地で長い間使用していないようでしたが、今日からそこに住む人が居て、両親が食材を運ぶ契約をしていました。週に一度様子も報告する事になってるそうです」

「そう…契約者は誰なの?」

山中「東京の病院長だと言っています。」

その時は理由がわからなかった。でもとりあえず彼女の身が安全な事がわかり ホッとしたわ。私は直ぐに山中を地元に戻し牧野さんを守る任務を与え、西田にはその医師を調べさせ牧野さんを隠しているのが白井と言う男だと突き止めた。彼が花沢社長の友人だとわかり、牧野さんと類君を別れさせ白井の娘と結婚させるつもりだとわかった。

「彼女はなぜ、そんな山の中にいる事を承知したのかしら?」

不思議だった。地元に戻った山中は両親にはケガのリハビリで帰って来たと  話し、彼女には見つからないように様子を見て報告してくれた。
部屋には電気、ガスは通っているがTVのチューナーなどはなく、外の情報は何もわからないだろうとの事。一本道に通じる門には鍵が掛かっていて逃げ出す事は出来ない。親に聞いたが新聞や雑誌類を届けるのもNG。精神を病んでいるようなので話しかけて刺激を与えるなと言われたらしい。

「山中から送られて来た写真を見たけど…あんな場所に長く居たら本当におかしくなってしまうわ…でも花沢社長が絡んでいるならこのまま少し様子を見ましょう。
白井達は山中の両親に任せて顔も出さないようだから反対に利用するわ
西田、牧野さんの情報は完全にシャットアウトしてちょうだい。
類君やあきら君達が探し出せば、白井が動き出す危険があるわ。
それと…山中に白井から送られて来た物は全て道明寺に転送するよう伝えて。
薬などはもちろん、飲物類も」

山中は両親に詳しい事は話さなかったみたいだけど、夫妻は2、3回会ううちに 依頼主より彼女を信頼する様になっていき、白井への報告も偽っていたらしいわ。私は時間を持て余す彼女に毎週英語の音声テキストを食材と一緒に荷物に入れる指示を山中にしたけど、何も言わず届けてくれていたの。
『食材を届けに行くといつも英語の歌や会話が聞こえて来るよ』こっそりそう教えてくれたらしい。真面目な彼女は必死に聞いて勉強していたんでしょうね…

私の予想通り類君は必死に探し、あきら君や総二郎君にも協力してもらった様だけど、もちろん何も出て来なかった。それでも類君は司には頼らなかったわ  必死に探す類君を見ても花沢社長が動かないから私も知らんふり…もしかしたらその間に司の記憶が戻るかも…そんな期待があったのも事実。
記憶も戻らず彼女の事を話す事も出来ないまま、司の縁談が進んで意外だったけれど、司も受け入れ結婚が決まった。つくしさんを救い出しNYに連れて行く事も考えたけれど今の司に彼女を幸せにする事は無理だと諦めたわ。本当ならこの時類君にあの場所を知らせてあげれば良かった…

そのまま季節は巡り春になったけれど牧野さんはまだあの家にいた。英語の音源テープは毎週新しいものと交換しかなり高度な会話も理解出来ている様子   山中は逃げ出す為に反対側の山道を整理しながら、毎日彼女の様子を報告してくれたし、山中の両親もすっかり彼女と仲良くなって週に一度会うのを楽しみにして、手作り料理を差し入れたりしているらしい。彼女は大丈夫だと確信していた
一方、類君は仕事も手につかないようで悪い噂ばかり耳に入って来た頃

西田「社長、類様の結婚のニュースがネットを騒がせております…挙式の写真もあります!」

驚いて私も確認したけれどタキシードを着た類君とウェディングドレス姿の女性、花沢夫妻も礼服だった。無表情な類君の顔を除けば結婚式の写真そのもの

「きっと新聞にも載るわね…花沢社長はこの子を選んだって事ね。 西田、 牧野さんの身が心配だわ。あなたは直ぐに日本に帰国してちょうだい。私の予定も明後日から日本だったわよね?」

西田「はい。司様にも同行いただき日本での新事業の打ち合わせになっております。明日の事は第二秘書に伝えておきます、失礼します。」

珍しく西田も慌てた様子だったわね…彼も私のそばで牧野さんを見ていたから私と同じような気持ちになっているのかもしれないわ
白井の手が伸びる前に救い出してちょうだい。祈る思いだった

パズル13(回想シーン:つくし22歳)


花より男子の類ファン、原作の切ない類を幸せにしたくて類スキ向けにお話を書き始めました。老化防止の為に妄想を巡らせるおばちゃんです。拙い文章ですが応援していただけると励みになります。よろしくお願いします