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ピアノを続けるには?【インタビュー:T.M.さん】

ひとつの事を続けるって難しい。

私の場合、音楽が好きで歌や楽器などいろいろやってきました。が、一つの事を続けることはどうしても出来ず、苦労してきました。

今回、会社員をしながらジャズピアノを続けているT.M.さんに、ピアノを始めた経緯や、今も続けられているコツをお伺いしました。

<T.M.さん 30代>

ジャズピアノは生涯の趣味。学生時代に、音楽の奥深さと面白さに気づき、ジャズピアノを演奏しています。

・普段はどのようなことをされていますか?
趣味でジャズピアノを弾いています。主に平日夜と休日です。
職業は会社員で、ソフトウェアエンジニアをしています。昨年の秋に結婚して、引越を機にアパートに入る大きさの家具調電子ピアノを購入し、自宅でも弾いています。

・これまでの音楽歴を教えてください
 小学一年生の時、友達に誘われピアノを習い始めました。教室では真面目に習っていましたが、バイエル(教則本)を楽しいと思えず、自宅では一度も弾かず。結局、1~2年でやめました。
その後、高校時代にミスチル(Mr. Children)に出会いました。通販でエレキギター20点セットを購入、「終わりなき旅」の前奏を一人で弾いて楽しんでいました。
大学でギター部に入りました。メインはクラシックギターでしたが、ベース、ドラム、キーボードなど多くの楽器に触れ、演奏しました。ここでピアノ熱が再燃します。
働きだしてしばらくは一人でピアノを弾いていました。ところが、たまたまジャズセッションのイベントを知りました。(セッションとは、ミュージシャン達が集まって即興的に演奏する集まりのことです。)弾けると思って参加したところ、全然弾けませんでした。
周囲との力の差を感じ、初心者向けのセッションを探し参加し始めました。その後、ジャズピアノ教室にも通い、それから10年近く、セッションに参加し続けています。
最近では、自分の結婚式で夫婦デュオを披露しました。また、ピアノ教室の発表会に初めて家族を呼び、演奏を聴いてもらいました。緊張しましたが、喜んでもらえるやりがいも感じています。

・小学生の頃には楽しめなかったピアノを、大学で自ら再開されたのはなぜですか?
そうですね、好きな曲や弾きたい曲があれば、自然と弾くようになると思います。
自分の場合、小学生の頃は曲を知らず、弾きたい曲もありませんでした。練習曲も楽しくありませんでしたし。
ピアノ再開のきっかけは大学の部活です。ギター部はいろいろな曲を演奏する部で、自分も様々なCDを聴いていました。その中で、たまたま買ったジャズのコンピレーションアルバムの中にあった1曲に心を打たれました。
ビル・エヴァンスというピアニストの「ワルツ・フォー・デビィ(Debby)」という曲です。デビィはビルの姪っ子の名前です。この曲は自分の胸にグッときました。ビルのピアノがあまりにもカッコよくて、何度もリピートして聴きました。

そうしてまたピアノをやりたいと思ったタイミングで、ギター部の演奏会の準備が始まりました。迷わずキーボードに手を挙げました。曲はクイーン(Queen)の「ドント・ストップ・ミー・ナウ」です。難しい曲でしたが、練習用にキーボードを買い、自宅でひたすら練習して。弾けて良かったと思いました。

・自分から好き、弾きたいと自然に思えることが大切なのですね。Mさんの一途さも感じられました。ジャズやピアノがMさんにもたらしたものはなんでしょうか
ジャズピアノは、暮らしを豊かにする、一生続けられる趣味です。自分の生き甲斐のひとつになっています。たまに弾けない日も続きますが、自然と弾きたくなります。
また、世代や会社を越えた人たちと交流ができるのも魅力です。働き始めると仕事の限られた人間関係で過ごしがちです。セッションでは、世代も仕事もバラバラな方々と、いろんなジャンルの曲を一から作り上げる一体感があります。演奏後の雑談も含めて、自分の世界を大きく広げてもらえたと感じています。

・ピアノの演奏に、これまでの経験で役立ったものはありますか?
そうですね、他の楽器の経験はすべて役立っています。特に、ギターでコード(和音)を知っていると、ジャズピアノは格段にやりやすくなると思います。
最初のピアノ教室では、音楽記号や楽譜の読み方を習いました。その後、エレキギターを弾くためコードを独学しましたが、ギター雑誌でコードや運指を調べ、手探りで弾く時、楽譜が読めるのは助かりました。
そしてジャズピアノを弾くようになると、ジャズの楽譜にはピアノ譜がありません。楽譜には簡単なメロディとコードのみ。どう弾くかは自由ですが、コードの理解が前提になります。自分は楽譜もコードも体系的に理解できていたので、早く馴染めたように思います。

ピアノに限りませんが、自分の好きな言葉に「日々是好日(ひびこれこうじつ)」というのがあります。禅の言葉です。
楽しい日、辛い日、どんな日も後で振り返ると学びがあったり、貴重な日であるという意味です。身の回りで起こったいろんなことを活かせるように過ごしていきたいなあ、と思っています。

・毎日を前向きに過ごされているMさんの姿が目に浮かびました。Mさんが、ピアノ演奏やセッションで心がけていることはありますか?
「呼吸」です。気持ちのこもった演奏を通じ、想いを届け、自分も楽しみたいと思っています。ノッていると、自然とポジティブになり「いいな~」と感じられます。そのために緊張は大敵なので、呼吸して心を落ち着かせています。そのほうが健康的にも良いし。

技術ではないとも思っています。いろいろな演奏を聴くと、技術は凄いけどそれだけの人もいれば、技術はそこまでなくても凄い人、もいます。
自分も、出したい音を出せることを意識しています。まぐれで良い音、ではなく、練習でも本番でも意識して良い音を出せるよう心掛けています。

・気持ちを届ける技術を磨かれているのですね。Mさんのこれからやりたいことなど教えてください

今までの音楽経験をまとめ、形にしてみたいと思っています。なぜかというと、ジャズピアノや、ピアノでセッション参加してみたい初心者の方々の役に立つと思うからです。
ピアノは何でもできる楽器ですが、反面、要求される事も多く、敷居が高く感じられて、自分はそれで苦労したこともありました。ジャズセッションのピアノは上手い方が多く、ある程度弾けないと行きづらいセッションもあると感じます。でも、練習する場や方法がなければ、初心者は初心者のまま、前に進めなくなってしまう。
ピアノを好きになり、セッションでピアノを弾けるようになりたい、でもどうしたらよいのかわからない…と悩んでいる方々の助けになるものを作ってみたいと思っています。

(インタビュー:2020年3月7日)

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自分の周りにいる、素敵な生き方をされていると感じる方々から、その方の考え方やしてきた事、大切にしていること、などのお話をお伺いしています。


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