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世の中の波はいまどこにある?【インタビュー:K.I.さん】

『キャリアの相談に乗る専門職「キャリア・コンサルタント」のキャリア』って、ご存じですか?

キャリア・コンサルタント養成講座の事務局を務められており、ご自身もキャリア・コンサルタントでもあるK.I.さん(以下Kさん)は、いつも活発に受講者や卒業生へのサポートをしてくださり、また常に最新の雇用にまつわる社会問題へ真剣に取り組まれています。
いつもは私が相談する側ですが、今回はKさん自身のキャリアや考え方について、お話を聞かせていただきました。

<K.Iさん(50代)>

キャリア・コンサルタント養成講座事務局、キャリア・コンサルタント(以下、キャリコン)

・インタビューをお引き受けいただきありがとうございます!よろしくお願いします!

こちらこそ、よろしくお願いします!

・Kさんの簡単なご経歴を教えてください。

キャリア・コンサルタント養成講座の事務局は、かれこれ15年程になります。
実は、高校時代には建築家かバレリーナになるつもりでした。20代はインテリアコーディネーターをしていました。その後30代は子育て、パートでいろいろ働きながら心理カウンセリングを学び始めました。その後DV被害者支援団体のボランティアからキャリア支援が必要な事が分かり、今の事務局へ転職して15年目です。

※DV…ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力の意味。

・建築からキャリコンの繋がりが気になります。建築家かバレリーナになりたかったのはなぜですか?

子供の頃から、間取り図を描くのが好きだったのです。ドンドンドンドンアイデアが湧いて、一人でバンバンいくらでも描けた。
でも、勉強したら描けなくなっちゃって。勉強したからこそなのだけど、どういう人がどういう風に暮らしたいか、暮らしの器である家を描くための制約条件とも言える、家の主人公が必要になったのです。そこで、興味が建物から人に移ったようなところもありました。

今は無いけど、昔のインテリアコーディネーターは年齢制限がありました。人生を扱う仕事だから、そういうコミュニケーション能力の基準として設けた、と当時の先生には言われたけど…そのせいで第1回試験は資格を取れなくて、悔しかった!

・建物から、人生に興味を持たれるようになったのですね。子育て時代に心理カウンセリングを学ばれたのはなぜですか?

30代は、私の人生のライフラインチャートが一番低い時期でもありました。
学びのきっかけは、保育園のお母さん仲間と「親業」「女性のための人間関係講座」を受けたこと。それまで、自分は苦しい思いをしていたのだけど、講座を受けてから、その苦しい考え方を手放せるようになりました。
自分が学ぶことで救われて、心理学をいろいろ勉強すれば山ほど出てきて、もうドンドンドンドン学びの方向に一直線。カウンセリングの世界の扉を開いた感じでした。

・ご自身の体験から、カウンセリングの勉強を始められたのですね。DV被害者支援団体の経験からキャリア支援を学び始めたのはなぜですか?

もう20年近く前ですね。当時はセラピー系のカウンセリングが重要視されていました。その人が備え持つ力を引き出すものです。でも、自立支援にはそれだけじゃ足りません。
シェルターは、傷つき悩んでも立ち上がれない時の一時的な避難場所。長くはいられないし、自力で生活して暮らすほうがいい。
シェルターを出るための生活保護には、アパートを借りるための手当はつくけど、実際に借りるには収入を得る必要がある。その収入を得て自立出来るようになるには、その人の持つ力に加えて、その人のキャリア開発も必要なんです。

とはいえ、最初は私も心理カウンセリングこそ大事だと思っていました。考えが変わったのは、ボランティアをしている時、今でもお世話になっている先生からキャリアカウンセリングの勉強を勧められたこと。最初は関係ないと思ったけど、実際にやってみたらすごく大事!と思えた。両方とも大事なのよね。
それで勉強して、当時は団体職員だったけどブラックな環境で、辞める!と決めて転職、今の会社に入りました。

・キャリコンとの出会いはK.I.さんにとって大きな転機だったのですね。養成講座の事務局を選んだのはなぜですか?

私がこの仕事を選んだのは、カウンセリングを仕事にできるから。入社した当時は3人体制だったけど、徐々に減り、今は一人でやっています。

・そんなに大変なお仕事なのですか?

大変で辞めちゃう訳ではなくて、配置できないだけかな。ウチは株式会社だけど、この事業は目標利益にたどり着かない。
平成28年まで民間資格を出していた時も、儲からなくて。でも事業そのものをやめると、有資格者達がお金を出して勉強した資格がただの紙ピラになるし、実際に事業をやめた会社で資格を取った人達が大変な事になったのも見ました。だから続ける方法を模索してきたし、やめる時の始末も自分がきちんと関わりたかった。
平成28年からは国家資格になったけど…今度は、雨後の筍のように養成講座が増えてしまって。講座自体を譲渡する話もあったけど、それも難しくて。

それでも、ウチは国の認定を受けられている。認定に値するものがある、協力していただいている先生方がいるということ。だから、続けられるうちはここでやっていこうと思っています。

・キャリコン事務局として、やりがいを感じるのはどのような時ですか?

受講生の成長を見守れることです。私たちの講座は、集合の場の中でも一人一人を大切にするように上手く作られていて、講師の先生方も考え方に賛同して集まってくださっています。
特に、合宿形式のキャリア開発ワークショップは、一人一人が自分と向き合い、自分を大切にする場。悩みながらも自分の中心を確認し、終わる頃にはシャキッと成長していくのを見られるのは本当に幸せです。

人間ってどんどん変わるもの。キャリアコンサルティングでも、2回目の面談をすると、前回は悩んでいた人が全く別人みたいな顔で現れたりします。人の成長や変化を目の当たりにできる、すてきな仕事です。

・キャリコンは、社会でどのように役立ちますか?

キャリアコンサルティングは、メンタル不全を起こす前の予防にもとても役立ちます。
例えば、組織ではさまざまな非常事態が起きています。今だとコロナ対策で日常が継続できません。他にも、人身事故など局地的なものも含め、私たちが知らないだけで、いろんな所でいろんなことが起きています。
こういう時に、一人一人に役に立つ助言を提供でき、ラクに考えられるようになる。未来に生きていくための相談ができるって、個人にも組織にもすごく力になることです。

・Kさんは、キャリコンにどのようなことを期待していますか?

厚生労働省のキャリコン10万人計画で、企業の中に一社1人位の配置になるといいと思っています。キャリコンは、その企業の中でチェンジエージェントとして発言ができることが大事だと思っています。

でも、キャリコンは苦労も多い。制度も進化するし、なにより心理の専門職として企業に入るというのはものすごく大変。平常時にはなかなか話を聞いて貰えないと、私も身に染みて経験しました。だからこそ、試行錯誤しているキャリコンをもっと援助し、自信を持ってもらいたい。そのためのネットワーク作りにも取り組んでいます。

・Kさんは、これからの将来どうなりたいというものはありますか?

そうですね…将来は、自分の今の延長線上だろう、という感じかな。これから先は、今の続きだと思う。
これからも興味のあることには手を出していくし、生きている間に、あとどのくらい手を出せるかな、時間配分をしていけるかな、という感じ。ウフフ。

・やりたいことに溢れているのですね。昨日一緒に参加したマインドマップ講座では、とっても楽しそうにマインドマップを描かれていましたよね。

そうなの。私の周りで、あなたも含めマインドマップを使いこなしている人が何人もいて、私も真似したいとずっと思っていたから。

マインドマップを実際に描いてみて、驚いたこともありました。「好きなこと」を描いたマインドマップに仕事がひとつも出てこなくて、ストレスコーピングのことばかり出てきた。(ストレスコーピング=ストレスへ対処する技法のこと。)
私は趣味を仕事にしたのだけど、長く働くうち、仕事と好きを意識して分けていたってこと。好きな事と仕事が一緒なら幸せで楽しそうだけど、実際はそれだけじゃない、と改めて思いました。
マインドマップは、心の動きと紙に出てくることの両方を感じられる。可能性を感じて、いま私の中で盛り上がっています!

・最後に、今一番時間を使いたいことは何ですか?

そうだなあ、家にいる時間かな。孫が生まれたので一緒に過ごしたいし、ハイハイが始まる前に部屋の断捨離もしているけど、昔の本や記録が出てきて手が止まっちゃう!

在宅になってからSNSもLINEグループも賑やかで、オンラインミーティングもほぼ毎日やっています。オンラインは頑張って使っています。感覚的には携帯からスマホに変えた位という感じ、使い方を教えてもらえれば使える。使えなければ次の世界は無いとも思うし、もし講師の先生がアプリを指定したら合わせなきゃ。
新しもの好きもあるし、これからも世の中の波は今ここかと探して乗っていきます。

(インタビュー日:2020年5月6日)

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編集後記
Kさんのインタビューでは、ここに書ききれない(書けない)たくさんのご経験や面白エピソードもお聞かせいただきました。どの話からも、Kさんが多くの方々に支えられながら、日々の中で一人一人を大切にしようとする姿勢や、時代の波に乗ってサーフィンをし続けてゆくバイタリティを感じ、私も前を向こう!と元気をいただきました。
私もキャリコンの一人として、改めて支援のあり方や考え方を思い起こさせていただき、また勉強もさせていただけました。貴重な機会を頂けたことに感謝しています!

写真
丹沢からの富士山(Kさん撮影)


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自分の周りにいる、素敵な生き方をされていると感じる方々から、その方の考え方やしてきた事、大切にしていること、などのお話をお伺いしています。

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