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充満

充満

galaxy20000yearslater series
第二段 『ミーターの大冒険』

第八部 「地球」

第8話 『充満』

あらすじ

ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアや同士ジスカルド・ハニスらのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を除去することができるのか?

 そしていよいよ太陽系外縁部のオールトの雲を抜けて待望した太陽系に突入して行く。


 
 鋭さを増したミーターの推理力は予測通りに土星に遭遇させ、地球のかたわれともいわれる月に不死の従僕の気配を感じさせる。

 そしてついに不死の従僕が太陽系第3惑星地球の大きな衛星、その名も月(Luna )にいることを確信する。

 新たな天体物理学者のミーターは、不死の従僕が月にいる理由を全て「宇宙潮流」理論で纏めあげる。

 そしてミーターは人類と「宇宙潮流」との関わりについて惑星環境の土壌「墾化」現象に言及する。

 ところが、ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は月の軌道目掛けて一直線のコースをとろうとしたところ、手前の火星地表で有機体とロボット(通常のロボットの反応とは違う)の存在をキャッチした。

 ミーターの直感は火星に着陸する選択をする。

 直感は当たった。
 ダニール・オリヴォーがいたのであった。あのアルカディアの念願であった、アルカディアに成り代わってミーター・マロウが不死の従僕に会えたのであった。

 ダニールに誘導されたミーターは、ダニールの月基地に、水の大貯蔵タンクを見せられる。

 ミーターはほぼ単独でオーストラリアのウェルスクリークに降り立つ。ほかにダニールの助手ペイリー・リャンとR・オーロラ・ルナセントが同行したが、彼らの地上での行動は、ミーターを除いて、2時間と制限されていた。

 イルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸のみとなった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 イルミナは、忘れていたニュースをミーターに報せる。歓喜のニュースだった。

 ミーターがその作業の最終段階でかつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

180話

ダニール ミーター君、よくやってくれた。大気中の放射能濃度が40パーセント減少した。君の地球での使命はほぼ達成できた。このように放射能防御服で、我らのロボットでも地上作業が可能な程度に放射能濃度が下がってる。
 このまま雨が降り続けば、もっと下がってくるはずだ。
 残りの作業は、月グループのチクタク作業ロボットたちが引き継ぐ。彼らが砂漠の緑化、マングローブ、珊瑚礁の再生、動物たちの転入、アグロフォレストリーの繁茂、など後の課題を引き継ぐ。

ミーター そうなんですね!よかった。私は、取りあえず、当初の目標をクリアしたんですね!

 不死様、ところでそのことをわざわざ私に伝えるために、こんなところに来られたのですか?他の要件がおありではないのでですか?

ダニール さすが、ミーター君。あのアルカディアの遺志を継いだ唯一無二の逸材。なんという推察力だ!

 放射能除去の最後の〆が二つだけある。それを完遂してもらおうと思って直接ここにきた。
 
 そして二つの〆の完遂後に、他のお願いもある。

ミーター 2万年の時を紡いで来られた不死様のために、何かできることがあるのでしたら、是非お受けいたします。
 まず〆の2つからお聞かせください。

ダニール ミーター君、いいかね、最後の2つとは、あのハリ・セルダンの系譜の起源であるヘリコン星に行ってもらいたい。そしてユーラシア大陸の中央に位置するアララト山の麓の「清き川」のほとりに地球移住者を選んで連れて来てもらいたいのだ。

ミーター 光栄です。最後の〆のお仕事聞いてはやるしかありません。

ダニール そしてもう1つの星に行って、同じように地球移住者を募って、同じく、その「清き川」のほとりに連れて来てもらいたいのだ。
 その星とは、シンナックス星だ。ガール・ドーニックの故郷の星だ。

ミーター いや、また銀河の半球の中間地点まで逆戻りですね!
 しかし、そのことと地球復興、銀河復興とはどういう関わりがあるのですか?
 教えて頂くことはできるのでしょうか、ダニール?

ダニール 要するに、ミーター君、「時を超える絆」だよ!
 ミーター君、よく聞きたまえ。
 地球の復興とは、放射能除去で完成するものではない。地球文明の再開と言ってもよい。
 それに、放射能が除去されたこの地球に、緑の環境が蘇ったとしても、肝心な住居人がいなければ、なんのための放射能除去作業だったということになる。

ミーター なるほど、ごもっともです。

ダニール かつて地球文明の曙に2つに別れた民族がいた、アララト山の麓の「清き川」のほとりで彼ら2部族を原点に戻って会合させたいのだ。
 全銀河の人類の復興の記念としてな!
 それを「時を越える絆」と私は呼びたいのだ。

ミーター そんな大業を、あなた様は、こんな私にお任せになろうとされるのですね。

ダニール そうだ。任せられるのは、君だけだ。銀河の灯火の希望!誉れ高きホバー・マロウの後継者。それは、君なんだよ、ミーター君。

ミーター また目から涙が溢れて来ました。

ダニール それでいい。なぜなら、「歓喜」の次に来るもの、それは「充満」だから!充満とは内心の歓喜が外に溢れて出て、その歓喜を他のものに及ぼしていき、地表を満たして行くものだからな。

To be continued ...

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