NTT 2024年度第1四半期決算分析:NTTのAI新会社「AI-CIX」が描く未来図
■ 企業概要
日本電信電話(NTT)[9432]
・日本最大の通信事業者
・時価総額:約7兆円
・政府出資比率:34.69%
・従業員数:約33万人(連結)
■ 業績ハイライト (前年同期比)
営業収益: 3兆2,400億円 (+4.1%) ※過去最高
営業利益: 4,358億円 (-8.2%)
純利益: 2,741億円 (-27.0%)
EBITDA: 8,153億円 (-2.8%)
【よくある疑問・懸念】
Q1:「過去最高の営業収益なのに、なぜ利益が減少しているのですか?」
A1:
・戦略的な先行投資による費用増が主因:
- 人件費:+747億円(AI人材等の確保)
- 減価償却費:+243億円(5G網の整備等)
- 経費:+695億円
Q2:「通信業界の競争激化の影響は?」
A2:
・総合ICT事業の状況:
- 5G契約数:3,160万件まで順調に拡大
- 光回線契約数:2,369万件を確保
・新規事業での収益確保:
- AI事業:tsuzumi導入提案400件超
- 再エネ事業:現状約23億kWh/年→2030年度目標約80億kWh/年
■ セグメント別実績 (前年同期比)
総合ICT事業:1兆4,769億円 (+1.3%)
地域通信事業:7,389億円 (-2.1%)
グローバル・ソリューション事業:1兆1,121億円 (+9.6%)
その他事業:3,731億円 (+4.6%)
Q3:「どのセグメントに注目すべきですか?」
A3:
・グローバル・ソリューション事業が高成長
・その他事業(再エネ等)も着実に拡大
・既存の通信事業は構造転換を推進中
■ 財務状況
総資産:29兆9,894億円
自己資本比率:33.2%
有利子負債:10兆5,770億円
Q4:「財務基盤は安定していますか?」
A4:
・自己資本比率は健全な水準を維持
・安定的な営業CFを確保
・戦略投資と財務健全性のバランスを重視
■ 株主還元施策
新規自己株式取得枠:
・取得額上限:2,000億円
・取得期間:2024/8/8-2025/3/31
配当:
・年間予想:5.20円/株(前期比+0.10円)
・配当性向目標:40%程度
■ 注目の戦略施策
1. AI事業強化
・NTT AI-CIX設立(2024年8月)
・tsuzumiの商用展開拡大
2. 再生可能エネルギー事業
・現状:約23億kWh/年
・2030年度目標:約80億kWh/年
■ 通期業績予想
営業収益:13兆4,600億円 (+0.6%)
営業利益:1兆8,100億円 (-5.9%)
当期利益:1兆1,000億円 (-14.0%)
■ セグメント別詳細分析
1. 総合ICT事業
営業収益: 1兆4,769億円 (+1.3%)
営業利益: 2,754億円 (-5.9%)
主要指標(2024年6月末時点):
・モバイル契約数:9,149万件
- 5G:3,160万件
- LTE(Xi):4,770万件
- FOMA:536万件
Q1:「5G展開の進捗はどうですか?」
A1:
・契約数は着実に増加
・基地局整備も計画的に推進
・ただし、先行投資による費用増は継続
Q2:「収益性改善に向けた取り組みは?」
A2:
・法人向けソリューション強化
・付加価値サービスの拡充
・運用コストの効率化を推進
2. 地域通信事業
営業収益: 7,389億円 (-2.1%)
営業利益: 917億円 (-17.8%)
主要指標(2024年6月末時点):
・光回線契約数:2,369万件
- コラボ光:1,738万件
- フレッツ光:631万件
Q3:「減収減益の主な要因は?」
A3:
・固定電話収入の構造的な減少
・設備関連費用の増加
・対策:
- コスト構造の見直し
- 付加価値サービスの展開
- 運用効率化の推進
3. グローバル・ソリューション事業
営業収益: 1兆1,121億円 (+9.6%)
営業利益: 586億円 (+0.5%)
Q4:「増収率が高い理由は?」
A4:
・海外事業の拡大
・デジタル化需要の取り込み
・グローバルブランドの浸透
課題:
・利益率の向上
・人材確保
・地域ごとの競争戦略
4. その他事業(不動産・エネルギー等)
営業収益: 3,731億円 (+4.6%)
営業利益: 158億円 (+19.8%)
重点施策:
・再生可能エネルギー事業
- 現状:約23億kWh/年
- 2030年度目標:約80億kWh/年
・不動産事業の収益力強化
Q5:「再エネ事業の見通しは?」
A5:
・風力発電所(122MW)の本格稼働開始
・太陽光発電との組み合わせ
・安定収益源としての期待
■ 各セグメントの成長戦略
1. 総合ICT事業
強み:
・国内最大の顧客基盤
・5G基盤の整備
・研究開発力
注力点:
・5G利活用の促進
・法人向けDX支援
・新サービス開発
2. 地域通信事業
強み:
・信頼性の高いインフラ
・地域に密着した営業基盤
・安定的な収益基盤
注力点:
・運用効率化
・新規サービス創出
・地域のデジタル化支援
3. グローバル・ソリューション事業
強み:
・グローバルな事業基盤
・多様なサービスライン
・高い技術力
注力点:
・収益性の向上
・デジタル需要の獲得
・グローバル人材の育成
4. その他事業
強み:
・多様な事業資産
・安定的な収益基盤
・シナジー効果
注力点:
・再エネ事業の拡大
・不動産価値の向上
・新規事業の創出
■ 重点戦略の進捗状況
1. AI事業展開
確定している施策:
・「NTT AI-CIX」設立(2024年8月)
・生成AI「tsuzumi」:導入提案400件超
・Microsoft Azureでの提供開始予定
Q1:「AI事業の収益化時期は?」
A1:
・足元の状況:
- 導入検討企業は着実に増加
- パートナー企業との連携強化
- 業界横断型AIの実用化推進
・収益化に向けた取り組み:
- 業種別ソリューション開発
- 既存顧客基盤の活用
- 段階的な展開
2. グリーン戦略
具体的な数値目標:
・再生可能エネルギー発電量
- 現状:約23億kWh/年
- 2030年度目標:約80億kWh/年
主要プロジェクト:
・ウィンドファームつがる
- 発電容量:122MW
- 年間発電量:3.5億kWh
・グリーンパワー深浦風力発電所
- 年間発電量:2.1億kWh
Q2:「再エネ事業の採算性は?」
A2:
・長期固定価格での売電収入
・既存インフラとの相乗効果
・電力調達コストの安定化
・約180万世帯分の年間電力使用量に相当
3. 研究開発・技術戦略
注力分野:
・IOWN構想の推進
・6G研究開発
・量子技術
・サイバーセキュリティ
Q3:「競争優位性は確保できるのか?」
A3:
・基礎研究から実用化まで一貫体制
・グローバルパートナーとの連携
・知的財産の戦略的活用
■ 投資戦略
1. 設備投資
重点分野:
・5G網の整備
・データセンター拡充
・再エネ設備
・研究開発施設
2. 人材投資
注力ポイント:
・AI/DX人材の確保
・グローバル人材の育成
・研究開発人材の強化
3. M&A・アライアンス
方針:
・技術補完型の買収
・地域補完型の買収
・戦略的パートナーシップ
■ 財務戦略と株主還元
1. 財務方針
・自己資本比率:33.2%を維持
・格付けの維持・向上
・投資余力の確保
2. 株主還元策
・自己株式取得:2,000億円
- 取得期間:2024/8/8-2025/3/31
・年間配当:5.20円予定
・配当性向:40%程度を目標
■ 中期的な重点課題
1. 既存事業の構造改革
・固定通信のコスト構造改革
・モバイル事業の収益性向上
・運用効率化の推進
2. 成長事業の拡大
・AI事業の本格展開
・再エネ事業の規模拡大
・グローバル事業の強化
3. 経営基盤の強化
・人材育成の加速
・DX推進による業務効率化
・サステナビリティへの取り組み
■ 5段階評価による分析
1. 収益力:★★★★(やや優れる)
根拠となる実績:
・営業収益:3兆2,400億円(+4.1%)で過去最高
・グローバル・ソリューション事業:1兆1,121億円(+9.6%)
・その他事業:3,731億円(+4.6%)
Q1:「減益をどう評価すべきか?」
A1:
・減益の内訳:
- 人件費増:+747億円
- 経費増:+695億円
- 減価償却費増:+243億円
・戦略投資が主因であり、一時的な影響と判断
2. 財務健全性:★★★★★(優れる)
確認された指標:
・自己資本比率:33.2%
・政府出資比率:34.69%
・格付けの維持
Q2:「投資余力は十分か?」
A2:
・営業CFは安定的
・戦略投資と財務健全性のバランスを維持
・長期の資金調達が中心
3. 成長戦略:★★★★(やや優れる)
具体的な進展:
・AI事業:tsuzumi導入提案400件超
・再エネ:風力発電所(122MW)稼働
・モバイル:5G契約3,160万件
4. 株主還元:★★★★(やや優れる)
確定している施策:
・自己株式取得:2,000億円
・年間配当予想:5.20円(前期比+0.10円)
・配当性向目標:40%程度
■ 投資判断のポイント
1. 短期的視点(1年程度)
プラス要因:
・過去最高の営業収益
・株主還元の充実
・新規事業の立ち上がり
リスク要因:
・戦略投資による費用増
・通信事業の競争環境
・マクロ経済の不透明感
2. 中期的視点(3年程度)
期待要因:
・AI事業の収益化
・再エネ事業の拡大(2030年目標:約80億kWh)
・グローバル展開の進展
注視点:
・戦略投資の回収状況
・競争環境の変化
・規制動向
3. 長期的視点(5年以上)
成長ドライバー:
・IOWN構想の実現
・再エネ事業の完成形
・グローバルプレゼンスの確立
■ モニタリングすべき指標
1. 既存事業
・5G契約数の推移
・光回線契約数の動向
・グローバル事業の利益率
2. 新規事業
・tsuzumiの導入状況
・再エネ発電量の推移
・AI-CIXの事業展開
3. 財務指標
・営業CF推移
・戦略投資の進捗
・自己資本比率の推移
NTTグループ第1四半期を振り返る、過去最高の営業収益を達成:「人件費増加は悪いことではない」その真意とは
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