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好きは返さなくても構わない。

私には恋愛感情がありません。

巷ではアセクシャルなどと呼ばれていたりします。

そんな私に恋人ができました。

矛盾しているようですが、事実です。

今後の人生を孤独で生きると確信していた私自身とても驚いています。人生何が起こるか分からないというやつです。

その方は私を好いてくれていると言ってくれました。

ただ私にはそれを返すだけの熱量が明らかに不足しています。

突き放すように伝えました。

「あなたを大切に思っているけど、好きになることはない。私はどれだけ好きを貰っても同じだけの好きを返すことができない。」

よく考えれば、いや、考えなくとも明らかに相手への配慮が欠如しすぎています。およそ人類の発言とは思えません。

そんな非人類ムーブの後、相手の口から出た言葉は私の想定を悠々と超えてきました。

「みんなそうだよ。同じだけの好きを注いでいる人たちなんていない。好きは返さなくても構わない。」

真剣な瞳と屈託のないその笑顔から出てきた言葉は私の中にあった常識を壊しました。

自分へ愛が注がれているか不明な相手を好きになれるか?

おそらく多くの人は否定する。見返りがなくても愛情を注げるのは額縁に飾ったお気に入りの絵画くらいだ。

『クズの本懐』で皆川茜に無償の愛を注ぐ鐘井鳴海の存在を私は理解することができなかった。

でも、そんな存在が目の前に現れてしまった。

孤独を極め、孤独と共に死んでいくと覚悟をしていたのに。

好き。

という言葉は私の中では永遠の問いだ。

この世界は分からないことだらけ。まったく嫌になる。

この気持ちを分かち合える人はいないのかもしれない。

多くの人には真っ当な恋愛には映らないだろう。

多大な好意を寄せてくれる人を弄んでいるように見えるかもしれない。

こんな不思議人類を相手にする展開は聞いていません。

私の人生におけるイレギュラーの塊だ。

もう一度言う。

私には恋愛感情がありません。

巷ではアセクシャルなどと呼ばれていたりします。

しかし、私は隣にいるこの人が気になっている。


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