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SKE48須田亜香里ソロライブ「花車と六弦琴」の感想

 以前、「民藝と須田亜香里の美と『直』について」という記事を書きました。その記事の中で民藝と須田亜香里を繋げて、「思想」や「嗜好」、「習慣」が美を気づかなくさせるのではないか、アイドル生活の長い須田亜香里の新しい魅力を我々はまだまだ発見できるのでは、という内容でした。

 先日の13周年公演で発表された須田亜香里ソロライブ。まさかのギター一本でのライブということで、かなり意表をつかれた発表でしたが、ワクワクもしました。
 ああ、これはまた新しい須田亜香里を発見するチャンスではないか、と。
 

 そして、本日2021年11月22日。
 duo MUSIC EXCHANGEで、「Akari syda sing with the guitar ~花車と六弦琴~」が行われました。
 結論から先に書くと、「須田亜香里の年表は毎年毎年が代表作!」と叫びたくなるぐらい素晴らしいライブでした。
 今、この記事を書いているのがライブが終わって30分も経っていないところなので、熱量が冷めないうちに書いていきたいと思います。

① 恋を語る詩人になれなくて

 まずは、出てきた時の衣装が本当に素敵でしてね。
 ガーリーなんですが、どこか懐かしさもある。
 個人的には、だーすーが着てきた衣装の中で一番好きな衣装でした。
 ライブが始まる前のチューニングをしながらのMCも良くて、11年前はチームSのメンバーで来て、その時もこの曲を歌ったということを語ります。チームSの1曲目といえば、「恋を語る詩人になれなくて」ですよね。
 以前は、チームの中の一人だった彼女が、今度はソロで立っているというところが、非常に感慨深いですね。
 そして、会場に響き渡るアコースティックギターの音。
 最初の一音を聞いた時、「うわあ、良いコンサートになりそう」と期待が膨らみました。
 アコースティックギターの音だけに絞ることで、より歌声が引き立ち、より歌詞を意識させられると1曲目から感じました。
 曲を弾き終えただーすーは、「指が震えている」とちょっと笑っていましたね。

② 万華鏡
 次の曲も弾く前に曲に対する話から。
 この形式、僕は凄く好きです。
 彼女がいた頃のチームSの大人メンバーたちがやっていた憧れの曲であり、2ndユニットの時に初めて任せてもらえた曲、それが「万華鏡」です。
 アコースティックギターの音色になることで、より曲の世界の解像度が高まった気がしました。音を足すのではなく音を引くことで変わっていくとは。
 この曲では2番の表情が凄くよくて、動けないからこその表現にも感じました。
 それは歌声も同じで声色、テンポなどで曲の世界を表現していました。それを強く感じたのが、この曲の終わり方。あえて、テンポを落とすことで「あの頃には戻れない」という感じが凄く伝わりました。
 そういえば、この曲の時には証明も色が万華鏡のように変わっていましたね。

③ 抱きしめちゃいけないんだ

 「総選挙で歌える歌はファンの方からのプレゼント」という話から、「ま、まさか、『なんてボヘミアン』のアコギバージョンが来るのか?」と身構えたんですが(なんボヘ大好き)、名曲「抱きしめちゃいけないんだ」ですよ。
 この曲では先ほどの「万華鏡」と同じくメロディが自由にコントロールできるギター1本で歌うライブの良さが出ていて、要所要所でスピードを落とすことで、別れの寂しさや切なさを感じるんですよね。
 ちなみに、2番の歌い出しの「少しずつ」の時のカメラアングルが最高でした。
 「思い出は味方なんだ」はの歌詞は、アイドル人生が長い人ほど説得力のある歌詞で、泣きながら歌っているところで僕ももらい泣きしてしまいました。


④ 今の私じゃダメなんだ

 ここからギターがエレキギターに変わります。 
 いったいどんな曲が来るんだ、と思っていたらソロ曲の「今の私じゃダメなんだ」。総選挙で一度アイドル須田亜香里が死んだあと、人間須田亜香里として再生していく過程を思い出しました。
 エレキギターの音色と歌詞がリンクして、再生への意志と迷い、でも情熱だけは燃え続けている感じが伝わりました。
 この後のMCでは曲について「ラブレターのつもりで」と語っていましたが、今日はまさにその言葉がぴったりなライブになっていると思います。

⑤ さくらんぼ

 この曲の前で凄くこのライブの本質に触れるMCを語っています。それは、「『やってみませんか』から『やってみたい!』と初めて思ったこと」ということです。
 これまでは、流れて来る曲に合わせて踊り、リズムに合わせて歌う日々でした。しかし、今日は違います。自分の手で音を生み出し、自分のタイミングで歌詞を歌う。普段のアイドル活動でみる活動とは違う感じがしました。
 さて、ここでオーディションで歌った大塚愛さんの「さくらんぼ」を歌うんですが、最初は「ほうほう思い出選曲かな?」と思っていました。しかし、1番の歌詞のド頭で「12年」という言葉を聞いて、これは彼女の12年におよぶアイドル人生、ファンの方との関係とも今なら読めるかもと感じました。皆さんはいかがでしょう?

⑥ キンモクセイ

 この曲がエレキギターとこんなに相性が良かったとは!
 エレキギターの音色は、絵具が画用紙に沁み込んでいくように、じんわりと空間に広がっていきます。
 MCで「肩の力が抜けて行く感じがして好き」と彼女自信も語っていましたが、改めて聞き直したくなる1曲でした。


⑦ この涙を君に捧ぐ

 撮影タイムを挟み、再びMCへ。 
 その中で総選挙のことを再び語り、ファンの方々からパワーをもらいアイドルをやらせてもらっている喜びも語ります。
 次は何だろう、とワクワクしていたら、まさかの「AKB0048」の名曲「この涙を君に捧ぐ」ですよ。
 まず、この曲を歌っているNO NAMEというのは、文字通り名前がないという意味なんですが、アニメの最終回でそれはきっとファンのことなんではないか、と連想させられます。
 もうね、この曲を選んでくれたことが、「AKB0048」ファンであり、NO NAMEファンとしてはめちゃくちゃ嬉しかったです。で、当然ですが、総選挙と「この涙を君に捧ぐ」の歌詞で僕もボロ泣きですよ。
 さらに、この後のだーすーのMCが本当に良くてですね。
 「僕みたいな人が応援しててごめんね」という方や「こんなオジサンが応援しててごめんね」という人もいるけど、嫌と思ったことは一度もないことを語ります。そして、応援していることを主張しない、見守るのが好きだからというファンの方々の話をします。これって「主なきその声」じゃん!とまた泣きました。
 そして「推しメンの人生を変えたい」という思いについて。
 そうなんですよね。そもそも総選挙にはそういう人生を変えるトリガーになるイベントだったはずなんですよね。ゲームチェンジの役割もあったはずなんですよ、と懐かしさを思いました。
 時代は変わりました。
 もう、総選挙はありません。
 でも、「推しの人生を変えたい」という思いは、きっと僕らの心には残っていると思います。

⑧ アコギ版ソーユートコあるよね?
 ここでMCの時に忘れていた「ソーユートコあるよね?」のサビ部分のアコギの弾き語りなんですが、これも良い!
 なんていうんでしょう、曲中の「君」への懐かしい愛おしさを連想させられるアレンジだと思いました。

⑨ ラムネの飲み方
 歌う前に「最初は歌詞の意味が分からなかった」、「長く生きて行くにはずっと100%じゃダメ」と気づいたと語っていましたが、大人になると本当に歌詞の意味が伝わってくるんですよね。
 30歳という年齢の須田亜香里というアイドルであり、一人の女性が歌うこの曲の説得力が凄く良いんですよね。まるで、客席にいる誰かに語りかけているかのようです。直前に後輩たちのことをMCで語っていたから余計にかもしれません(『須田会』のフォントに笑いました)。
 2番のサビの「大人はラムネを飲まなくなるよ」も、今の彼女だからこそ響く気がしました。
 

全体の感想

 ライブを全て観た後に、だーすーのアメブロを読み返す、となるほど、こういうことか、となります。MCで語っていたことのおさらいにも良いですね。
※アメブロへのリンクはこちら。


 ギター1本で歌声を届けて行くという今回の試みは、「知っているけれど新しい曲」に出会わせてくれたと思います。
 そして、様々な要素を抜くことで「人間須田亜香里」の魅力をさらに発見しました。
 今、僕が提言したいことは一つ、須田亜香里アコースティックギターアルバムを出すべきだということです。なんならこのライブのライブ盤でも良いです。何度も聞いてきた曲もまだまだ新しい発見がある。それを気づかせてくれただーすーに感謝ですね。

※以前、だーすーについて書いた記事はこちら!

 

 

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