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五十嵐早香のエッセイは何故、面白いのか? 第3回「マニラの出会い」

 皆さんは、「装甲騎兵ボトムズ」というアニメをご存じでしょうか?
 放送開始時には、まだ僕はこの世にいないんですが、後々、予告のナレーションがカッコ良いという評判を聞いて、そこから本編もチェックするようになりました。
 初回時の予告( つまり、第2話がこんな話だよ、という予告ですね )を引用してみましょう。

ロッチナの手を逃れたキリコを待っていたのは、また地獄だった。
破壊の後に住み着いた欲望と暴力。
百年戦争が生み出したソドムの街。
悪徳と野心頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた。
ここは惑星メルキアのゴモラ。
次回「ウド
 来週もキリコと地獄に付き合ってもらう。

「装甲騎兵ボトムズ」第1話より引用

 生まれてこの方、こんな風に紹介される町、大阪の西成以外に聞いたことなくてですね。いったいどんなマッドシティなんだ、と初めて聞いた時は、思ったものです。

 今回の五十嵐早香先生のエッセイの冒頭部を読んだ時に、僕は「ボトムズ」の予告を思い出しました。
 まずは、こちらを読んでみましょう。


 いかがだったでしょうか?
 このエッセイの醍醐味として、読んでいる間、毎週、物凄く遠い世界に連れて行ってくれることがあります。日本の埼玉から始まったこのエッセイ、今、フィリピンのマニラにいます。
 マニラはまず、嗅覚で彼女にどんなところかを教えます。
 そして、直後の4行で描写されるものや匂ってくるもので、マニラはどんな街か僕らに教えてくれます。
 そして、治安についても描写されているんですが、いやあ、怖そう。ジープニーとか超怖そう。
 そんな中、ここでヤナに出会います。
 彼女に手を引っ張られ、ジープニーに乗る彼女。
 今、治安が悪いって紹介されたばかりじゃん、とドキドキします。
 幸い、何事もなく練習する大きな公園に到着し、ついにここで他の子たちと知り合い、アイドルとしての練習がスタートします。
 アイドル五十嵐早香のエピソード1が始まったわけですね。
 
 体感気温40℃の中で練習した彼女たち。
 練習終わりにマクドナルドに入り、マネージャーさんを含めて打ち解けていくところが僕は今回凄く好きで、何かを一緒にやっていくことで初対面でも心が開かれていく。ダンスや音楽の前では国籍とか初対面とか、そんなの関係ないんだな、と思わされました。
 あと、ここまでで出てきた「ヲタクの姫」みたいな成功体験とは違った、小さいけれど、「成功」や「喜び」が読んでいて、とても気持ち良かったです。

 さて、ここからあの早香先生にメールを送った美少女「さーちゃん」が登場します。
 「意地悪キャラ」と見せかけて実は面倒見が良いとか、ギャップが凄いですね。次回はいよいよ、本格的に活動が始まるのか、それともフィリピンの生活が語られるのか。「来週も早香と地獄に付き合ってもらう!」ボトムズもびっくりの衝撃展開が待っているのか、それとも、心が穏やかになる体験が待っているのか。
 また来週も金曜日に遠くに行きたいと思います。
 ではでは、世界一カッコいい国家、「フィリピン国家」を聴きながらお別れです。


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