見出し画像

「愛を君に、愛を僕に」公演初日の感想

 新公演。
 その3文字は我々SKE48ファンにとっては、「ガンダーラ」や「ユニコーン」のような幻想の存在になりつつありました。
 しかし、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の一角獣が「でも、せっかくここで会ったのだから」とアリスに存在を示したように、突然、思わぬ形で現れます。

 小室哲哉プロデュース公演。
 
 まさかのプロデュサーバトンタッチで、新公演が我々の前に姿を現しました。
 そのニュースを聞いてから僕は、あえて先行発表された「愛を君に、愛を僕に」を聴かずに過ごすことにしました。
 「はすってんじゃあないよ」という声が聞こえてきそうですが(『オードリーのオールナイトニッポン』で『斜に構える』ことをこう言います)、まっさらな気持ちで公演をみたいと思ったんですよね。
 新しいチームSの始まりを。

 そして、公演を観た今の感想としては、「大声で言って神公演!」。
 ここからは、曲順に感想を五月雨式に書いていきたいと思います。
 

影アナ


 劇場の拍手の音とオレンジのサイリウムからファンの方々の期待がうかがえます。
 そして、松本慈子の「覚悟しておいてくださいね!」という言葉に期待が高まります。
 

M1「愛を君に、愛を僕に」


 始まった瞬間の解放感が素晴らしい!
 感動とは何かを考えてみる歌詞も凄く良くてですね。
 映画という「他者の物語」とぼくと君の「自分の物語」が重なる時、心が動く。ううむ、これが歌詞の中に出てくる「鏡」だとしたら、と色々考えるんですが、なにせ初めて聴いた曲なんで、これぐらいの解釈で勘弁してください。
 目を引いたメンバーとしては、赤堀さんのおでこ出しバージョンが目を引いて良かったですね。そして、サビを歌う時の青海さんの嬉しそうな表情が、この日を待っていたんだなあ、というのが伝わってきます。
 赤と青の衣装も素敵です。あなたの推しメンはどっちの色でしたか?
 振り付けで印象的だったのが、Bメロの時や曲終わりの手を伸ばす振り付けです。手のひらから「夢という光」が生まれるイメージと繋がりますね。
 ちなみに1曲目に持ってきた「夢」というフレーズが、この公演の最後にまた違ったアプローチで語られるのが素晴らしいですよね。

2 LIVE MASTER

 
 最初の松本慈子から上村亜柚香という流れがもう、たまりません。
 この瞬間を待っていたという感じの歌詞も良いですね( 歌詞の中にあったかも )。やっと歌えるという喜びが伝わってきました。
 チャイムが鳴ったら走り出す的な世界観は、さながら小室哲哉版「放課後レース」かも知れません。大サビの「何千回、何万回」のとこの中坂美祐さんの表情が素敵でした。あとは、2列目の中央、裏センター位置のるーちゃんにも釘付けでした。

3 旅立てジャック


 めちゃくちゃカッコいい衣装にフォームチェンジ!
 迷彩柄に、赤・紫・オレンジ・エメラルドグリーンの4色だと思うんですが、歩南ちゃんと赤のカラーとの相性がばっちりだなと思いました。
 この曲は8期メンバーがカメラに抜かれることが多かったんですが、いずりんとよこにゃんの表情の変化が凄く良かったです。あと、衣装とゆずぽの相性がばっちりで揺れる髪やラストの蹴りもカッコ良かったです。
 8期以外の中では、「昇る朝日」のところの赤堀さんの躍動感が素晴らしかったです。

4 SURFな最近


 牧野アンナ先生の振り付けの素晴らしさを感じられる1曲です。
 3曲目とつながる「水平線」という単語と、そこの部分の振り付けが凄く良くてですね。このふりの時の青海さんの客席へのアイコンタクトが素晴らしかったです。あと、まりちゃんが頬膨らませて、目を閉じて作る彼女ならではの笑顔が見られたのも良かったですね。
 ここまでの4曲は「始まり」や「解放感」を僕は聴きながら感じました。

MC

 
 松本慈子の「皆さんの涙を誘いたい」という言葉があったんですが、もうこっちは1曲目で涙が出てました。メンバー一人一人のキャッチフレーズが出てくるんですが、ゆうゆの「ヒット!」の時にももたん、後ろでボール投げてませんでした?
 ひめたんの新キャッチフレーズも良くてですね。 
 髪飾りや衣装と合わせて、大人っぽくなったなあ、と感じました。
 そして、このMCで一番笑ったのがなーやんです。
 もうね、拍手を各エリアの客席に求めるのも良かったですし、副キャプテンの「魔法少女になりたい」のとこの「はい、ばーかー」という乗りとか最高でした。

M5 恋せよ乙女 エクスプロージョン


 めちゃくちゃ振り切った曲来たあ!と感じました。
 昔のアニメの魔法少女ものとかでありそうなメロディで、僕は結構好きです。これこそ、あゆか丸にいつかやってもらいたいですね。
 ゆうゆも歩南ちゃんも、めちゃくちゃ足を動かしているんですが、特に「恋の3連単」というとこの振りとか特に凄いです。
 いやあ、これは癖になりそうな曲です。

M6 流星


 青海さんのソロからこの曲は始まるんですが、彼女の静かな美しさを堪能できるスタートです。
 歌詞は「祈り」を感じさせる内容なんですが、衣装のせいか赤堀さんのシャーマン感が凄かったです。
 振り付けは、先ほどの曲とは対照的に手に目が行く振り付けになっていて、チョップで切り裂くような振り付けだったり、Sの字を描くような振り付けが印象的でした。

M7 嵐からの隠れ場所


 まさかの8期生4人のユニット曲。
 歌詞の優しい感じが素敵で「逃げてきて」とか「一人で戦うより逃げれば良い」というのは、強さよりも優しさの世界観を感じます。
 ソロパートでのるーちゃんの癒し感とまりんちゃんの凛とした姿が印象的でした。

M8 Fly me to universe


 もうね、なんですかこの素敵なユニットは。
 特に2番で二人ずつの組み合わせで歌うところが凄く絵になって、なーやんとよこにゃんコンビと、みよまるとひめたんコンビのそれぞれの並びが美しいんですよ。
 振り付けは「万華鏡」を思い出させる手が一人一人別々の方向、別々の動きをしているのが印象的でした。
 最後の4人の歌声も良くて、まだまだ聴きたい曲です。
 あと、この衣装も大好きです。

M9 恋するつぼみ


 もうイントロからメロディが素敵です。
 上村亜柚香さんの曲の世界に合わせて仕上げっぷりは、ネイルだけじゃなくて表情や動きにも出ていて良かったです。
 また、曲中で背中を向けてハートマークを作る中坂さんも良かったですね。
 歌詞は、この人私がいないとダメだからなあ、という感じが伝わってくるんですが、「嵐からの隠れ家」と比べると少し学生服の感じがしますね。効果音も遊びが多くて楽しそうな1曲です。
 ちなみに、この曲の大サビのももたんの「もうすぐ桜が咲きそうね 私はまだつぼみ」のところ、凄く心を動かされました。こんな引き出しもあるんだ、と驚きました。

MC

 
 こんな「かしましい」という言葉が似合うMC陣があるでしょうか。
 オリメンという言葉に興奮する3人も可愛かったですね。

M10 小悪魔ブルーベリー


 まず、CAさんのような衣装に目を引かれました。首元のスカーフからイメージしたのかも知れません。
 一人一人に触れていき、何か変化が起こっていく振り付けが歌詞の世界観とリンクするようででした。サビのメロディが良いですね。
 この曲では青い照明に浮かび上がるみよまるが印象的でした。

M11 LOVE RENOVATION


 多人数だからこそ栄える振り付けで、チーム感が凄く伝わってくる曲でした。
 メロディが凄く良いですね。
 青海さんのソロがここでも素敵でした。ただ、歌詞に関してはまだまだ聴き込みたい曲ので、他の曲と比べると少し短めです。 

M12 青春Growing


 楕円形で片足ジャンプしながら進む振り付けが印象的な1曲。
 ここでは、シャツをインしてるメンバーと出しているメンバーがいて、赤堀さんとなーやん、みよまるが出してたと思うんですが、他にいたでしょうか?
 さりげない衣装の違いですが、それぞれの個性があってこの歌詞の中で学園物の漫画が書けそうですね。
 凄くライブで盛り上がりそうな曲です。

MC


 上村亜柚香さんの話が凄くよくてですね。
 チームSのメンバーのほぼ半分が学生であり、普通の子のような青春は遅れていません。しかし、その代わりにSKE48という青春を彼女たちは奥っています。それは、人生の中でアイドルが出来る人の人数、SKE48でいられた人数というのは限られています。
 この話を聞きながら、これまで居た色々なメンバーの顔が思い浮かびました。
 そして、青春というのは学生の時だけではなく、SKE48を応援している我々もまた青春の最中という「青春ガールズ」感がある結論で占められます。
 ううむ、青春というのは言い換えると、夢中になって没入することなのかな、とも思います。哲学者の国分功一郎教授の「暇と退屈の倫理学」の受け売りですが、人生の中で没入できるものを見つけられる人はやっぱり人生が豊かになるんですよね。
 そういう意味では、新しい青春が始まった気もします。

M13 ともだち


 この公演の中で僕のぶっちぎりのベスト曲です。
 SKE48に今までなかったタイプの歌詞ではないか、と思います。
 様々なノスタルジーを感じる単語から、歌詞の世界が広がっていき、もし時計の針が戻るなら…とかつてのことを思い出す内容かと最初は思っていたんですね。
 しかし、大サビで時計の針を進める歌詞が出てきます。卒業アルバムとも。
 これは色々と解釈が出来ます。
 今、この歌詞の「あなた」との関係が上手く行かなくなって(あるいは噂話によって『あなた』が孤立したことで)、少しだけ離れている「わたし」が近い将来に関係を修復させたいとも読み取れます。
 サビの振り付けが時計の針のようで良いですよね。
 一番好きな歌詞ですし、曲の世界観も凄く好きです。小室哲哉、こんなの世界も創れるのか、と衝撃を受けましたし、聞いている時は感動して涙が出ました。
 ここまでの曲が「夢」や「恋」、言い換えると関係性や人生の変化を感じる曲が多かった中で、この曲だけぽっかり浮いているんですよね。そこがまたこの曲の良さを浮き上がらせています。
 おそらく、ライブやリクアワではなかなか聞けないタイプの曲ですが、僕の2022年アイドル曲暫定1位です。

EN1 リとマ


 もう一度盛り上がる感じのスタートが良いですね。歌詞も良い意味でふざけていて好きです。
 振りつけも楽しいものが多いんですが「陰キャでも」のところのスイッチが切れたかのようなメンバーたちで笑っていましました( 特にるーちゃんのやりきってる感が凄い )。あと、唐突にスローになるところもDDT感があって笑いました。これはライブの終盤に来たら盛り上がるでしょうね。

EN2 頼りは翼だけだ


 まず、汗で顔に張り付いた髪を払わずに歌う松本慈子にSKE48魂をみました。元中西優香推しの僕としては、「うう、にしし。あの慈子がすっかり立派になってね」と目頭を押さえずにはいられない姿でした。
 この曲の歌詞は英語の気持ち良さがあって、言葉もメロディの一部になっている感じがすごくしました。
 青海さんの確信に満ちた表情も良かったですね。
 あと激しいダンスで片側だけ肩だしになってたひめたんも印象的でした。
 歌詞の最後の「羽のない私の微睡むDAY DREAM」で曲の世界がガラッとひっくり返るのも素晴らしかったです。

MC

 
 まず、MCに入る前のドキュメント映像的なものが流れるんですが、アンナ先生の指導が凄く良くてですね。「一人」から「一人前」にとか、「ちゃんとやる」じゃダメで「やりすぎ」なぐらいに表現をしていくこと。
 そして、SKE48という大きな船に乗って、行く先を目指す、というビジョンも良かったですね。「最高の公演」とは何かをメンバーに自発的に考えてもらうのも良かったです。
 「ただの仲の良いチーム」から脱皮して、新公演を作り上げていくという大変さを松本慈子が語るところは、辛いだろうにそれでも向き合う彼女のリーダーとしての強さを感じました。
 チームSの強みは素直さ、というところも印象に残っていて、これから公演をしながら、色々なものを吸収していくんだな、と感じます。

EN3 マイドリーム

 公演の最後に持ってくるにふさわしい重力のある1曲です。
 歌詞の中に登場する「古いぬいぐるみ」。
 それは古くなって汚れていても、彼女にとっては大事な宝物です。
 誰にも渡さずに自慢もしない、そこにいてくれるだけでいい。
 その古いぬいぐるみの名前はパパが思い付きで付けたのに、もう忘れてしまっています。
 ここまで聴いて性格の悪い僕は、「ははあん、これはチームS新公演について書いてるんじゃないか。ずっと大事に持っている願望であり、パパである秋元康の思い付きで生まれたけど、チームSにとっては大事なものであり…」という邪推を擬人化したような顔で考えていたんですが、そうではなくてですね。
 自分のかなわなかった夢の隠喩なんですよね。
 かなわなかった夢を大事に持っている、それは誰にも見せないし自慢もしない、でもその夢を時々、抱きしめるし自分の中に居てくれるだけでいい。
 凄く良い歌詞です。
 SNSなどでみんなが発信者になって、他人からの評価を気にしている中で誰とも共有しないし、誰にも自慢しないそういうものがある豊かさが好きです。これも本当に良い曲ですね。

 さて、これで全曲書き終わりましたが、まだ初回の感想なので、これから公演を見て行くうちにまた変わってくるかも知れません。ただ、1秒でも早く音源を聞きたいというのが今の率直な感想です。

 正直、SKE48に対して、推しメンの五十嵐早香が卒業してからというもの、「まるで透明になったみたい 全部自分をすり抜けて行く」感じだったんですが(『少年よ』の聴きすぎ)、何か熱いものを今日の公演で受け取りました。
 それが愛なのか、夢なのか、はたまた希望なのか、分かりません。
 しかし、もう来ないと思っていたものが現れた嬉しさを今はかみしめながら、今夜のyoutube配信を待ちたいと思います。 

こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。