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怪獣魂

 今、僕はSKE48というアイドルグループの曲や映像の魅力を書いたブログをほぼ毎日更新している。
 今回は、そのルーツになった本、『怪獣魂』シリーズについて書きたいと思う。

 そもそも、この本との出会いは高校1年生の時だ。
 当時、まだ「仮面ライダークウガ」がギリギリ始まっておらず、僕は平成「ウルトラマン」はろくに観ていなかった為、なんというか、特撮ファンとしては空白期間だった。

 何気なく立ち寄った本屋で、僕は『怪獣魂』を目にする。
 表紙は、ゴジラシリーズのガイガンだった。
 なんて、燃える表紙なんだ。
 ガイガンはゴジラシリーズに於いて、生物と兵器が合体したロマン溢れる怪獣だ。同じ理由で「ウルトラマンエース」に出てくる超獣も好きだ。
 「新耳袋」で有名な木原浩勝さんや、ガメラ3の特技監督である樋口真嗣さんのインタビューも掲載されていた。ちなみに、この時、僕はまだ「ガメラ3」を観ていなかった(『2』は当時の『アニメージュ』が激推ししてたので、観た記憶がある)。

 そして、一人一人のライターが2ページという同じ掲載量で自分の好きな怪獣について、熱くその魅力を書いていた。しかも、決して硬すぎず、ストーリーを追いながら怪獣の魅力を最大限に引き出し、再評価を促すような文章が多かったように思う。

 高校1年生の時の僕は、「特撮」=「幼稚なもの」という世間の評価と同じような目線になりつつも、いつも「仮面ライダーストロンガー」の最終回へと畳みかける感じの最高感や、「ウルトラマンセブン」のある話のタイトル「一人ぼっちの地球人」というワードセンスがずっと心の中に残っていた。
 しかし、僕が進学した高校は工業高校で(実家が建築業をしていたので、僕は当時継ぐ気マンマンだった)、男子ばかりだったが、特撮を熱く語れる人材が登場するには「仮面ライダーアギト」ブームが来る2年後まで待たなければいけなかった。
 そう、この頃はむしろ「空想科学読本」とかのおかげで、怪獣好きなど言おうものなら、バカにされまくっていたのだ。ちなみに「空想科学読本」とかを愛読書にしていたやつらはだいたい頭がよくて、ことごとく県内トップクラスの進学高校に行っていた。「恐竜戦車って、もう、言葉だけで最高だよな」とテスト中に思っていた僕のようなボンクラとは出来が違うのだ。

 そんなご時世だったからこそ、まるで、隠れキリシタンのように過ごしてきた特撮好きの僕にはたまらない1冊だった。悲しいかな、ど田舎の出身なので、レンタルビデオショップに並ぶ過去のウルトラ作品や怪獣映画の品ぞろえは決して良くなく。「怪獣使いと少年」さえ観ていなかった僕は、この「怪獣魂」のムルチの文章を読んで、「うわあ、『帰ってきたウルトラマン』って面白そうだなあ。いつか観てみたいなあ」とワクワクしていた。もっというと、特撮作品について「面白いなあ」という動物的な楽しみ方はしていたものの、一歩深く詰めて考える、というきっかけをくれた本でもあると思う。

 なかでも素晴らしかったのは、「ガメラ3」に関しての記述だ。「こんなシーンが観たかった」のコーナーでは「ガメラ3」のラストの続きを妄想で書いてくれていた。もちろん、この時僕は「ガメラ3」を観ていない。今風に言えばネタバレである。だが、そんなことはどうでもよい。面白い映画はネタバレしてても面白い。嘘だと思うなら、「ロッキー4」を思い出して欲しい。予告で既にロッキーが勝つところまで入っている。それでも面白いから。
 僕はラストシーンのネタバレを読んで、むしろ観たくなった。
 燃え盛る京都の街。
 大量のギャオス。
 迎え撃つ手負いのガメラ。
 いったいどんな映画なんだ、とワクワクした。


 「怪獣魂」を読み終える頃には、僕の中の怪獣魂にも火がついていた。
 久々に怪獣図鑑を取り出すと、『怪獣魂』で読んだ情報を膨らます為に、ペラペラとめくり始めた。そして、もう1回怪獣映画やウルトラシリーズが観たくなった。ウルトラ作品がわずか30分という時間の中に託したメッセージが、それぞれのライターさんたちの筆で浮かび上がってきた。特撮、全然恥ずかしくないし、幼稚じゃないじゃん。むしろ、大人になっても鑑賞できるぐらいの深いメッセージを子供の僕や同級生が読み取れてなかっただけじゃん。
 そう気づくと、家にあった「ギエロン星獣」の人形も昨日とは違う風に見えた。

それから約半年後。
「帰ってきた怪獣魂」が発売される。
「怪獣魂」がわりと、メジャーな怪獣が扱われていたのに対して、もう少し踏み込んだ怪獣が取り扱われていた。少なくとも、この本を読まなかったら、僕は「モチロン」のことをあと15年は思い出さなかっただろう。この頃には、僕は「ガメラ3」をビデオで観ており、ごりごりの平成ガメラ原理主義者になろうとしていた。

 それから8か月。
 今度は、「怪獣魂VSメカ怪獣魂」という「ゴジラ対メカゴジラ」を彷彿とさせるタイトルの本が出版された。
 表紙のクレージーゴンが衝撃的だ。
 読んでいると、メカの怪獣ってこんなにいるのか、と感動したのを覚えている。そして、怪獣についても「おとり怪獣プルーマ」とか「ビルガモ」とか、そこまで行くか、というラインナップだった。毎回、怪獣好きの有名人へのインタビューが載っていて、先輩の話を聞いているようで、これも楽しかった。

 僕が知る限り、「怪獣魂」シリーズは3冊しか出ていない。
 ただ、この本と出合えたことで、僕の「特撮」に関する価値観は180℃変わったし、そこから切通理作さんの著書に出会い、更に深く特撮を観ていくことになる。
 1匹1匹の怪獣の魅力を時には面白く、時にはシリアスに語ってくれたこの本の魂は、今も僕の中に残っている。

 「SKE48が好き、アイドルが好き」というと、今でこそ少なくなったが、昔は犯罪者のような目で見られることもあった。もしくは、そんな恥ずかしい趣味と思われることもあった。
 しかし、あなたが好きな人、好きな曲は、こんなに素晴らしい。まだまだ、こんな魅力がある。そういうことを伝えられるブログにしたいと思って、今日もブログを更新している。僕と同じように、誰かの発見のきっかけになるといいな、と思う。
 いつか、僕のブログも、「怪獣魂」みたいに色々な人の記事が載ったり、本に出来たりするといいなあ、と遠い夢を見ながら。

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