Chapter-586  ブラックホールは明るかった

2016年1月30日 Chapter-586  ブラックホールは明るかった

ブラックホールと普通の星がペアになって連星系をX 線連星といい、ブラックホールに向かってペアとなっている星からガスが流れ込み、降着円盤というガス円盤が形成されます。

X 線連星の中でも、不定期にアウトバーストと呼ばれる急激な増光現象を起こす天体をX 線新星といいます。その内の一つである「はくちょう座V404 星」は地球に最も近いブラックホール連星系です。この天体が2015年6 月中旬から7 月初旬にかけて26 年ぶりにアウトバーストを起こしました。 下のイラストはNASAによる V404の想像図です。

NASA's Goddard Space Flight Center

NASAのガンマ線バースト観測衛星Swift、国際宇宙ステーション搭載の全天X 線監視装置MAXI、そして地上からの観測によって、これまで知られていなかった二つの新事実が明らかになりました。

一つ目はブラックホールの激しく、規則的な光度変動を可視光で初めて発見したことです。このことはブラックホールもまたたいて見えることを意味します。これまでのブラックホール観測はブラックホール周辺の物質がブラックホールに落下するときに放射されるX 線で行われていましたが、可視線で測光が可能であれば、観測装置は豊富にあり、これまで以上に多くのデータを収集することが可能になります。

もう一つの発見は、今まで考えられていたよりも10 分の1 以下の弱い活動の時にもブラックホール周辺からるエネルギーの規則的な変動現象が起きていたことです。ブラックホール近傍から出るエネルギーの変動は、これまでは激しく活動するブラックホールの象徴として観測されていましたので、エネルギーの変動を説明する理論も、ブラックホールが激しく活動していることを前提としたものでした。

これらの新たな発見を元に、これまでのブラックホールに関する理論を見直すことによって、X 線連星の研究のさらなる発展を促すものであると考えられます。 上の NASA のイラストは今回の発見を元に描かれたもので、これまで、中心が黒く、その外側にエックス線で輝くガスが模式的に描かれることが多かったX 線連星のブラックホールですが、このイラストではブラックホールそのものが可視光線で輝く(またたく)様子が表現されています。

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