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NRゴーティス研究報告 / #第6回真佐杯 ベスト4構築【ドラゴンアイスドラメghoti】

 こんばんは!
「ツクスト」所属VTuber / バーチャルクリエイターの帯衣青蓮です。

帯衣青蓮(オビエ セイレン)

 2023年1月より「デッキビルダーズNeuRon」というデュエル動画チャンネルに参加し、NR限定構築戦を中心にフリー対戦の動画を投稿しています。
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 今回は「ザ・シンクロナイズド・コスモス」でマスターデュエルに実装されたテーマ「ゴーティス」を採用したデッキに関する考察とデッキ紹介の記事になります。
 今回制作したデッキは、NoRichesという特殊制限で行われた31人規模のNR大会 #第6回真佐杯 ベスト4に入ることができました。環境に疎いながらにかなり善戦できたのではないかと思います。

【ゴーティス】とは

 2023年5月のセレクションパック「ザ・シンクロナイズド・コスモス」にてOCGに先んじて実装された、海外発の魚族テーマ。
 英語名は【Ghoti】。英語の発音の不思議を示す言葉で、「この綴りでフィッシュって読めちゃうよね」という有名なネタに由来しています。
 いわゆる「除外海産物」のカテゴリで、スタンダードでは相手ターンの連続シンクロから除外妨害を放つデッキとなっています。

 NRのカードプールにはテーマのSモンスターが存在せず、以下のカードが実装されています。
ゴーティスの陰影スノーピオス(R・効果モンスター)
ゴーティスの妖精シフ(R・効果モンスター)
ゴーティスの紅玉ゼップ(R・効果モンスター)
ゴーティス・コスモス(R・通常罠)
ゴーティスの守人イーノック(N・効果モンスター)
ゴーティスの兆イグジープ(N・効果モンスター)
ゴーティス・フューリー(N・永続罠)

NR「ゴーティス」所感

 実装当時、特にNRで注目されたテーマカードは以下の3枚だったと感じています。
「NRゴーティスのテーマ性」を象徴するカードたちなので、まずはこれらを見て理解を深めていきましょう。

①:《ゴーティスの妖精シフ》

チューナー・効果モンスター
星2/水属性/魚族/攻 0/守 500
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの魚族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで500アップする。
(2):このカードが除外された次のターンのスタンバイフェイズに発動できる。
このカードを特殊召喚する。
(3):このカードを特殊召喚した相手ターンのメインフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として魚族Sモンスター1体のS召喚を行う。

《Shif, Fairy of the Ghoti》 -遊戯王カードWiki

 ①で除外し、②で相手ターンに帰還し、③で相手ターンシンクロを行うカードです。
 NRには《揺海魚デッドリーフ》《白闘気海豚》が存在するため、《デッドリーフ》でこのカードを落とせばそれだけで《白闘気海豚》が出ると話題になりました。《シフ》は除外されても帰還できるため、《白闘気海豚》の被破壊時の復活効果も毎ターン使えることになります。お手軽無限壁ですね。

②:《ゴーティス・フューリー》

永続罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの魚族モンスター1体と相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター2体を次の自分スタンバイフェイズまで除外する。
(2):除外状態のカードが存在し、自分フィールドに魚族モンスターが特殊召喚された場合、
魔法&罠ゾーン(表側表示)・墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分フィールドの全ての魚族モンスターの攻撃力はターン終了時まで、除外状態のカードの数×100アップする。

《Ghoti Fury》 -遊戯王カードWiki

 主に①で使う妨害カードです。
 似たような一時除外カードとして《PSYフレームロード・Ζ》が存在していましたが、あちらは攻撃表示モンスターしか除外できないのに対してこちらは表示形式を問わず、またモンスターが自身の効果で自身を除外するわけではない設置カードのため、往復ターンで2体を一時除外できるという強みがあります。
「ゴーティス」罠カードは《ゴーティスの守人イーノック》でサーチでき、また《ゴーティスの兆イグジープ》で墓地・除外から回収できます。

③:《ゴーティスの陰影スノーピオス》

効果モンスター
星6/水属性/魚族/攻2100/守 0
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分・相手のメインフェイズに、自分の手札・墓地から魚族モンスター2体を除外して発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードが特殊召喚した場合、フィールドの表側表示カード1枚を対象として発動できる。
そのカードはフィールドから離れた場合に除外される。
(3):このカードが除外された場合、自分の墓地から魚族モンスター1体を除外して発動できる。
このカードを手札に加える。

《Snopios, Shade of the Ghoti》 -遊戯王カードWiki

 ②の効果でフィールドのカードに離れる際代わりに除外される状態を付与する、手札誘発モンスターです。上記2枚に比べると注目されていませんでしたが、一部のプレイヤーが関心を示していました。
 相手の墓地に送ると厄介なカードに対する妨害、墓地へ送られても回収可能なカードに対するリソース破壊などとして機能します。また、③の効果による無限回収も可能なカードです。
 ①の効果は魚族を2体も除外しなければならないため、コストを打ち消すには《ゴーティスの妖精シフ》に加えて《ゴーティスの紅玉ゼップ》を採用する必要があります。

 以上に加え、テーマ外のカードとして以下のカードが注目されていました。

④:《アビス・オーパー》

リンク・効果モンスター
リンク2/水属性/魚族/攻1500
【リンクマーカー:左下/右下】
水属性モンスター2体
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードはリンク召喚されたターンにはリンク素材にできない。
(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
手札から魚族モンスター1体をこのカードのリンク先となる自分フィールドに特殊召喚する。
(2):このカード以外の自分フィールドの魚族モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを除外する。

《アビス・オーパー》 -遊戯王カードWiki

 前年の海外先行カードです。①による展開効果と②による除去効果を持つリンク2モンスターです。
 既存のカードですが、「ゴーティス」の登場により一気に実用性を増しました。今までは自分も永続除外だった②の効果ですが、《ゴーティスの妖精シフ》を対象にしたり、チェーン《ゴーティス・フューリー》で自分の対象を先に一時除外することで自分側の除外を踏み倒せるようになっています。
《フューリー》のサーチカードである《ゴーティスの守人イーノック》は上級モンスターですが、このカードを経由すれば直接特殊召喚できます。

⑤:《フィッシャーチャージ》

通常罠
自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースし、
フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

《フィッシャーチャージ》 -遊戯王カードWiki

 魚族の《刺し違GUY》です。こっちのほうが登場が早いです。
「魚族テーマとしての強み」を探した時、有力な妨害カードでした。モンスターを1体失いながら罠を消費しますが、1ドローによって消費をバックアップしてくれます。
 他にも魚族の妨害カードとして《ギョッ!》も注目されていました。

純【ゴーティス(魚族)】デッキ

 真佐さんがオーソドックスな構築の紹介動画を上げているのでそちらをご覧ください。(丸投げ)

 また、ほぼ毎日行われているNR大会「NoRiches JaPan」でもゴーティスを採用した魚族デッキが入賞しています。

【ゴーティス】考察

 ここから個人的な見解です。

 まず、前項でなぜ純【ゴーティス】の構築を丸投げしたのか。
 それは私には純【ゴーティス】が回せなかったからです。真っ当にゴーティスの強い動きを狙ってデッキを組んで回そうとすると、とにかく事故る。欠陥が気になる。

 私はその中で、いくつかこのデッキの「勘違い」と弱点に気付きました。そしてこれらを克服していくことで、【ゴーティス】をより盤石なデッキにできないかと考えました(強い部分が強いことは感じ取っていたので)。
 以下、私の気付きについてまとめていきます。

勘違い①:NR【ゴーティス】はシンクロデッキじゃない!?

 まず初歩から。
 本来「ゴーティス」はシンクロモンスターをエースとするテーマのため、テーマ構築を考えるとなるとシンクロデッキを組みたくなるものです。
 しかも、このデッキはNRプールでも《デッドリーフ》→《シフ》→《白闘気海豚》という1枚初動で効果も活かせるシンクロ展開を持ち合わせていました。これが最初の罠です。
 この動きは、実のところほとんど何も生み出していません。《白闘気海豚》は妨害効果を持ちませんし、後続を生み出す動きもしていません。《デッドリーフ》も消費しただけで②の効果を使えるほど墓地も肥えていません。ここはほとんど行き止まりでした。

勘違い②:NR【ゴーティス】は展開デッキじゃない!?

【ゴーティス】もう1つの強みは《ゴーティス・フューリー》でした。《フューリー》のアクセスには《イーノック》が使えるため、テーマの強みを活かそうとすると《イーノック》をいかに早期着地させるかというデッキ・プレイングになりがちです。たぶんこれも罠です。
《イーノック》を早期に着地させる場合、水属性モンスターを2体並べることで《アビス・オーパー》を展開し、その効果で特殊召喚するのが基本です。この動きには、以下のような弱点があります。①:召喚権を食う
②:手札を消耗する
③:《アビス・オーパー》が止まりやすく、止まると終
④:《イーノック》だけ引くと邪魔

《マーメイド・シャーク》→《ドリーム・シャーク》にせよ、《デッドリーフ》→《素早いアンコウ》→《素早いマンボウ》にせよ、基本的に召喚権を要求して1妨害を持ってきて終わりのため拡張性に乏しいです。
 この動きをするだけで手札を2〜3枚要求するのですが、さらに《イーノック》はサーチに除外コストを要求します。《アビス・オーパー》を飛ばすこともできますが、そうでなければさらに魚族を1枚引いていなければならないことになります。よって、展開に特化すると展開札以外に罠を握って妨害数を増やすことにも限界があります。
 さらに《アビス・オーパー》はリンク先にイーノックを特殊召喚するので、無効系はもちろん除去妨害を食らっても展開が止まります。こうなると〝無〟です。NRでは先攻で妨害を食らうことはほぼありませんが、後攻では通用しない動きといえるでしょう。イーノックに特化することは、先攻に特化することとほぼ同義です。
 先攻取って大量消費1妨害エンド、がどれだけ有意義かというお話ですが……。
 そして《イーノック》は上級モンスターなので、展開できない時はただ手札に溜まります。弱。

 私の気付きのように書きましたが、まあおそらくここまではゴーティスを触ったひとの共通認識だと思います。その結果、魚族召喚エンドでも妨害が成立する《フィッシャーチャージ》や素引き《フューリー》を中心とする罠型挙動が注目されたものと認識しています。

 しかし、私にはそうして罠プランを厚くした【ゴーティス】もうまく扱えませんでした。
 魚族サポートの魔法が手に詰まると事故になること(罠に寄せるとこれを誘引しやすい)、罠で戦わざるをえないハンドで罠を打っても後続が続かない、辺りが不満点でした。有象無象の罠デッキレベルといった印象です。

 以上を踏まえて、私は「弱点を克服した【ゴーティス】」の考察を進めました。

考察①:NRゴーティスは《イーノック》に依存するべきではない?

《イーノック》への依存、これが第一の課題でした。
 先述の通り、《イーノック》を積極的に出力しようとすると展開デッキになり、先攻に寄る、先攻にしても消耗が激しいといった問題を抱えます。また、展開できなければ上級の《イーノック》は詰まり札になります。初動に《イーノック》を握ろうとすれば3投になり、《イーノック》のみ事故の発生率も高まります。
《イーノック》に依存する限りデッキや手札を一定数展開札に割かなければならず、拡張性にも限界があります。

考察②:NRゴーティスは《フューリー》に依存するべきではない?

【ゴーティス】最大の強みが《フューリー》にあることは疑いようがありません。《フューリー》の前提なしに、【ゴーティス】を語ることはできないとさえ言っていいかもしれません。
 ——いいえ、だからこそ【ゴーティス】は《フューリー》に依存するべきではないのです。《フューリー》の存在を前提として構築する限り、《フューリー》を握れなかった場合にデッキのパワーは著しく失われることになります。そんなデッキが《フューリー》へのアクセスに枠を割いていたら、その穴埋めをする妨害札も積めないのではないでしょうか?
 あるいはそもそも《イーノック》に依存しないということは、《フューリー》へのアクセス力をある程度捨てるということでもあります。【ゴーティス】というテーマとしてではなくとも、デッキとして《フューリー》に依存しない干渉力を設ける必要がありそうでした。

考察③:NRゴーティスは〝相方〟で化ける

《イーノック》に依存せず、《フューリー》に依存しない。それらを握らずとも、戦えるような手札が来るようにする。そのためには、デッキに〝相方〟を積む必要があると私は考えました。
 つまるところ、【ゴーティス】以外のもう1,2アーキタイプをデッキに組み込むということです。【ゴーティス】として動けない場合はそちらのデッキとして動き、手が揃ったら《フューリー》や《アビス・オーパー》を投げる。
 このような組み方をすると、【ゴーティス】側としても《フューリー》以上の妨害力を得ることができ、また相方側もデッキの動きに加えて《フューリー》のシステム妨害や《オーパー》の除外除去を持つことになります。《フューリー》が設置すれば新たに動かずとも妨害として機能し続ける【ゴーティス】の強みを最大限生かせる道といえるのではないでしょうか。

 こうして、私の【ゴーティス】はテーマの動きに依存しない複合デッキとしての道を模索することになりました。
 そして完成したのが、以下のデッキというわけです。

#第6回真佐杯 ベスト4構築【ドラゴンアイスドラメghoti】

MDには「ゴーティス」カテゴリが実装されていない。泣

0.事の発端 - 《ドラゴン・アイス》とは何者なのか

 元を辿れば、私の【ゴーティス】構築は「レベル5モンスターをどうやって供給するか」というところから始まっていました。
 というのも、NRプールには《白闘気海豚》の他にもう1枚、魚族のSモンスターが存在します。レベル7の《白闘気一角》ですね。このカードはS召喚成功時に墓地の魚族を蘇生できるため、アドを取って楽しむタイプのデッキを組む私に取っては《白闘気海豚》より魅力的なカードでした。例えば《デッドリーフ》を再利用できたり、《イーノック》を釣って墓地効果を使った《デッドリーフ》を戻したり、真佐さんは《ロック・スケイル》を蘇生して妨害に使っています。
 この奇数のレベルを持つモンスターは、単純な【ゴーティス】の動きでは出力できません。《シフ》+1体で出力するには、レベル5モンスターが必要です。《ドリーム・シャーク》は自然に採用できるカードの1枚ですが、中盤以降《シフ》でシンクロしたい時に安定して供給できるようなカードではなさそうでした。
《ジョーカーズ・ナイト》なども候補に上がりましたが、様々な事情を鑑み《ドラゴン・アイス》に落ち着きました。

 まず、このカードは相手ターンに特殊召喚することができます。
 出てくるだけなのでいわゆる妨害系の手札誘発のようなはたらきをするわけではないのですが、このデッキではそのアクションがアドバンテージにつながります。
 その最強のパターンが、「後0で《ドラゴン・アイス》から《素早いアンコウ》を捨てて《素早いマンボウ》を2体出す」です。《ドラゴン・アイス》は水属性のため、これが通ると召喚権を使わずに《アビス・オーパー》着地+除外コスト確保まで成立します。
 そこまでいかずとも、中盤以降に《ドラゴン・アイス》を通せれば展開らしい展開をせずに《アビス・オーパー》を通しに行けるのがこのカードです。さらに召喚権を使わず魚族の展開が狙えるのはもちろん、《アビス・オーパー》は妨害受けが弱いカードなので、アクションを費やさずに投げられるなら妨害された後のケアもしやすくなります。
 もう1つの強みとしてこのデッキではドラゴン族であることが活きているのですが、この点については次項でお話しします。というのも、これが強みになるのはこの型においてのことであって【ゴーティス】普遍の強みではないからです。研究の過程においては、上記が《ドラゴン・アイス》の強みでした。
 何度も出てくるレベル5でありつつ召喚権を使わずに動きに寄与できる、このことから《ドラゴン・アイス》型【ゴーティス】の研究が始まりました。

1.【ドラゴンメイド】という相方

 その後【ゴーティス】の弱みと向き合い、〝相方〟探しが始まりました。
 条件としては「召喚権に依存しない」「安定して妨害を握れる」「継続的に圧力を掛けられる」「少ないハンドで機能する」辺りです。【ゴーティス】の動きを食わず、【ゴーティス】側が来なくても戦えて、【ゴーティス】と合流すると足し算で強くなり、【ゴーティス】と相手の妨害を吸い合い、ごちゃ混ぜのハンドでも機能するような相方を探していました。
 その中でも有力だったのが【メルフィー】と【ドラゴンメイド】です。それぞれの特性を以下に示しておきます。

【メルフィー】
・召喚権を全く食わない
《メルフィー・パピィ》《メルフィー・キャシィ》は1枚引くだけで妨害になりうる
《メルフィー・ラッシィ》で消費しない限り継続的にアドを取り続ける
・お互いに相手ターンシンクロなので《光来する奇跡》《スターライト・ジャンクション》によるアド獲得を共有できる
《魔轟神獣キャシー》が《ドラゴン・アイス》とシナジーして妨害になる
●《ラッシィ》の素材が枯れるとメルフィー側のパワーがなくなる
●【ゴーティス】の動きにあまり寄与しない
●コンパクトに機能する妨害の質があまり高くない

【ドラゴンメイド】
・一度揃えば召喚権を食わずにアドを取り続ける
《ドラゴンメイドのお片付け》《ドラゴンメイド・エルデ》で召喚権を使わずに展開できることもある
《ドラゴンメイド・ラドリー》が《ドラゴン・アイス》や《素早いアンコウ》を落とせる(あとラドリー自体が水属性)
・☆3☆2を並べられるので3体素材で《シフ》でのS召喚を狙える
・いきなり打点を出して勝てる時に勝てる
《崩界の守護竜》の妨害の質が高い
・《崩界の守護竜》《お片付け》のコストに《ドラゴン・アイス》を充てられる
●最初の出力などに召喚権を使う
●妨害がお互いに種族参照だが種族が違う

 最終的に【ドラゴンメイド】を選択した決定打は「《崩界の守護竜》《お片付け》のコストに《ドラゴン・アイス》を充てられる」でした。欠点として挙げた「妨害がお互いに種族参照だが種族が違う」ですが、《ドラゴン・アイス》がコストに相当することである程度ケアされます。むしろそれ自体が妨害にならなかった《ドラゴン・アイス》が、妨害に関与するカードに昇華される組み合わせでした。
 当初は《ラドリー》で《ドラゴン・アイス》や《素早いアンコウ》を落とす役割を強く見ていましたが、罠を落として終わるパターンなども鑑みてトーナメントシーンでは主力に値するカードではないと判断し、大会前にピン投まで絞りました。
 後述する《妖醒龍ラルバウール》なども採用されているため、ドラゴン族を参照する妨害は容易に、それどころか蘇生して場に残る補助モンスターをさらに活用しながら発動できます。手札を数枚消費して1妨害を立てていたデッキとは比べ物にならないほどの効率です。

2.【ゴーティス】における《ラルバウール》

 このカードを見つけたひとは天才だと思います。

 なんでこのカードを採用したんだろうとずっと思っていたのですが、おそらくは《光来する奇跡》の参照先だったのだろうと思います。トップに☆1ドラゴンを固定するのは強制効果なので、ドロー目当てで《光来》を採用する場合も何らかの☆1ドラゴンを採用する必要があるのです。

 そんな《妖醒龍ラルバウール》ですが、一般的にこのカードを運用する際には、「ラルバウールの対象が他に存在せず本筋のモンスターがサーチできない」という事態が危惧されます。特にNRのような低速環境では、破壊されるモンスターと対象にするモンスターを展開することがそこそこ困難になります。
 しかし、【ゴーティス】においてはその限りではありません。《素早いマンボウ》は戦闘破壊されると次の《素早いマンボウ》を呼び出し、「白闘気」Sモンスターは戦闘・効果で破壊されると自己蘇生する効果を持ちます。これは《ラルバウール》のSSタイミングと同じであるため、《ラルバウール》が着地する際には確実に隣に魚族・水属性モンスターが存在することになります。
 このことから、NR【ゴーティス】における《ラルバウール》は魚族・水属性サーチカードとして自然に採用できるカードとなっています。

 墓地発動なので《ドラゴン・アイス》や《闇の増産工場》で捨てても機能しますし、《ドラゴンメイド・ラドリー》から落ちても有効牌になります。
 手札を捨てるので《素早いアンコウ》のトリガーにもなります(サーチ効果のタイミングで捨てて処理後SSなので、魚・水対象の確保にはできません)。
 レベル1であることで、偶数盤面+《ラルバウール》を《白闘気一角》のS召喚に繋ぐこともできます。
 最悪対象がいなくても、自身を対象に《魔晶龍ジルドラス》をサーチすることが可能です。このデッキはバックで戦うデッキなので、魔法罠のバックアップができるこのカードは非常に強力です。対象を除外から選ぶこともできるので、《ドラゴンメイドのお片付け》や《迷い風》といったカードを再利用することも可能です。《迷い風》は破壊されても再セットできるカードのため、特にこれが破壊された場合は他の魔法罠の回収も積極的に狙えて強力です。《白の救済》を割らせてリクルートしつつ再セットするのもいいですね。

3.魚族の再解釈

《フューリー》に依存しないデッキ構築を行ったことで、魚族ギミックは最も強い動きを安定して出力できなくなりました。妨害もドラゴン族参照に寄せてあり、魚族の強みは一見乏しくなったように思えます。
 ここからはデッキビルドというよりプレイの話になります。《フューリー》なしで戦うことが多くなったレシピの中で、魚族はどのような役割を担っていくことになるのか。デッキを回しながら、少しずつ明らかになっていきました。

①《フューリー》で継続的に妨害する
 当然、《フューリー》を引けばこの役割は変わりません。展開前に「メルフィー」を咎めたり、スタンバイのうちに伏せモンスターを飛ばしたり、墓地へ送られると効果を発揮するモンスターを離しておいたり……環境的に見てもかなり有効に働く妨害です。
 妨害を打った上で自分の動きができるため、相手の妨害をいなす力も高いといえます。非常に厄介なため除去を受けますが、再サーチもできれば他のバックも強力なため気にせず突っ張りましょう。

②《アビス・オーパー》で除外する
 除外除去は強力です。毎ターン表裏もカードタイプも問わず打てるのは類を見ない強みです。
 このカードは展開カードではなく、除去カード・リソース破壊カードとしてみています。相手のpig持ちやバックを毎ターン咎めていきます。
 一度出してしまえば《フューリー》で毎ターン避難できるので、また自分ターンの《フューリー》と合わせて毎度行動前に2除去を放てることになります。

③「素早い」でアドを取る/デッキを掘る
 手札・デッキから落ちるだけで2面も展開するこのカードはバケモノです。まずこれだけでボードアドバンテージが取れます。展開力のないデッキであれば処理しきれず、先頭に依存していれば《マンボウ》に後続を確保され、残ればそのまま《アビス・オーパー》です。召喚権を使わずに魚を展開され、さらに盤面を除外されます。これを許さないためにはバラ撒かれた《マンボウ》を処理しなければなりませんが、このアクションには召喚権を切っていないため妨害を吐かせた上で動きに入れることになります。
 さらにこの動きはデッキをゴリゴリに掘るので、ドローの質を高めることに繋がります。これは【ドラゴンメイド】側の特性でもありますが、これによってドローでは妨害のようなカードを引く確率を高めることができます。
 最悪《マンボウ》だけ引いても、壁として置いて戦闘してもらえば墓地アドと盤面アドを取れます。

④《デッドリーフ》でドローする
 これでした。
 
NRの中速デッキはドロー力が要といっても過言ではありません。直接的な妨害カードである罠を引き込めたり、即ち手数である手札を増やすことができます。罠が増えれば妨害が相手を抑え切ったり、バック除去が相対的に無力になったりします。手数が増えれば相手の妨害がこちらを抑えきれなくなります。ドローは相手とのアドバンテージ差を拡大し、相手を潰しにかかります。継続ドローソースであればなおさらです。
《揺海魚デッドリーフ》から《素早いアンコウ》を落とすと、《素早いマンボウ》を2体展開します。これらが素材などになってすべて墓地へ送られると、墓地には《デッドリーフ》に加えて3体の魚族が揃います。これで1ドローです。ボードアドを稼ぎ、場合によっては《マンボウ》がさらにデッキに触った上での1ドローです。とんでもないアドバンテージ形成能力です。
 あるいは《マンボウ》や《ラドリー》から直接落としてもいいでしょう。《デッドリーフ》は墓地肥やし能力をドローに変換するカードといえます。
《アンコウ》《マンボウ》をデッキに戻しているので、手札にもう1枚《デッドリーフ》があったり手札の《アンコウ》を切る手段があったりすれば、再び《マンボウ》のアド生成を押し付けることができます。墓地効果は当然召喚権を要しませんから、召喚行為以外でどれだけのアドを形成することになるでしょう?
 当然《デッドリーフ》は墓地から除外される消費カードになるわけですが、それを有限としないのもこのデッキの恐ろしいところです。《イーノック》のcip効果で帰還してやりましょう。フィールドでこそ効果が無効ですが、素材などにすればまた墓地に戻るので、適宜こうして再利用します。《白闘気一角》はこのために《イーノック》を蘇生できるのが強力ですね。
 帰還方法として《混沌空間》を採用していた時期もありましたが、トーナメントシーンでは十分な役割を持ったカードではないと判断し、大会前に抜きました。

 このようにして、このデッキの魚族パーツは「特定のカードを引かないと弱い」から「握れば強いしいっそ引かなくても強い」まで跳躍しました(握って弱いような魚はみんな抜けました)。

4.そして40枚へ

 しばらく44枚構築で回していたこのデッキですが、大会当日の練習中に40枚まで絞る判断をしました。
 強めのフリー対戦程度であればギミックの面白さを優先するのですが、トーナメントシーンでは妨害を少しでも握りに行く必要があります。面白カードを手札に貯めている場合ではありませんし、中長期戦に持ち込んで遊ぶようなカードを握っている場合でもありません。

 具体的には、《ラドリー》2枚、《ジルドラス》1枚、《混沌空間》1枚を抜きました。
《ラドリー》については、ランダム墓地肥やしが〝動き〟として十分な強さを持たないと判断しました。このカードを初動として引くことが強いとはいえませんし、召喚権を割く動きとして強いともいえません。動き出してからアド差をより開くために使ったり、「ドラゴンメイド」の展開力から水属性モンスターを出力するために採用するカードに留まることとなりました。
《ジルドラス》については、引いて弱いパターンが目立つと判断しました。2回打つこともほとんどありませんでしたし、ガバ伏せで相手の除去を散らしている限りどうしてもバックアップが欲しいということもそうありません。《白の救済》への除去には構えたいくらいです。除去を打たずに攻め込まれると何もできないといった渋いカードだったので、引きすぎないように1枚に絞りました。
《混沌空間》については、必要性に乏しい上振れ面白カードだと判断しました。帰還手段は《イーノック》で十分だという感触がありましたし、《デッドリーフ》を帰還する以外にほとんど役割が無く、カウンターが4個貯まらないシーンではほとんど無の存在です。手札の質をこんなカードで低めている場合ではないので、このカードを抜きました。

 以上4枚のカードを抜くことで、洗練された40枚のレシピが完成しました。

まとめ

 ここまで1万字を超えるボリュームとなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
《アビス・オーパー》と《フューリー》というポテンシャルを持つ【ゴーティス】に、それ以外の手牌でも戦える力を与える。そのための研究は《ドラゴン・アイス》と【ドラゴンメイド】という相方に辿り着き、そして第6回真佐杯ベスト4という形で結実することとなりました。

 大会の後NoRichesレギュレーションに改訂があり、トップメタの【ヴェンデット】や【鉄獣メルフィー】が大幅な規制を受けました。【鉄獣メルフィー】微有利などとのたまっていたこのデッキの環境での立ち位置も、また変わっていくかもしれません。
《迷い風》の制限化もあり、本記事のレシピは見直しを余儀なくされています。これからこのデッキはどうなっていくのか、あるいは私がデッキや環境に飽きるのか。

 何かあればまた追記したいと思います。
 道のりは定かではありませんが、どうあれこれをきっかけにNRやNRゴーティス、そして何よりデッキデッキビルドという営みに興味を持っていただければと思います。

 改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございました!
 今回の記事を通して興味を持っていただけた方は、是非noteおよびTwitterのフォローYouTubeのチャンネル登録をよろしくお願いいたします!
 それではまたどこかでお会いしましょう、じゃあね!

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2023.6.20追記 《迷い風》制限を受けて

 真佐杯が終了したその日に発表されたNoRiches新制限で、【ドラゴンアイスドラメGhoti】に2投されていた《迷い風》が制限カードに指定されました。
「単独で妨害になる」「1枚で2アクション期待できる効率」「ハンドコストやラドリー落ちから仕事できる妨害」といった都合の良さから確実に代替できるレベルのカードを見つけるのは困難でしたが、どうにか1枠に適合するカードを見つけてきました。
 以下に改定案レシピを載せておきます。

2023.6.9 新制限レシピ

《神の氷結》

通常罠
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドに水属性モンスターが2体以上存在する場合、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
(2):このカードが墓地に存在する状態で、
自分フィールドにレベル5以上の水属性モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動できる。
このカードを自分フィールドにセットする。
この効果でセットしたこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

《神の氷結》 -遊戯王カードWiki

《神の氷結》は《迷い風》の相互互換に近いカードに思えました。
 致命的な点として発動条件があり、引いただけ、ドラゴン側を引いているパターンなどでそもそも機能できない問題を抱えています。
 他方で明確な強みとして、能動的に復帰できる点が挙げられます。《ドラゴン・アイス》やSモンスターの展開に反応してセットできるため、相手がEXモンスターを展開してこないことで妨害を確保できない、といった状況は回避できます。
 手札から伏せるにあたっては「伏せの枚数」という情報そのものが圧力になるので、多少手打ちしにくくても罠として入っていることがそれなりに意味を持ちます。

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