ドナー適合通知がきた話


数年前に骨髄バンクに登録したのだが、少し前にドナー適合通知が届いた。

結果としては、私の経過観察中の病気が原因でコーディネートは見送りになったのだが、私にしては色々なことを考えたので残しておきたいと思う。



まず、私は提供意思があったが家族の反対が思ったよりも強かった。

ドナー登録する際、夫には話していたがまさか本当に適合するとは思っていなかったらしく、調べる前から「危ないことはしてほしくない。何かあったとき残される俺の気持ちにもなってほしい」と言われた。その後、骨髄バンクから届く冊子などをしっかりと読み「内容は理解したし、危ないことになる確率も低いと分かった。でも100%じゃないなら同意はまだできないかもしれない…」とのこと。

「私になにかある確率と、万が一、適合者が私だけで私が断った場合患者さんになにかある確率どっちが高いかなって考えると、やっぱりできることがあるのならばしたい。でも、私も家族のことがなにより大切なので家族の理解と応援がないまま、自分の気持ちだけで勝手に進めようとは思わない。」
ということを丁寧に説明し、最終的には
「怖いし心配だけども、あなたがやりたいなら応援はする」と言ってもらえた。


ここまでは良い。

問題は田舎の両親である。

献血に足繁く通い記念品をもらったこともある母は、絶対に反対しないと思っていたが、まさかの大反対。父も、そんな危険なことはやめろ!と大激怒。
あなたたちふたりから生まれて、いつも人のためになにかしているあなたたちを見てきたからこういう人間に育ったのよ〜と言いたかったが、火に油を注ぐ結果になりそうだったので、ひとまず骨髄バンクから冊子を送ってもらうことにした。

「私がこの先こんな風に人の役に立てることなんてないかもしれないよ!」と言ったら、ひさしぶりに怒鳴られてしまった。

結婚式も控えているのに、まだまだこれからなのに。と何度も言われたが、それはドナーを待っている患者さんも同じだろうと思った。まだまだこれからだよ。
そして、結婚式控えてるのに!と言われたが、それでお断りをしたとしても、次は子供できるかもしれないのに。次は、子供がまだ小さいのに。とかで結局どのタイミングでも同じでしょうよ!(反抗期再来)

その後、「あんた自分の家族が病気になったとき骨髄がいる!ってなってもあなたができないってなったらどうするの?!いいの?!」と言われたのだが、私としては、骨髄移植は2回までできるらしいし、そもそも我が家は兄弟たくさんいるけど、骨髄バンクに登録してる人たちは血縁者からの移植ができなくて藁にもすがる思いで登録してるんじゃないのか!自分の家族が病気になって、もう赤の他人に頼るしかない状態想像してみて!自分の時はしてほしいのに、人のときはできないってなんかずるくない?!とかなり熱くなってしまい(反抗期再来)

とにかく心配な両親vs私
の戦いはまあまあな言い争いで幕を閉じた。

心配してくれるのはわかっているけど、悪いことをしようとしているわけではないのに怒鳴られるのは納得いかない。人のためになるかもしれないのに強く反対されたのもショックだった。



一旦、家族の了承がとれているかの欄は空けたままで問診票を記入したのだが、数日後、経過観察中の病気があったため、今回は見送ると連絡がきたときは申し訳なさでいっぱいでしばらく落ちこんだ。

登録する際、服用中の薬は1ヶ月前から休薬すれば大丈夫って言ってなかったか?と思ったが、たてついて骨髄バンクの担当者の手を煩わせるのは嫌だったので黙っていた。今回私は役不足だったということだ。

患者さんは、ドナーが見つからないことよりも見つかったのに断られたときに傷つくとどこかで見たことがある。想像すると、期待させておいて結局できませんはあまりに酷すぎて、多分ずっと心にしこりとして残るのだろうなと思う。大袈裟かもしれないが、ひとりの人間を見捨ててしまったような気持ちである。

あまりに消沈している私に、夫は何度も、責任を感じることはない。人のことを考えられるのは素晴らしいことだけどもあなたの健康がなによりも1番大切だからね。と言っていた。多分すこしホッとしていたと思う。
夫は、深夜に万が一にも私がいなくなるかもしれないと思い、泣いたこともあったらしいのですこし申し訳なかったなとも思う。泣くほど心配なのに私の気持ちを尊重してくれる夫には感謝しかない。

ちなみに両親も安心したそう。


そのようなことがあって、ここ数週間は生きることについて深く考えた。家族と改めてこういう話をすることもなかなかないので、そのような機会を頂けたことはありがたいなと思う。


まだ申し訳なさや無力感でぼうっとすることもあるが、今あるなにもかもが当たり前ではなくとても幸せなことであると改めて知れて良かった。

今はとにかく自分の病気を完治させて、心身ともに健康になり、次に適合通知がきたときはきちんと対応できるようにしようという気持ちでいる。そして家族との時間をもっと大切に過ごしたいとも思う。

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