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2017年に読んだ80冊から選ぶ3冊のブックレビュー(オバラミツフミ)【#3:今月のテーマは「今年読んだ本ベスト3」】

もともと本をたくさん読むような子供ではなく、今年に入るまで、人生でおよそ50冊程度しか読書したことがありませんでした。そもそも高校を卒業するまで「本を読もう」と自発的に考えたこともなく、大学入学後に気になった本をパラパラと手に取るくらい。

ただ、今年読んだ本は #小原課題図書 も含めておよそ80冊(来年は最低でも120冊読みたいですね…)。とても多いとは言えない数ですが、書籍から得た知識を自分の筆にのせ、血肉化していく感覚を味わうことができました。

執筆の参考になる本、問いを与えてくれる本、無数の選択肢の中から次に進むべき方向を示唆してくれる本…と、さまざまありましたが、以下に「今年のベスト3」を紹介します。

青春漂流

1冊目は『青春漂流』#小原課題図書 でリョーさんに選書していただいた本です。これから数年先の人生をどう生きるか、どう生きたいかを考えるきっかけになった一冊。

同書は”青春”をテーマに扱っています。著者の立花さんによると、青春とは「それが過ぎ去ったときにはじめて自覚するもの」。それが青春かどうかであるかを考える暇などなく、精一杯生きることに熱中しているうちに過ぎ去ってしまうのだといいます。そして、人生にそうした時期を持たない若者が増えているのだそう。若者の多くは、肉体だけが若く、精神が老いぼれているとも語られています。

同書の言葉を借りれば、そうした青春を生きられなかった人間は「世間の常識から一歩も外れないようなことばかりいい、また、そういう身の処し方、生き方しかしようとしない。そういう人の人生は、精神的には墓場まで一直線の人生である」

立花さんは、冒頭から強烈な言葉で、心の底にある静かな水たまりをふつふつと煮え立たせる。同書で語られる「青春を生きた人たち」の姿には、心から背中を押されました。

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画一的だった働き方に多様性が認められたことで、生き方に正解がなくなりました。正確に言えば正解などなく、つくるものなのでしょうが、正解をつくることが当たり前だと考えられるようになりつつなっています。

身の回りにいる人だけでも、肩書きのない職業に挑戦する人や、名前のない価値を世に届けようと試行錯誤を繰り返す人が増えました。僕はそういった人たちを尊敬するし、自分もそうした人生を送りたいと思っています。

ただ、日本社会において、挑戦には嘲笑がつきもの。努力することに斜に構えがちな風潮が、誰かの決心を妨げることを何度も見てきました。僕も、誰かに笑われたことのある一人だから、その悔しさがよくわかります。

ただ、当たり前すぎることですが、人生は一度しかありません。毎日失敗を繰り返したとしても、人生をやり直すことができません。それなら、何歳になっても青春を生きるべきだと思います。

誰でも、誰かが背中を押してくれる人がいれば、自分の夢に向かい続ける人生を送れるはず。僕にとってその「誰か」がこの本でした。

先に述べた精神だけが老化した青年とは、実は、あらゆる失敗の可能性を前にして足がすくんでしまった青年のことである。彼は口を開けば人生にチャレンジしないじぶんのいきかたについていろいろ聞いたふうのことをいうかもしれない。しかし、真実は、彼は人生を前にして足がすくんでしまっているというごく単純なことなのだ。
人生論は、もっぱら喫茶店やバーの椅子の上でかたられるものと思っている人がいる。自分の人生とは無関係の論であると思っている人がいる。しかし、ほんとうの人生論は語るべき対象というよりは、実践すべき対象なのだ。

来年大学に復学して、大学6年目を迎えます。ちょっとふらふらしすぎたことに反省していますが、過去に行ったすべての判断が今の自分を作っています。

「未来の自分が、過去の自分を褒めてあげられる、今の自分でありたい」。読了後、そんなことを考えました。何かを始めるときに、「もう遅い」なんてことはないんだと思います。やりたいことがあるけど、自信がない。そんな人にオススメです。

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『青春漂流』(立花隆/講談社文庫)
http://amzn.to/2BOEBSC

ゆっくり、いそげ

編集者・モリジュンヤさんが紹介してくれた『ゆっくり、いそげ』は西国分寺のカフェ「クルミドコーヒー」のオーナー・影山知明さんが著した一冊。カフェ経営を通じて実現した「人を手段化しない経済」について書かれています。

同書の中で強く意識したのは、「人がどれほどストーリーに動かされるか」です。経済合理性を無視して、自分が信じる価値を追求し、ともすれば社会へのアンチテーゼともいえる経営手法で人と人を繋げていく影山さんの想いに心を打たれました。

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まだ公開前の記事なので詳細はかけませんが、先日とあるスタートアップで働く女性をインタビューしました。彼女は「名前のない価値に名前をつけ、世の中に価値を生み出すことが自分の仕事だ」と語っていました。

年はいくつも変わらないのに、自分の信念を強く持つ姿に、心を打たれました。そして、自分も価値の消費者ではなく、価値の送り手でありたいと、強く感じました。

同書でも同じようなことが書かれています。

まだ世の中に評価の定まらない仕事であったとしても、それを受け止め、価値を見出してくれる「受け手」のあることが「贈り手」の背中を押す。仕事の主の勇気になる。受け取ってくれる人の笑顔が「贈る」ことの喜びを教えてくれる。

昨今よく耳にする「コミュニティ」のあるべき姿を考える一冊になっています。半径5メートルの人間関係の重要さ、自分と自分の周囲の人間を幸せにする大切さを学べる一冊です。

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『ゆっくり、いそげ』(影山知明/大和書房)
http://amzn.to/2zQ6RTf

伝わる・揺さぶる!文章を書く

最後は山田ズーニーさんの名著『伝わる・揺さぶる!文章を書く』。タイトル通り、いわゆる文章術を説いた一冊ですが、具体的なライティングTipsが参考になったという話をしたいわけではありません。

この本から学んだことは「人生に問いを立てる」ことの重要性です。冒頭で、「書くことは考えることと同義であり、考えないことは不自由なこと」といった旨のメッセージが綴られています。

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僕は業界に足を踏み入れたばかりのペーペーですが、曲がりなりにも言葉を紡ぐことで生計を立てている自負がありました。ただ、同書を読んで、僕がやっていることは書くことではなく、紡ぐことでもないのではないか?そう自分の仕事ぶりをひどく反省させられました。

書くことでお金を頂いているくせに、過去に執筆した自分の文書をみると、書くことと同義の「考えること」がすっぽりと抜け落ちているのではないかと感じるのです。

自分が書く必然性もなければ、他の誰かに代替されない価値があるわけでもない。じゃあなぜ自分は書くのか?僕のライター人生には、その問いが欠落していました。

すでに自分の生き方を追求する2冊を紹介しましたが、書くことにダイレクトに焦点を当てた同書を読み、まじまじと自分の働き方を考える機会を得ました。

手癖で書いた文章は人を動かさないし、同時に自分を苦しめてしまう。つまり、考えない人生は自分を不自由にする。「この行動は、考えなしの行動なんじゃないか?」と常に自分に問いかける人生でありたい、そうあるべきだと教わりました。

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『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(山田ズーニー/PHP新書)
http://amzn.to/2B3n6AO

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次週は梶川奈津子が執筆を担当します。選ぶ本によって、チームのメンバーが今何を考えているのかとっても気になります。楽しみにしています!

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