ヤノハの夜
実は2020年12月3日を以って、めでたくマーダーミステリーをプレイして1年が経過したことになりました。なのでまずは、その日のことを思い出してみることにします。
当時、僕は社内で新たなチームに配属されたばかりだった。
とはいえ、引き継ぎ期間というか、諸々の準備期間というか、まあ、なんやらかんやらあって時間があるタイミングだった。
まあ、有体に言うと死ぬほどヒマな期間だったということだ。
当時の趣味と言えば、週2回のジム……なんか新しい趣味欲しいなぁと漠然と思っている時期で、Twitterをボーっと見ていた(仕事しろよ)。
その時、シナリオライターの先輩の方々の中で何やらマーダーミステリーなるワードが頻出していることのに気付いた。先輩方がプレイされているものならば、まあ、仕事において刺激になるかなーと軽い気持ちで検索をかけてみることに。
なーんかツイプラにいくつか募集があるぞ。どれがいいんやろ?
そういえば、先輩がやった作品があるって言ってたな。なんだっけ……?
あ、これだ!
ヤノハノフタリだー!などと当時は全部カタカナでなぜか読んでいた(ご丁寧に当時のスケジュール帳にもカタカナ記載だった)のだけれど、
正式タイトルは『ヤノハのフタリ』となります。
間違いないように!(説得力がない)
場所は新橋。サラリーマンの街やんけ。こんなとこでゲームすんの?
そもそもマーダーミステリーってどんなとこでどういう風にやんの?
変な人とかいたらどうしよう?
まったくわからん。まったくわからんが……
まあ、いいや。
行きゃあ、わかるでしょう。
仕事終わり、新橋へと向かうと僕のGoogle Mapちゃんは
多少なりとも緊張している僕を人気のないビルに案内してくれました。
更にツイプラの案内に従って向かっていくと会議室へと到着。
……会議室?
え、こんな会議室でやるもんなの?
ディベートとかプレゼンテーションとかそういう感じなのか?
犯人はお前だ!的なあれだと思ってたのに、ええ……?
自己主張が苦手だからその類は辛いんだよなぁ。
やべー、やっぱ帰りたい。ジム行けばよかった。
でも、ドタキャンとかありえないしなぁ。
あー、行くしかねえ。
などと葛藤と鼓舞を続けること30秒、僕はドアを開けた。
「失礼しまぁす……」
体育教官室入る時のノリの小声……懐かしいな。
ぶん殴られた記憶がばっちりフラッシュバック。
お願い、ジャージのいかついおっさんとかいないでね。
「どうも、こんばんはー」
そこにはにこやかに笑う人の良さそうな男性が立っていた。
後に先生と崇めることになる、紫苑さんその人だ。
しかし、当時の僕はそんなことになるとは当然思っていなかった。
ああ、優しそうな人でえがったわ、とりあえず、
なんかやばいことになっても最悪取っ組み合いで勝てそうだ
などという、人間不信丸出しの思いを抱いていた(紫苑さんごめんなさい)
僕の到着は2,3番目だったかな。どこでもいいと言われたので、とりあえず、座って待つことに。
若そうな男性がふたり、先に着いていた。
会釈しつつ、とりあえず、話しかけてみることにする。
「いやあ、僕初めてなんですよね。マーダーミステリーっていうの、よくわかんなくて……はは、何回かやられてたりします?」
「いえ、初めてです」
「僕は何回かやってますよ」
なに、マジか、何回も!?
まだ若そうだが、もしや彼はとんでもない猛者なのでは?
始まってもいないが既に負けは決定しているのか?
いや、まだなにが勝ち負けをわけるのかもよくわかっていないが……。
そんな勝手に微妙な敗北感を味わう中、メンバーが続々と集結。
みんな思い思いの席に座る。
「では初めての方もいるので、まずはマーダーミステリーとはなにかということからお話をしていきます」
紫苑さんはそう言ってゲームの口火を切っていった。
その後、ルール説明と配役も完了し、ゲームは進んでいく。
みんな思い思いのプレイを行う。
そして真相が語られ、結末に……。
あっという間の数時間だった。
なんだ、なんなんだ、これは!
おいおい、僕は今までなにをやっていたんだ!
こんな体験は初めてだ、と興奮していた。
自分が物語の中のひとりの登場人物として行動していた。
演技とは違う……そう、僕には演技力なんてない。
でも、まぎれもなく、僕は登場人物だったのだ。
そして、みんなとたったひとつの物語を紡いだのだ。
やっべえぞ。
こんな面白いものが世の中にはあったのか。
自分が浮足立つのがわかった。大げさに言うと世界が広がったようだった。
帰りの道中もみなさんと楽しくお話させてもらった。
最初はよそよそしかったのに、たった数時間で打ち解けたのだ。
すげえぞ、マーダーミステリー!
そしてひとりになってやったこと。
それは他のマーダーミステリーの開催チェックだ。
12月帰省の予定を入れていたことを心の底から悔やんだ。
年末年始もバリバリやってんじゃん、マーダーミステリー!
ちきしょー!
最寄り駅に着いた後も興奮が止まらなかったことを覚えている。
いい歳こいてスキップしたいと本気で思ったくらいだった。
夜もロクに寝れなかった。それくらいドハマりしたのだ。
マーダーミステリーにハマるかハマらないかは
最初の作品、GM、同卓メンバーによると思う。
僕はそのすべてに恵まれていたと、胸を張って言える。
始まりの夜は今でも色あせない素晴らしい思い出だ。
それから1年。僕は駆け続けてきた。
さまざまな人や事件に出会ってきた。
今でも素晴らしい思い出を紡ぎ続けている。
あの夜に導いてくれたすべてに感謝を述べることで、
一旦タイプをやめようと思う。
初回から長いな……。
次回からはもうちょっと短くします。