藤平(N-1グランプリ)

「ビックバンボーイズです」

「お願いします」

僕が藤本で

「僕が、水谷です」

最近俺、お化けが見えるんだよ

「へーそうなんだ」

お化けっていうより座敷わらしみたい感じでさ
5歳ぐらいの女の子が俺の部屋でずーっと遊んでるんだよ

「はいはい」

そのせいで俺、全然寝れねえんだよ

「へーいいじゃん」

...

お前さ

適当に喋ってない?

「適当に喋ってないよ」

そうかなあ...

あ、お化けとはまた話が変わるんだけど、最近隣の部屋がめちゃくちゃうるせえんだよ

「へーそうなんだ」

なんかエレキギター?みたいな音がしてさ、全然寝れねえんだよ

「へーいいじゃん」

...

お前さ

やっぱ適当に喋ってない?

「喋ってないよ」

そうかなあ...

あ、また話変わるんだけどよ
最近やっと夢が叶いそうなんだよ!
それで興奮で眠れねえんだよ

「あ〜」

なに、どうしたの

「それはやだわあ」

え?

お前、適当に喋ってると思ったら...

座敷わらしみたいな女の子は?

「いいよ」

エレキギターの騒音は?

「いいよ」

俺の夢が叶うのは?

「やだわ〜」

お前適当に喋ってる人かと思ったら...

本当に他人の気持ちが分からない人じゃん!!!

キモっっっ!!!

お前みたいな奴が今の社会で一番危ないんだから!!!

こういう奴がいるから夜もうかうか寝てらんねえんだよ!!!

「あ〜でもたしかにな、お前の夢は叶えさせてやりたいなあ」

いきなりなんだよお前

「それよりお前」

「さっきからずーっと寝てなくない?」

え?

「座敷わらしみたいな女の子の時も」

あ〜?

「エレキギターの時も」

「夢の時も」

ああ〜!

「お前夜寝た事ある?」

あー!

そう言われれば!

ない!!!

「だろ〜?」

ヤバい!

よ〜く考えると、

中学生の頃から1回も寝てない!!!

「ほら〜」

「中3の冬からだろ?」

そうそうよく知ってんな!

「忘れもしねえよ〜」

「中3の3月10日」

「からだろ?」

...

「懐かしいな、あの時俺は漫才師から教師に夢を変えたんだよ」

...

「それで無事夢を叶えて地元の中学に赴任したら」

「お前がいるんだもんな、驚いたよ」

...

「今のお前の部屋、5歳の女の子が住んでるんだよ」

...

「隣の部屋のお兄ちゃんは中学生」

「最近はエレキギターにハマってるんだと」

...

「そろそろお前の夢を叶えてあげないとな」

「漫才師って夢を」

...

ああ...

頼むよ

「いいか?漫才ってのはお願いしますで始まって、いい加減にしろって笑いながら終わるもんなんだよ」

「漫才らしく行こう」

うん...

あ!俺、もうちょっと現世に残ってよ〜かな〜笑

「いい加減にしろ笑」

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