ライブ配信の還元率とは?
まだマガジン「これからのライブ配信」のシリーズの途中なんですが、最近ちょっとライバーさんの収入がらみの話を耳にすることが多く、その中でたびたび「還元率」という言葉が出てくるのですが、この言葉について最近ひっかることが多かったので、この話を解説したいと思います。
・還元率はライブ配信においては未定義語
皆さんは「還元率」と聞いてどういうものだと想像しますか?おそらく多くのリスナーやライバーさんは「リスナーが課金した金額のうちライバーに報酬として支払われる割合」と想像すると思います。私もそうですし、私のノートシリーズで還元率と言っているのは必ずこの意味で使っています。
でも、世の中でそうだと規定したものはないですし、配信サービス提供会社やライバー事務所、さらには各種ブログなどで全然違う意味で使っています。
だます意図で使ってるんだと思いますし、そういう使い方をしながら還元率の定義を説明してないサイトは基本詐欺サイトと私は決めつけています。
・収入に至る変換は多段である
実際にリスナーが課金して、それが報酬としてライバーに届くまでには数字の変換が何度もあります。ほぼすべてのライブ配信サービスでこのような4段階の変換を経て最終的なライバー報酬が決まります。
事務所契約のライバーの場合で、ダイレクト契約のライバーの場合は4と④が存在せずに③の計算式で出された報酬がライバーへの報酬となります。
ほとんどの人は1から5または4に至る割合を還元率であると考えるのですが、一部の事務所やライブ配信事業者は4⇒5の部分を還元率と言ったり、3⇒4の部分を還元率と言ったりしています。これが、いろんな記事などで還元率がみんなばらばらになっている理由です。
4⇒5を還元率とか言ってるのは本当におかしな話で、基本1⇒4また5が「還元率」でしょうと私は思っています。ですので私のノートではすべてその1⇒4となる割合を還元率と定義して書いています。事務所の取り分は配信サービスの管理外なので。
・実例計算
ライバーの報酬計算はほとんど公開されていませんが公開されているものでいくつか解説したいと思います。リスナーが一定額課金、ギフトした場合にいくらライバーにわたるか?を計算します。
A. 17Liveの準認証非独占契約ライバーの場合
1の段階で、リスナーは100万円用意したと仮定します。
①についてはベイビーコイン購入用の課金メニューとして公開されています。課金額により異なりますが1円あたり2.75(アプリ内チャージ)コイン~4.12コイン(大佐6か月)まで幅がありますが、ここでは仮に平均3コインとします。
すると2の段階でリスナーは100万円×3コイン=300万コインを持っていることになります。
2から3への変換は17Liveの場合はもらったコインがそのままライバー成績になるので等価となります。つまり3のライバー成績も300万コインになります。
そして300万コインの報酬への変換式は公開されており、「獲得c × 1/3 × (1-0.4) × 25%」となります。
<出展>
1から0.4という変数が入っており、これは獲得コイン数や配信時間などで変わりますが、ここでは最大の1の条件を取れたとして計算します。
そうするとそうすると事務所への報酬は25万円と計算されます。
このあと事務所はそこから取り分をとり、残りをライバーに支払うことになります。仮に事務所の取り分を10%とすると22.5万円がライバーの報酬です。まとめると以下のようになります。
この状態だと還元率は25%、または22.5%という表現が正しくなります。ただし実際には1円3コインよりも率のいい購入方法はあるので、実際にはそこからさらに上がる可能性があります。
ただ1-0.4という変数部分で1になる条件を達成していなければさらに下がる可能性もあります。
A. US TikTokの例
次いで情報が複数の事務所から公開されているUS TikTokの例です。US版なのでドル建て、1万ドルをリスナーが用意したとしてまとめます。
コイン購入はTikTokは数少ないまとめて購入すると安くなるということがない料金表なのですがWeb課金とアプリ内課金では違うのでWeb課金のレートをもとにまとめるとこうなります。
最終的には1万ドルが2250ドルとなり22.5%(事務所報酬が25%)で17の準認証非独占と変わらない還元率になります。
<出展>
https://influencermarketinghub.com/tiktok-live-gifts/
似たような結果になってますが一番違うのは②です。
17Liveではここが1対1になっていますが、US TikTokでは0.5がけになっています。ここを知らずにいると報酬が予想より低いというトラブルになることが多いようです。
TikTokでは2段階の乗率による報酬への換算が、17Liveでは③の1段階だけの計算になっているという点が胆になります。
この特性からTikTokのライバー事務所の中には3⇒5のレートを還元率と説明しているところがあるみたいですね。確かに2⇒3での変換レートがどうなっているかって実はライバーにも把握できなかったりします。
②については例えばPocochaなんかはすごい複雑な変換方式になっており、全然予測ができなかったりもしますけど。
・業界の闇
この各社違うルールでしかも内部がほとんど公開されていないという事実がライブ配信業界の最大の闇の温床だと思っています。
公開されてないから悪徳な事務所などがいいようにライバーをだまして還元率を高く見せたりといったことが横行しているように見えてます。
ライバーだましてとんでもない率を事務所が取っていた例もあると聞きます。
ひどい比較ですけど、水商売や風俗業の方がまだこの辺明確になってますからね。だいたいどこもほとんど標準化されたルールで嬢たちへのバックが設定されていたりします。
それがないが故のだましあいの世界になっているように1リスナーの視点からは見えます。
・提言
もちろんライバー報酬の計算式を公開するなんてことはあってはいけません。理由はそれを公開してしまうとライバーの報酬がリスナーからわかるようになってしまうからです(Tiktokはギフトの総量とかがリスナーから見えないのでわからないんですけどね)。それはライバーを危険にさらすことにもなります。
ただ、各ライブ配信サービスとして『総還元率』は開示すべきなのではないかと思っています。つまり売り上げが年間100億円だとしたら、そのうち何十億円をライバー報酬として支払ったか?ということです。
これならライバーの収入の予測にはつながらないですし、ライバーが騙されないための重要な予備知識になるんではないかと思ってます。
まあ、実際にはそんなもんは開示しないでしょうけどね。
よろしくお願いします。