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爆笑問題

高校一年生の時に爆笑問題が来た。

卒業生を送る会みたいなので地元の市民会館に来た。

当時、ボキャブラで飛ぶ鳥を落とす勢いの時だったのでホントに来るとは思えなかった。

来るという噂しか降りてこない一年生。

来るわけないと言う者
忙しすぎて来れないと言う者
でも隣の高校〇〇が来たらしい、など…

市民会館まで、結構歩かされた。

運動部顧問による空手の型披露や
その他の謎の出し物があり

いよいよみんなザワザワが止まらなくなる。

あるのか? 終わりか?


「つぎは爆笑問題さんによる漫才です」
司会進行の生徒による、小さな声の周知…。


わぁあぁあぁあぁあぁあ…

来た!本当に来た…っ!!

2人が壇上に現れた時の歓声たるや
割れんばかりの拍手喝采であった。

「どーもー爆笑問題ですー」

僕はドキドキしていた。
不安だった。不憫と言ってもいい。
ある種の予感。
ここがMAX。これ以上は超えられない。
ネタなんかやらなくていい。
僕を、みんなを、悲しい気持ちにさせてほしくない。もうこの思い出だけでいい。

照れるような2人、静まるのを待つ。
会場全体が集中する…

太田光の第一声が来た

「…みんなやってるかー!!」

…??


「…オナニー!!」

ドンッ!

僕は会場の重力がおかしくなったと思った。

体を強い力で一瞬押さえつけられたような

爆笑。

爆。暴発。

それを見て、さも当たり前のような真顔で
コクンとうなずく太田光。
(私は、今でも2人が漫才中に出す
    この一瞬がたまらなく好きだ)

「あはは…すげぇ…ハハハ…」
軽く震える体、ちょっとした恐怖感。

遅れて笑う、コギャルという人達。
「……ギャハハハハハ」
短いスカートとルーズソックスで
「やべーこいつらやべーwww」

お前も相当やばいよ!とは思うが
それどころじゃない。
しかし
珍しく僕も意見は一致した
そうだ!やべーんだよ!こいつらは!!w

田中裕二
「そういう事を言うんじゃないっての!
 先生方もいらっしゃるんだから!
 校長先生も見てくださいよ!
 だいぶ怒ってるじゃねーか!」

それからはもうあまり僕の記憶がない。
校長先生もやってますよねー?みたいなのがあったかもしれない。
やってるかもしれないけど!!…とか。
先生イジリにコギャル達は大ウケだったような。
流れるような漫才も、まったく憶えてない。

ただ憶えているのは
僕は笑わずに、一言一句逃すものかと
全力で集中して聞いていた。気がする。
自分の笑い声で聞き逃したくない。
笑うのなんか、後で友達と思い返した時でいい。

そんなキモイ生徒?客?になった。

よく爆笑問題で爆笑した事ない、とネットのネタになったり本人達もネタにしたりしているが

私も爆笑しなかった事になってしまった。

みんなと一緒に笑って、いい思い出で終われば
自分にとって事件にならないで済んだのに。



後日。
二年生になった簿記の授業。

年配の男性教諭は
「あんな漫才師に高い金払って何が面白いんだろうなー。
あんなのに何万も払うならもっと違うのに使えばいいと思わないかー〇〇ちゃん?」


もちろん生徒は、なんの反応もしない。

「お前も化粧なんかして短いスカートなんかはかないでさぁ
かわいいんだからもっと真面目な奴と友達になった方がいいと、俺は思うんだよなぁ。」

バツが悪そうに、話をそらすよう先生はそう言った。 

言われたコギャルは
「…は? キメーしウゼー」

珍しく、またもや僕らの意見は一致した。


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