見出し画像

「運を上げたければ空を見なさい」から見る、三段論法の使いかた

家のアパートにはテレビがないのでよくyoutubeを見ています。
様々なチャンネルを見てますが、最近見た「運を上げるコツ」という動画が伝え方の勉強になりました。

その動画の内容は、まとめると下記のようなものです。

「運を上げたければ、空を見上げると良い」
→時間がない現代人にとって、空を見上げるのは自分の中にスペースをつくるということ。
→空を見上げるようにして自分に余裕が出てくると、感謝の気持ちを他人にもてるようになる。
→感謝の気持ちを表現できると、運が舞い込んでくる。

とのこと。

この話を聞いたある小学生の男の子は、実際に空をよく見上げるようになり、あるときいつも使っているバスケットボールに感謝の念が湧くのを感じたそうです。

「自分がいつもバスケを楽しく出来るのは、このボールを作ってくれる会社があるからだ」そう思った男の子は、そのボールの会社にお母さんと御礼を言いに行きました。

その話を聞いた会社の社長さんはそれはそれは喜び、スポンサーになっている自社選手に、その男の子の練習を見てあげるよう取り計らってくれて、男の子はその後バスケの日本代表選手になったとのことでした。

内容も素晴らしいのですが、この話の伝え方はいわゆる三段論法を使っています。

三段論法とは、式にすると「A=B、B=C、ならばC=A」というものです。
この話で例えると

①    運気が上がる(A)=空を見上げる(B)
②    空を見上げる(B)=感謝の気持ちを伝えるようになる(C)
③    感謝の気持ちを伝えるようになる(C)=運気が上がる(A)


相手に順を追って納得させることで、しっくり伝えることを可能にします。

また以前見た舞台で、自然に三段論法を使っている場面がありました。

物語の主人公の男性は、ヒロインの女性の姿を見た子どもに「きれいだろう、あのひと」と話しかけるのですが、その子は「きれい」という言葉を知りません。

主人公はその子に「きれいというのは、この花のように見る者の心を和ませることだ」と説明します。

この物語では主人公が「好きだ」「愛してる」と言うシーンは終始なく、ヒロインへの想いを述べるのはこの場面だけです。しかし観客には十分伝わるものがあります。なぜならこの会話を図にすると

①    あのひと(A)=きれい(B)
②    きれい(B)=花のように見る者の心を和ませる(C)
③    花のように見る者の心を和ませる(C)=あのひと(A)

こうなるので、③まで言わなくても主人公の想いは観客にも伝わるのです。

三段論法というと相手を納得させるとか説得力を持たせるために使うことが多いのですが、この舞台を見ていて、つい伝え方の方に目が行ってしまう自分は「こんな美しい三段論法があるのか」と心震えた記憶があります。

また三段論法は遠回しに悪口を言いたいときにも便利です。

以前、文章教室に行っていたとき先生に「小澤さんは芥川賞狙えると思う」とおっしゃっていただいたことがありました。その後「まあ、芥川賞作家って社会性が欠落してるというか、人としてどうかという人が多いのですが」と続きました。

この会話を図にすると

①    小澤(A)=芥川賞作家になれる(B)
②    芥川賞作家(B)=人間として終わっている(C)
③    人間として終わっている(C)=小澤(A)

と、もし③まで言わなかったとしても、直接自分の口を汚すことなく相手に殺意を持たせることを可能にします。

相手に何かを伝えたいとき「A=Bなんだよ」だけで終わると「ふーん、あっそう」で終わってしまうことが多いですが、本当に大事なことを伝えたいとき、三段論法はとても便利でおすすめです。ぜひ思い出した時に使ってみてくださいね。