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人の心を打つ文章は、内容より書き方で決まる

先日雑誌のインタビュー記事を読んでいたら、元宝塚の女優さんが美しさについて語っていた。

化粧品は何を使っていますか、という質問に対しその女優さんは「化粧水はハトムギ、クリームはニベアです。化粧品は何を使うかより、どう使うかが大事だと思います」とおっしゃっていた。

いつもの私なら性格が悪いので
「嘘やろ、絶対エステ通ったり高級品つかってるで~」
と思ってしまうのだけれど、その女優さんは宝塚時代多くの人から「努力の人」と呼ばれ、言葉より行動で想いを示すような人だったので「そうか、使い方が大事なのだな」と素直に納得してしまった。

思えば以前、忙しい毎日で睡眠時間が足りず肌がボロボロになってしまい、高級化粧品を買って使ってみたけど私の肌にあまり効果がなかった、ということがあった。

一方、丁寧に顔を洗ったり保湿していたころは、ふと鏡の中の自分を見るとお肌が気持ちよさそうに呼吸していて、調子が良かった。
美容では、自分に合ったものを気持ちを込めて使うのが大切なのだろう。

文章でも大事なのは何を書くかより、どうか書くかがだと思っている。

ネットなどでは「スイーツをテーマにした文章は女性にウケる!」「ママ向け記事には、副業やポイ活について書くとバズる!」といった情報が溢れており、そうしたことを中心に教えている文章教室も中にはある。

でも「これを書けば必ず読み手の心に響く」と言い切れるテーマはない。なぜなら響くテーマは人の数だけあるからだ。

そもそもヒットするテーマというのは時代や社会によって大きく左右されるものだし、VUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代に「女性にはスイーツを、ママには副業の文章を書いておけば受ける!」と内容をわかりやすく固定してしまうのはズレてるというか、時代錯誤な感じもする。

書いていて思い出したのがこちら。

2006年のトリノオリンピック、荒川静香選手の演技。今でもたまにこの動画を見ては泣いてしまう。
荒川選手より高くて難しいジャンプを決められるフィギュア選手はたくさんいるけど、私が今でも忘れられないのがこのトリノのプログラムなのだ。

得点にならないイナバウアーを敢えて入れてきたり、ジャンプの高さより美しさを重視したプログラムの内容はもちろん素晴らしい。

でも彼女の演技を見ていると、人の心を打つ美しさとは、プログラムの内容よりも表現者本人の「何を観客に届けたいのか」というあり方が大きい位置を占めるのだと、つくづく思う。

文章ではどんなテーマであっても「自分の主張を、読み手が受け取りやすいように伝える」というコミュニケーションの基本は変わらない。

どうすれば読み手に自分の言葉は届くのか。
その問いと共に書くことは、何をテーマに書くかよりも大切なことだと思っている。