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言葉が心に届くのは、心に壁がない状態の時

先日ふと調べ物をしていたところ、もう絶滅したと思っていたハラスメント文章に遭遇してしまった。
ハラスメント文章とは、読者を追い詰める文章のことである。(私が今そう名づけました)

「あなたのお部屋は片付いていますか?」

「まだそんなやり方をしているんですか?だから結果が出ないままなんですよ!」

「あなたはちゃんと仕事を楽しめていますか?本当にこのままの人生でいいんですか?!」

私だったら「shiran-gana・・」となるが、真面目な人やその問題に真剣に悩んでいる人ほど、こうした文章を読むと混乱してしまうように思う。

こうしたハラスメント文章にはたいてい「今なら無料!個別カウンセリング」とか「この商品で全て解決!まずはこちらをクリック☆」など、売りつけたいものが文末にある。
読者を心理的に追い詰めた後、その唯一の解決策として自分の商品を紹介し購入させるための文章がハラスメント文章である。(ある文章の先生はマウンティング文章とも言っていた)

誰かに何かを質問するときは、口頭での会話にしろ文章にしろ、以下の3つのことを心がけるのが望ましいだろう。

①質問の意図を明確にする
なぜこの質問をしているのか、どういう背景から聞いているのか明らかにしてから聞く。
例えばいきなり「小澤さん、あの案件についてどう思う?」と聞かれるよりも

「小澤さん、今ね、若手社員さん全員に聞いてる質問なんだけど、あの案件についてどう思う?
これから本格的なアンケート取る前に、現場の肌感覚を聞いておきたくて」

など、どういう理由から聞いているのかを先に伝えておくと、相手は安心して応えることができる。「突然ですが、質問です!」が許されるのは基本的にテレビの中だけとし、いきなりの質問はなるべく避けた方が良い。

②自分の答えも添えておく
「私はこう思うんだけど」と自分の意見を先に出しておいてもらえると、相手も意見を出しやすくなる。

以前、前職の上司に「アイディアがあれば自由に言ってね!」と言われたため自由に色々言ってみたところ「自由ってそういうことじゃないんだよ・・」とため息をつかれたことがあった。

イヤあんた自由にってゆうたやん。それなら先に具体例を出しておくれよと思ったりした。

③断る権利があることを示す
「もし言いたくなかったら答えなくても構いません」と言葉でも、言語以外の在り方でもはっきりとこの姿勢を貫く。

私が言っていたコーチングスクールでは、クライアントに2択を迫るような場面で「イエス、ノー、逆提案」の3択を並べるということを提唱していた。
逆提案とは、相手に賛成する・反対するの他に「何かアイディアがあったら言ってみそ」と、新しい選択肢を相手に挙げてもらうことなのだが、これは相手を追い詰める作用を減らす、良い取り組みだと思っている。

質問は、会話でも文章でも簡単に詰問に変化してしまう。

言葉が心に響くという現象は、音が空間にこだましている時の状況に近い。
音は広い空間だとどこまでも伝わるが壁があると防音されるように、言葉も相手の心に壁ができてしまった時点で、もう言葉は相手に届かなくなってしまう。

質問の意図を明確にする、自分の答えを先に明示する、そして相手には断る権利があることを示す。
これらは全て、暗に「あなたは自由だ」と相手に伝えるということだ。自由な世界でのみ、音も言葉も、相手の心に響く。

プレッシャーの中で圧倒的成果を上げることが至上主義な現代の流れに抗って、自由に言葉が響きあう世界を目指していきたい。