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#2.謎解きデザイナーになったゴリラがメインビジュアルを完成させるまで

謎解きデザインーのオビワン(ob1toy)です。
普段は謎解きや宝探しのイベントを企画・制作する会社のインハウスデザイナーとして働いています。
今回はメインビジュアルの制作の流れについてご紹介したいと思います。

私の会社では、一人のデザイナーで年間15〜20くらいのメインビジュアルを制作しています。月に1〜2つは作っているような感覚です。
今の仕事に就くまでは、メインビジュアルなんて作ったことがなかったので、
毎回とても苦労しているのですが、我が子のように大切に育てていく存在でもあります。
そんな、メインビジュアルの制作はどんな流れで進んでいくのか?
ということを簡単ではありますがご紹介できればと思います。

また、このnoteはメインビジュアルに限らず全てのデザインをする上で
他のデザイナーの方もやられているような、ごくごく普通のことを言っているだけの、お恥ずかしい話でもありますので暖かい目で見ていただければと思います。

※あくまでも私自身の考えや作り方、制作の流れになるのでご了承いただければと思います。

メインビジュアルの役割

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以前ゴリラ(私)は、食品パッケージのデザインをしていたのですが、
メインビジュアルはパッケージデザインと似ている部分があります。

例えば、謎解き系イベントをコンビニに置いてある新作お菓子(商品)とします。
イベント内容(ストーリーや謎、全体の流れ)がお菓子そのものになり、
メインビジュアルはお菓子を包むパッケージとなります。
まだお菓子を食べたことのない人に「美味しそう!」「食べてみたい!」と思っていただくのと同様、メインビジュアルを見た人が「面白そう!」「やってみたい!」と思っていただくことが、メインビジュアルの最大の役目です。

特に、謎解き系イベントと知らない人がメインビジュアルを観て、参加するキッカケとなり、謎解き系イベントを好きになってくれたとしたら、デザイナーは嬉しくて嬉しくてドラミング(ゴリラが胸を叩く行為)をするのです。

ただ実際は、1つのメインビジュアルのみで参加しようと思っていただくことは、なかなか難しく「なんか面白そうなポスターだけど…謎解き…?やったことないからな…」と参加するまでにはならない事が多いのではないかと思います。
まずは、謎解きイベントって面白そうと思っていただくメインビジュアルをコツコツと制作し、アプローチした結果イベント参加につながっていく。
そんな美味しそうなメインビジュアルを常時作っていく事が大切なんだと感じています。

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美味しそうなビジュアルを作るためには、どんな素材が必要なのか…仮に、メインビジュアルに必要なイラストを制作する《農家》の方や、タイトルロゴを制作する《漁師》がいるとすると、集めた食材を元にメインビジュアルを調理する《シェフ》がデザイナーになります。

しかし、私の会社では農家も漁師もシャフも全て一人に任される事がほとんどです。そして私の会社以外でも、謎解き系のデザインを行なっているデザイナーの方の多くが同じなのではないかと感じています。
全てを一人で行うということは色々な技術をつける上では良いのですが、どうしても本業のイラストレーターやロゴデザイナーの方の技術には劣ってしまいます。
また、時間も限られているため自分一人で出来る料理(ビジュアル)が似てきてしまうことも多いです。

お客様に、いろんなバリエーションの料理を振る舞えるように、限られた食材の中で調理していく事が、デザイナーの腕の見せ所なのかもしれません。

ちなみに私が作れる料理は、TKGくらいです。

制作.1〜 《準備》

メインビジュアルを制作するとなった場合、
実作業は、ラフ制作 → 初稿デザイン → ブラシュアップ → 校了
ザックリとこのような流れです。
私の働く会社では、ラフ制作から校了までの全体の作業時間として10日間ほどで仕上げていくことになります。※実際は確認時間などもあるので1ヶ月くらいとなります。
意外と時間があるのですが、他の案件と同時進行となるとガッツリ集中してメインビジュアルに取り組む事が難しくなってきます…

そこで、重要になってくるのが《準備》です。
ビジュアルを制作する上でここが一番重要だと言っても過言ではありません。
準備がしっかり整っていれば、制作もスムーズにいく事が多いかと思います。

ここで言う準備とは、今回作るビジュアルをどんな感じに作っていこうかと考案する時間で、準備にかけれる時間は実作業外なので、通勤時間や筋トレをしている時などを使い、じっくりと考案していきます。

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私が準備をする時に必ず訪れる場所、それが《ピンタレス島》Pinterestです。
これはもう、デザイナーの方ならみなさんご存知の島ですね!
「私はピンタレス島の永住権を持っているぞ!」っていう方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
この島は本当に便利ですよね…欲しい素材が溢れんばかりに採取できます。
数年前にこの島を発見した時は宝島かと思いました…
そんなピンタレストでの情報収拾や参考資料などをもとにビジュアルに使えそうな参考イメージを集めていきます。

また、同業種のメインビジュアルもチェックしていきます。
似ている内容のイベントも沢山るので、参考にさせていただいたり、あまり似すぎないようにするのにも、同業種のメインビジュアルのチェックは欠かせません。
特にリアルに脱出されるイベントのメインビジュアルはやはり毎回凄いですね…
「流石だな〜」と感動させていただいています。

最後に、集めた参考イメージもとに制作するビジュアルのゴールを決めていきます。「今回デザインするビジュアルはこのイメージのこんなタッチで」「色合いはこんな感じで」などたくさんの参考イメージをもとに、いよいよラフ案に取り掛かっていきましょう!

制作.2〜《ラフ案》

さて、決めたゴールへ集めた参考イメージを元にラフ案を制作していきますが
ラフ案を書く前に、私はラフ案のラフを描きます。

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お恥ずかしくて、見せられるものではないですが…
ラフのラフは自分だけが理解できれば良いレベルで描いていきます。
ここにあまり時間はかけられないので、丸や四角などザックリとした線のみで描いていき、とにかく数を沢山出す事が重要なのかもしれません。
沢山描いたアイディアの中から、デザイン的にまとまっているものを選び、ラフ案へと成長させていきます。
これは自分によくある事なんですが、一番最初に描いたラフがやっぱり一番思い入れが出てしまい、結果的に育てていく傾向にあります。

そして、ラフのラフを元に、ラフ案を仕上げていきます。
あまり良くはないのですが、私はラフ案制作に他のデザイナーの方より多くの時間をかける傾向があります。
というのも、自分の中でラフ案を制作している中で最終的なゴールが見えていないと不安になってしまうからです。心配性なんです…笑
「ここはこんな感じで仕上げるよう」など不安要素を解消しながらラフ案を作成していく事が多いです。

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上の画像は、フォトショップで仕上げたラフですが、イラレで制作する場合や手描きで仕上げる場合もあります。それは、最終的にビジュアルに使うイラストや背景などを、どのソフトで描いていくのかによって変わってくるからです。

画像のラフ案は最終的にフォトショップで仕上げたいというイメージがあったためラフもフォトショで手描き風に制作していきました。
先ほど、時間をかける傾向があると話しましたが、限られた時間の中でやり過ぎずにクライアントにラフの意図が伝わるような仕上げ方をするのがベストなのかと思います。
特にイラストを使ったものの場合、雑に作りすぎてしまいラフ案と完成したビジュアルが全くの別ものになってしまうこともあるので、そういう場合はピンタレス島で集めてきたイメージ画像も一緒に、「こんな感じにしていきます」ということを伝えていくと良いのかもしれません。

そして、タイトルロゴについてもラフ案のタイミングで考えていきます。
そこまでしっかりと作り込むことはないのですが、私はタイトルロゴを作字して使用する事が多いので、どんな雰囲気のロゴになるのかということをイメージしておくと、ビジュアル制作の時にスムーズにロゴ制作できるのです。

もちろんラフ案なので、クライアントによってはイメージが違うといった意見をいただき描き直すといったことも無きにしもあらずですが、
最終的な仕上がりイメージがクライアントや社内のプロジェクトメンバーに伝わるように意識して制作しています。

制作.3〜《ビジュアル作成》

さて、クライアントからもラフ案の中から選んでいただき、
いよいよビジュアル作成に入ります。
ここだけの話、私はビジュアル作成が案件内のデザインの中で、
間違いなく一番気合が入ってるところです…ここだけの話。
というのも、以前のnoteでも書かせてもらったのですが、唯一デザイナーが主体となって進めていけるからなのです。
そして、このビジュアルが少しでも参加動機の一部になってくれればと思いながら制作していくからなのです。あまり良くはないのですが個人的な感情もガッツリ入ってきてしまっています…笑

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それではまず、何から手をつけていくかなのですが…
これは本当にデザイナーによってバラバラではありますが、
私の場合は、制作するビジュアルの核となる部分から作る事が多いです。
イラストがメインとなるビジュアルの場合はイラストから、
タイトルロゴがメインとなるビジュアルならロゴデザインからというように、
ビジュアル制作がある程度進んだタイミングで、ビジュアルの全体的な雰囲気をすぐに確認したいという、私の心配性な部分がそうさせているのかもしれません。
ビジュアル制作では、どうしてもラフ案とズレてしまう部分が出てきます。
描き込んだイラストや着色で「ちょっと違う…」という部分をすぐに確認して、少しずつ方向を変えていくようにしていきます。

そして、7割ほどビジュアルが仕上がってきたタイミングで
ビジュアルを一晩寝かせます。
この一晩寝かせるというのはとても重要で、ビジュアル制作に集中してしまうと、どうしても客観的に見れなくなっている事が多くなってしまいます。
一日放置して次の日に見てみたりすると、また別の見え方ができたりする事もあり、改善点を見つけることできます。
他にもスマホに制作中の画像を入れて、出かけている時や運動した後などPC以外の別環境で観ることも良いかもしれません。

私の尊敬するイラストレーターの《Rockin'Jelly Bean》さんも、
制作中のイラストを何日間か寝かせ、数日後にみた時にイラストが可愛くなかったら描き直すと仰っていたのを聞いた時、自分もやっていこうと心に決めました…笑
しかし、優柔不断な私は、寝かせすぎて良いのか悪いのか、わからなくなってしまう事も多々あります…

そして、ある程度完成が見えたタイミングでクライアントへの初稿をお見せし、いただいたフィードバックを元にさらにブラッシュアップしていきます。
色々な試行錯誤の上、ビジュアルはいよいよ完成を迎えるのです。

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まとめ

ざっくりと簡単に、当たり前の事を書いただけですが、
メインビジュアルをこんな感じで、私は作っています。

謎解き系のインハウスデザイナーは、メインビジュアルのデザインがメインの仕事ではありません。
メインビジュアルを含めた、イベント全体のデザインを行なっていく事が仕事なのですが、私はどうしてメインビジュアル制作には愛着を持ってしまいます。

自分が作ったビジュアルがポスターとして街や駅に貼られてたりするのを観るとやっぱり素直に嬉しいなと思います。

一度、私のデザインしたイベントに運営として参加した時に
「メインビジュアルが良くて参加しました!」と言ってくれた参加者の方がいました。その時の嬉しさが脳みそに焼き付いているんですね…笑

謎解き系イベントのジャケ買い・パケ買いというのは、まだまだ少ないのかとは思いますが、これから増えていったら嬉しいと思います。

今までに制作したメインビジュアルなどを載せているホームページがありますので
ご興味のある方は、是非見てみてください。

https://www.ob1toy.com

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