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#1.謎解きデザイナーになったゴリラ

​初めまして、オビワン(ob1toy)と申します。
謎解きや宝探しのイベントを企画・制作する会社のインハウスデザイナーとして働き出して7年目を向かえました。謎解き系デザイナーになる前は
《芸術大学卒業》→《広告デザイン》→《おもちゃの企画デザイン》
→《食品パッケージデザイン》と転職し、今の謎解き系会社のインハウスデザイナーへ転職しました。
もちろん謎解きとは無縁で、正直な話をすると次のデザイン会社へ転職するための繋ぎとして入社したのです…

しかし、気づけば7年目…

謎解き系デザイナーの不思議な面白さに浸かってしまったのです。
今回は《謎解きデザイナーとは?》そして良い意味での《苦悩》などご紹介できればと思います。
※文章を書くことが苦手なので、気になる部分もあるかと思いますが暖かい目で見ていただければと思います。

1.謎解き系イベントとは?

最近では謎解きや脱出イベントなど、とても有名になってきました。
実際に参加された方もいるかと思いますが、まだまだ知らない方も沢山いるのではないかと思います。

謎解きには、
● 街や施設内を巡りながら行う《周遊タイプ》
● 一つの会場に参加者が集まり行う《公演型》
● お家でできる《お土産タイプ※違う言い方があるかも…
など様々なイベントがあり、最近ではオンラインで行うイベントなどもあります。

デザイナーとして関わる場合に必要なデザインは、
メインビジュアル・イベントに使用する謎解きキット・告知物・イベントで使用する設置物など本当に多種多様です。
そんな数多くあるアイテムを一人で(私の働いている会社では)デザインしていきます。

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その中で、制作量7割を占めているのが《謎解きキット》
これが…っね!なかなか…
…デザイナーは謎解きキットの内容が落としこまれるまではビクビク震えながら待つのです…

2.デザインの概念をブチ壊せ

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色々なデザイン関係の仕事をしてきた中で、会社によってデザインの教えというのは様々でした。しかし、どの会社も《見やすく》《美しく》など整えるデザインという基本的な教えは同じだったと思います。

しかし…

この謎解き系のデザインでは謎解きキットを作る際にこの概念は通用しません。
というよりも、この概念に囚われていると面白いイベントは成立しないのです。
どういうことか…
謎解き系イベントに参加された方ならわかるかとは思うのですが、
謎解きキットには様々な《ギミック/仕掛け》が隠されていることが多いのです。

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一枚の紙を、ちぎって、折って、折って、折って、…合わせると
「すごい!文字が出てきた!」
これを最後や中盤の盛り上がりの部分として持ってくることが多いのです。
この「アッ」と驚かせる仕掛けを謎解きキットのいたるところに散りばめていかなければなりません。

私)「よし!見やすく綺麗なデザインしていこう!」と心がけながらデザインをしても…

神)「この裁断ギリギリの所に文字入れて。そんで、この文字以外にダミーの文字も散りばめて」

私)「…なんかマージン的な…余白的な…グチャグチャだ…」

神)「これを折って折って折ったら、アイコンが繋がるようにして」

私)「…このアイコン入れるには、文章のど真ん中に入れないと成立しないぞ…」
※ここでの(神)とは謎クリエイター、私の会社ではディレクターと呼ばれています

そう、ここでデザイナーの概念をブチ壊さなければなりません。
今まで教わったレイアウトの組み方などは通用しないのです。
そして《ギミック/仕掛け》を成立させるための長い長いトンネルに入ります。
それはデザインというよりも、クラフトアート的なものに近いのかもしれません。
一つのイベントのデザインを一人で対応している場合、細かいデザインはこの《ギミック/仕掛け》を成立させてからになるのです…

また、限られたページ数の中に膨大な量の情報や謎、さらにはギミックを入れ込まないとならないため綺麗なレイアウト組を行うのは難しくなってきます。
どうしても、イベントに関わるユーザビリティーなどを考えると情報量が多くなってしまいがちなのです。

ですが、この部分にもデザインのメスを入れるのと入れないのでは、雲泥の差があり、限られた制作時間内にここまでメスを入れる事がデザイナーの勤めなのです。

3.絶対神、謎クリエイター降臨

謎解き系イベント会社の商品は、イベントになります。
そのイベントのスキームを作り、ストーリーを考え、謎を作る上に
参加者を感動させなければなりません。
そんなイベントの核を作り出しているのは謎クリエイター(ディレクター)は神に値するのです!
そして謎クリエイターとペアで案件を制作する私たちデザイナーは、神のお導き(イベントの内容)を待つ民です。
制作量7割を占める謎解きキットの制作を始めるには、謎クリエイターのイベント内容の落とし込みがないと進められないのです。

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民)「おお神よ!スケジュールが破綻しております!このままでは私達民は夜も寝れません」

神)「うむ、良い謎が思いつかん。しばし待たれよ…」

民)「ですが神よ!もう目の前に納期が迫っております!」

神)「慌てるでない、しかし納期は神の力を以ってしても動かすことは出来ん。」

民)「おお神よ!(涙)」

このように神の導きを待っている期間が長くなってしまうこともあります。
しかし、これも良いイベントを作り上げるためには仕方がないことであり
神がとんでもない謎を考えてきたときは、民も喜び燃えるのです。
もちろん、全ての神が破壊神ではなく、中にはスケジュールをしっかりと守る守護神もいます。守護神と仕事をするために民は争うのです…笑

また、デバッグと呼ばれるイベント内容にバグが無いかを検証する儀式が頻繁に行われます。時にはこのデバッグで別の神の怒りに触れ、イベント内容がひっくり返りゴッソリとデザインし直しという事態になることもあるのです。
完成目前のピラミッドが神の稲妻によって破壊されます…

民)「神がお怒りになられた!」
別の神)「こんなものは許されん!創りなおしだ!」
民)「おお…神よ…これではとても間に合わない、他の民の力を借りよう」

そしてみんなで協力しあって乗り越えて行くのです…笑
主催のイベントなんかでは、デバッグの儀式が終わった後からゴッソリ修正し、
次の日の朝にはイベントが開催!といったこともあったり…
今はほとんどなくなってきてはいますが。

それもこれも、
まずは商品(イベント内容)が良いものであることが大前提だからです。
そして、それを成立させるための最低限のデザインを行う事が、
謎解きデザイナーに求められるスキルだと思います。

4.スキル

私が謎解き系デザインを続けていて、謎に関わる知識や学んだことなどは沢山あります。
テトリスみたいな図形を見て一瞬で50音表と理解出来るようにもなりました。

ではデザインの面ではどうかと言いますと、
イラストを描く力が向上したように感じます。

もともと、イラストを描く事は好きでしたが、それをデザインとして使えるかと言うと難しかったと思います。

謎解き系イベントではメインビジュアルをはじめ謎解きキットなど、イラストを使ったデザインの作り込みが多くなってきます。
もちろんイラスト素材を使いデザインすることも出来ますが、メインビジュアルの雰囲気を謎解きキットまで落とし込むには、実際に自分で描いていく方が良かったりします。

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ではここで、よく描くアイコンランキングをご紹介します。

1位《木》
何本描いたか覚えてないくらい描いてます。
街巡りや、地域のイベントなんかでは謎に必ず一本は登場します。
MAPやビジュアルにも使う事があるので3桁くらいの数は描いてるんじゃないかと

2位《宝箱》
これは、私の会社の特徴でもあり宝探しのイベントを行う上で必要不可欠です。
多くはメインビジュアルやチラシなどのモチーフとして使われる事が多いです。
恐らく、目をつむっても描けるのではないかと思います。

3位《太陽》
太陽は謎によく出てくる事が多いです。
「日曜日」を表したり街にある「街灯」を太陽として表現する事があります。
また、ギミックのアイコンの合わせとして使用することもあります。

 入社初日は、筆ペンで和風のイラストをひたすら描いたのを覚えています…笑
一日中、イベントで必要なイラストを描き続ける日などもあり、自然とイラスト力は上がっていったのかもしれません。
また、描いたことのないようなタッチのイラストも描かなければならない場合もあるので、イラストのバリエーションは増えていくと思います。

5.謎解きデザイナーの魅力とは?

謎解き系会社のインハウスデザイナーの主な仕事は、ディレクターの考えた、
謎やギミックをデザインして整えていくことだとお話しさせていただきましたが、果たしてデザインしていて楽しいのか?魅力はあるのか?

実は、デザイナーが主となり進めていける部分があります。
それが、イベントのメインビジュアルです。

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メインビジュアルはイベントの顔であり、内容を知らない人達に、ビジュアルを見て参加したいと思ってもらわなければなりません。
楽しそうなイベントっぽさや、毎回新しい見せ方を出来るよう考えたりと、ビジュアル考案には、かなりの時間を費やしています。

また、メインビジュアルの作成は案件によっては自由度が高い事が多く、
ラフ案からタイトルロゴ、イラストの作成、レイアウト、配色など、
作ってみたかったデザインに挑戦できる機会が多く、自身のデザインスキル向上にも繋がってきます。
私の働いている会社では、全てを一人で任される事が多く、短いスケジュールの中で行わなければいけないというプレッシャーはありますが、
そこに魅力を感じているデザイナーは多く、私もその1人です。
謎クリエイターの考えたストーリーやイベント内容を聞き、
「こんなタッチでビジュアル作りたいな〜」などの想像を膨らませるのは
映画のビジュアルや絵本の表紙を考えるのに近いのかもしれません。

そして、デザインする数も多いので、自然と自分の作ったものが色んな方に見ていただける機会が多くなってきます。鉄道での駅貼りポスターや中吊り広告として扱っていただけると、デザイナーとしてはとても嬉しいのです。

6.まとめ

簡単な紹介ではあったのですが、
謎解き系イベントのデザインのみを行うデザイナーがいるという事を知っていただけましたでしょうか?

謎解き系会社のインハウスデザイナーだと、自分が携わったイベントの現場に足を運ぶ事も多く、参加している方の反応を見る機会があります。
その時に、楽しそうにしている姿を見て初めて自分がデザインしたものに価値があるんだと感じます。
まだまだ、自分の作ったメインビジュアルを見て「参加したい」と思ってもらえる機会は少ないです。ですがいずれは《イベントのジャケ買い》をしてもらえるようなデザインを制作できるように、日々努力です。

謎解きイベントのデザイナーは、まだまだ少ないのかと思います。これから少しずつ増えていったら嬉しく思います。

拙い文章で、大変失礼いたしました。
最後までご清覧いただきありがとうございました。

私のポートフォリオサイトになります
ご興味のある方はぜひご覧ください。

https://www.ob1toy.com

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