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第1章 ヴィッキーさんの誕生とトラウマ

1 七番目の子供の七番目の子

ヴィッキーさんの物語はこんなふうに始まります。

私はロンドンに生まれました。
七番目の子供の、そのまた七番目の子としてです。
父もその両親も、ハシディズムの人でした。

ハシディズムというのは、聖書の神秘的な側面を含む深い宗教の一派で、父はカバラとゾハール(モーセの五書のヘブライの神秘主義的注釈書)のマスターであり、そんな背景のせいで、植物の癒しの作用や、薬効に関する知識、そして自然の癒しの方法に詳しかったのです。

その知識は私に受け継がれましたが、そんな父との幸せな時間は、継母の執念深いいじめにあって長続きせず、とうとう十六歳で私は家を出ました。

私は子供の頃から繰り返し、不思議な体験をしていました。
そうした経験の中には、自分が何をしたわけでもないのに人の病気が治ってしまうとか、人のオーラが見えるといったことがあり、幼い私は理解できないだけに、ときには恐くなったものでした。

 『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p6-7)

オーラソーマの創始者ヴィッキー・ウォール女史がロンドンに生まれたのは1918年8月20日のことでした。

ここで【七番目の子供の、そのまた七番目の子】という表現があります。

「七番目の子供の七番目の子」には特別な能力が備わっているというのは西洋世界にはかなり広く広がっている考えのようで、そういう観念の源をたどるなら、おそらく『旧約聖書』のつぎの記述に至るのではないかと思われます。

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 ハシディズムの集会
 『ウィキペディア日本語版』https://goo.gl/EfcrwA

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【あなたは六年のあいだ、地に種をまき、その産物を取り入れることができる。
 しかし、七年目には、これを休ませて、耕さずに置かなければならない。
 そうすれば、あなたの民の貧しい者がこれを食べ、その残りは野の獣が食べることができる。
 あなたのぶどう畑も、オリブ畑も同様にしなければならない。
 あなたは六日のあいだ、仕事をし、七日目には休まなければならない。
 これはあなたの牛および、ろばが休みを得、またあなたのはしための子および寄留の他国人を休ませるためである。】

  『口語旧約聖書』(出エジプト記23:10-12)


【あなたは安息の年を七たび、すなわち、七年を七回数えなければならない。
 安息の年七たびの年数は四十九年である。
 七月の十日にあなたはラッパの音を響き渡らせなければならない。
 すなわち、贖罪の日にあなたがたは全国にラッパを響き渡らせなければならない。
 その五十年目を聖別して、国中のすべての住民に自由をふれ示さなければならない。
 この年はあなたがたにはヨベルの年であって、あなたがたは、おのおのその所有の地に帰り、おのおのその家族に帰らなければならない。】

  『口語旧約聖書』(レビ記25:8-10)

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 “エジプト第七の災い”、ジョン・マーティン
 『ウィキペディア日本語版』https://goo.gl/XZ3LQB



実際、7番目の息子の7番目の息子の話は中世からヴィクトリア朝の時代、特に下層階級の物語のなかで、ヨーロッパ民俗学にたくさんある話だそうです。

ただ、7という数字はユダヤ-キリスト教圏以外の神話ではほとんど重要性を持たないようで、キリスト教以前のヨーロッパ人にとっては3のほうが重要だったみたいです。

三位一体という意味では、キリスト教徒にとっても3はとても重要な数字ですが、7という数を重視するのはユダヤ教に由来すると考えていいのかもしれません。

オランダの民話などでも、7人目の子供の7人目の子供は人を癒すことができる、と考えられていたそうで、ほかにも、彼らは死人と話すことができるとか、猟場を知っていなければならない、といった言い伝えもあったようです。

またアルゼンチンでは、7番目の子供の7番目の子供は、男性なら狼男になり、女性なら悪い魔女になるというのはなかば常識的な信念なのだとか。

それほど広く伝わっている民間伝承だとすれば、古来7番目の子供の7番目の子供にはある種の特殊能力がある、といった何らかの事実があったと考えるのが妥当かもしれませんね。

いろいろ調べてみると、自分は7番目の息子の七男だと言う方がいて、その方が言うには、十代のときには何度も予感を体験して、まわりの人たちに気味悪がられたそうですが、理由はわからないまま、20代後半になってその能力は消滅したそうです。

当人は、たぶん自分がその能力を伸ばそうとしなかったからで、心配することで急速にその能力を失ったと思う、と言っていました。

7番目の子供の7番目の子供については、なかにはかなり風変わりな情報もありますが、あまり話題がそれてしまってもいけないので、ここまでにしておきましょう。

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