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第3章 ヴィッキーさんの秘密の能力

10 お父さんの最初の手ほどき

ヴィッキーさんとお父さんの関係には、単にヴィッキーさんの思い入れだけではなく、何か特別なものがあるように感じられます。

おそらく、土曜日の遠征にヴィッキーさんを同行し、特にヴィクトリア・パークで自然に接したときの娘の反応に、お父さんは上の子供たちで経験したのとは違った感触を持ったのではないでしょうか。

父は、動物と植物の世界に完全になじんでいました。
二人で歩いているとき、あちこちに豊富に生えている野草を指差しながら、私に聞いたものです。
「いったい、どれが、パパのかわいそうな手を治してくれると思う?」

もちろん、かわいそうな手などありはしないのですが、私はどの草が愛しい父の役に立ってくれるだろうかと、あちこちのハーブや花の周りを、夢中で歩いて回ったものでした。
そんなふうにして彼は、私の内にすでにあった本能が花開く助けをしてくれたのです。
父がさまざまなハーブや花について説明してくれるたび、私の胸は躍りました。
その言葉の一つ一つには、植物への愛があり、彼はそれぞれの植物の癒しの効用を、その植物との実際の交わりの中から見出していました。
たとえ一本の草でさえも、むやみに摘むのは許されませんでした。

 『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p17-18)

こうしたお父さんのヴィッキーさんに対する接し方を知ると、他の6人の子供たち全員と、これほど濃密な時間を共有しただろうかとさえ感じてしまいます。

自分が伝える自然との接し方や、教える植物の知識を、まるで砂が水を吸い込むように吸収していく娘に、驚きと同時に将来に対するある種の期待を感じなかったはずはないと思われます。

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その上で、ヴィッキーさんが小学校に入学する頃、お父さんはヴィッキーさんにオーラを見る能力があることを知ります。

それまでは、ヴィッキーさん本人にはあたり前のその能力については、誰にも言ったことがなく、お父さんも知らなかったのです。

ヴィッキーさんのその自分と共通する特殊能力のを知ってからは、お父さんはこの7番目の末っ子に対して、何か特別な感じを持っていたのかもしれません。

とはいえ、ヴィッキーさんは娘ですから、ユダヤ教の戒律のもとにあるお父さんは、彼女に自分のカバラのマスターとしての知識を授けたり、地位を継がせることはできないことを知っています。

でも、その他の知識、薬草学などの知見は可能なかぎり娘に伝えたいと願ったのではないでしょうか。

もしかしたら、後に継母のいじめに耐えかねて娘が家出したときは、このお父さんがいちばん落胆していたかもしれませんね。

ちょっと先走りがすぎたようです。

それはともかく、このときお父さんは、まだおとぎ話の時間帯から離脱していない娘にとどく言葉で、自分が信じる神の世界のあり方を、まるごと娘に伝えたいと願っていたのではないでしょうか。

何かそんな雰囲気さえ感じられてくるようです。

「必要があるとき以外は」
父は言ったものです。
「命を粗末にしてはいけない」
これは、私にとっては、まったくリアルなことでした。
あるとき、ブルーベルの茂みが無残に引き抜かれ、みずみずしさを失い、まるで戦場で無益に死んでいった人々のように折り重なって倒れ、道端に投げ捨てられている姿を目にしたときの悲しさといったら。
本当に、胸をかきむしられるような思いがしたものです。

こうした父との関わりこそ、私の幼い、満たされないハートの求めてやまぬものでした。
目に見えるもの、あるいは目に見えない生命力を、私はすべて父を通して学んだのです。
私たちはまるで、子供心に疑いもなく受け入れていた内なる知識の中で、一つに結ばれているかのようでした。
そしてまた、私の父は、そのまた父に結びつき、そしてその父はまたその父に、といった具合に。
そんなふうに、永遠へと長い長い鎖が伸びているのが感じられるのです。

幼い私にはよく理解できない、奇妙な出来事がそれから幾度となく起こりました。
そのパターンは私の生涯を通じて続き、やがてその果てに、理解と認識とが開けていったのです。

 『オーラソーマ 奇跡のカラーヒーリング』(p17-18)

「目に見えるもの、あるいは目に見えない生命力を、私はすべて父を通して学んだのです」……。ヴィッキーさんはこのように断言します。

若くして生別した父親に対する思い入れとはいえ、ヴィッキーさんのお父さんへの思いは本当に特別なものだったようですね。

お父さんの思い出こそが、その後の人生を生きていく力を彼女に与え続けた最大の宝物だったのでしょう。

ヴィッキーさんの叙述から浮かび上がってくるお父さんの姿からは、確かにそれだけの彼女の思い入れにふさわしい愛と知識を与えたことが感じられます。

まるでその後のヴィッキーさんの人生の成り行きを予感してでもいて、それを補うためでもあるかのような濃密な時間が共有されていたのです。

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