ふくろう7

白内障手術体験記 (後編)

さて「白内障手術体験記(前編)」では、視力低下の原因が白内障であることを知り、手術を決めたところまで書きました。

眼内レンズは単焦点か多焦点か

手術日が決まると、眼内レンズの種類を選びます。ヒトの水晶体は遠くも近くも自動的にピントがあいますが、人工眼内レンズはそうもいきません。ピントの合う部分が1つの「単焦点眼内レンズ」と、複数(一般的には2つ)の距離にピントがあう「多焦点眼内レンズ」があります。

白内障の広告で「メガネなしの生活」とあるのは、多焦点レンズの場合です。メガネを使う機会が少なくなるのは事実ですが、保険適用外のため非常に高額となります。また見え方にはメリット、デメリットがありますので、医者からよく説明を聞いて決めて下さい。メガネにそれほど抵抗がなければ9割以上のひとが選んでいる単焦点で十分ですし、私も単焦点にしました。

単焦点は「近くに焦点」か「遠くに焦点」かを選びます。裸眼で読書や料理をしたいなら近焦点を、裸眼でスポーツやクルマの運転をしたいなら遠焦点を選ぶことになりますが、いずれにしてもメガネは必要です。

焦点距離は指定可能で、私はパソコンに向かっている時間が長いので 40cm を選択しました。遠くが見づらい「弱い近視状態」と考えればよいと思います。ちなみに眼内レンズは乱視にも対応します。私は右眼が強い乱視だったので、右は乱視も調整したレンズ(トーリックレンズ)になりました。

手術までの検査と準備など

病院によって異なると思いますが、手術日(土)の前後1週間に、事前2回(月・金)、事後4回(日・月・火・金)の診察日が指定されました。両眼であれば3週間は通院が必要です。毎回、瞳孔拡大の目薬を差すので、2、3時間はぼやけたり眩しく見えたりする状態が続きます。診察が午前中の場合は、午後の仕事への配慮が必要かもしれません。

また1週間前から主に抗菌を目的に何種類かの目薬を1日3~5回ほど差して備えます。それ以外は、日常生活に影響はありません。

いよいよ1回目の手術(左眼)

3月3日(土曜)朝9時にまず左眼の手術を行いました。手術室に入って横たわるとさすがに緊張しますが、執刀そのものは15分くらい。麻酔は眼だけなので、水晶体に切込みを入れ、超音波で砕いて吸出し、そのあとに人工眼内レンズを入れるというプロセスがわかっていれば、だいたいいま何をやっているかはわかります。眩しさはありますが痛みはほとんどありません。確かにこれなら 60代、70代でも大丈夫だろうなと思いました。

病院滞在は2時間ほどで、念のため家族に付き添ってもらいましたが、病院を出て駅前のスタバでランチして帰れたくらいです。ただ手術した左眼には翌日まで眼帯をするのでメガネはかけられません。気分は悪くないのですが右眼の視力も悪いため、当日はかなり不自由で帰宅後は安静にしておりました。

効果がリアルにわかる貴重な1週間

翌日の日曜朝、病院へ行き眼帯を取ってもらいました。視力が回復したことはもちろんですが、色彩が劇的に鮮やかになったことに心底驚きました。こんなにも空が青かったなんて。いままで見ていた世界がいかにくすんでいたかを思い知ったわけですが、手術前にはわからなかったんですよね。

左眼は術後、右眼は術前で比較ができますので、手術前後の裸眼でのイメージを作成してみました。決して大げさでなくこれくらい違うんです。(この体験記のサムネイルは手術を受けた病院のロビーにあるフクロウを撮った写真ですが、前編と後編の違いにもご注目下さいね)

ただ、右眼はまだ従来のままなので、左右差の大きい1週間はなかなか辛いものがありました。これまでの眼鏡も役に立たないので、特にパソコン仕事がほとんどできません。術後の検査をこなしつつ、アイパッチの片目作業でしのぎつつ、不自由さに耐えます。

手術後に最も大切なのは感染症防止とのことで、目薬の点眼は術前以上に細かく時間指定で行われます。また1週間は洗顔禁止でしたが、スイミング用のゴーグルで目を保護すれば洗髪もできるのは助かりました。

2回目の手術(右眼)も無事終了

3月10日(土曜)に右眼の手術でしたが、1回目と同じなのでほとんど心配はありません。むしろワクワク気分です。付き添い者用の控室では手術の様子がモニターに映し出され、リモコンでズームすれば術中も瞳を画面いっぱいまで拡大して実況を見られます。腕に自信あってのことだと思いますので、このあたりもこの病院を選んだ理由のひとつでした。

手術は無事終了し、翌日眼帯を取ってもらうと、両眼で鮮やかな世界を見られるようになりました。人生でも数少ない感動の瞬間でした。

生活はどのように変わったか

40cm ピントの単焦点レンズなので遠景はぼやけますが、左右とも -1.25D(軽い近視)程度で、裸眼でも日常生活はあまり困りません。前編冒頭に書いたように、左 -8.50D、右 -4.75D でも矯正できなかったのですから、裸眼の生活は夢のようです。術後は本当に気持ちが明るくなりました。

きちんとした近視用のメガネを作るのは、視力が安定する1、2か月先がいいとのことで、つなぎの眼鏡を Zoff で安く調達、せっかくなので憧れだった極細テンプルと下縁無しリムにしました(笑

そのメガネを使うのはクルマの運転、映画の字幕、会議でスクリーンを見るときくらいですが、メガネがないと顔が締まらないので、これまた憧れだったPCメガネ(Jins Screen)を調達、ブルーライトだけでなく紫外線もカットするので、眼のケアのためにも常用しています。

なお 40cm 焦点なので、寝る前など 30cm くらいに本を近づけて読むような場合は逆に遠視状態になり、少しぼやけます。これは出来合いの老眼鏡、いちばん度数の低い +1.0あたりでくっきりと読むことができます。

満月のウサギが見える喜び

3月末の満月の夜、フェイスブックへこんな投稿をしました。

2018.03.31
ものすごく久しぶりに夜、クルマを運転した。この1,2年はメガネをかけても十分に矯正できず夜の運転は自粛していたのだ。とにかく視力の心配がなくなって嬉しい。見上げた満月にウサギをみたのもいったい何年ぶりだろう。

そうなんです。手術するまでは月や星座を見る楽しみも諦めていたのでした。

今回の手術にあたっては、家族、同僚、友人にも心配や迷惑をかけましたが、理解と協力を得られて心から感謝してます。ともあれ「案ずるより産むが易し」であったことは間違いありません。ちょっと視力が気になるようでしたらぜひ早めに眼科で検査してもらって下さい。

費用および参考情報

手術代は片眼で約 43,000円(保険適用3割負担)でした。通院については、精密検査のある時は約 5,000円、通常診察は 1,000円前後、これに処方箋による目薬代などを入れると、直接費用は約 13万円くらいです。これにメガネの作り直しや新調に伴う費用がかかることになります。

最後に参考になったサイトをいくつか紹介しておきます。


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