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Project Young. Next Act.『三十路の浪漫飛行』制作報告日誌④第三の目

※サムネ画像は修正前の作品のカットで、実際に公開したものではありません。

◆3DCGソフト作画以外に使った作画方法「ロトスコープ」
前回の記事で書いたように、自分のフリーハンドだけでは書けないような動きは3DCGソフト「Blender」で下絵を作ってから、その上にキャラクターの自分の絵を重ねていく方法をとりました。
※ここでの「フリーハンド」というのは「トレース(なぞり書き)するような下絵無しで」という意味で使っています。

ただ、Blenderも使い始めたばかりなので、なんでもかんでもCGで作れるわけではない。そういうところは、「ロトスコープ」という、描きたい対象物の動きをカメラで撮影し、それをBlenderと同じように動画を一枚一枚分割して書き出す。それを下絵にしてトレースする手法を用いました。


逆に、上記のやり方では描けないところも。
カラスが飛んでくるところは、自分の動いてほしい通りにカラスを動かして撮影して‥‥というロトスコープ的作画もできませんし、CGで作るのも、その技術が私にはなかったので、とにかくカラスの動きをYoutube等の動画で観察して描きました。
カラス(鳥全般?)って飛び立つ直前にあんなに姿勢が低くなるんですね。カラスの生態について無駄に詳しくなる秋。
シンプルに好きだからと購入して戸棚にしまっておいたアルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥』(映画DVD)もかなり役に立ちました。ありがとうヒッチコック。

こうしていろんなツールや方法を駆使しながら、10月の下旬に大枠が完成。さっそく、友人や先輩に観ていただき、以下のような意見をいただきました。

・なんでゴミの山が突然出てくるの?
・カラスが巨大少年誌に集まってくるところが星に見える
・白黒のフラッシュは何ですか?(=そもそもカラスが襲ってきてることすらわからない)
・最後のタイトルは読めた
・カラスがビルに降り立つビルの看板文字が多すぎ&小さすぎて読めない

などなど。

スクリーンショット (7354)

↑修正前のカラス襲来場面。とにかくぎっしり文字を書いたものの、このカットの時間が短すぎて、どこを見たらよいかわからない……。

「初期のコンテからだいぶわかりやすくなった!」と言ってくださる方もいてホッとする反面、全体的にわからない…という意見をくださる方もいて、まだまだ改善すべきことがこんなにあるんだ…とここにきて今一度気が引き締まる思いでした。

特に「白黒のフラッシュは何?」とか、「巨大少年誌にカラスが集まってくるときのカラスがカラスに見えない」というのは意表を突かれたコメントで。

↑修正前のカラス登場シーン。お手本になるような「カラスが大量に飛んでいる動画」が意外に少なく、動きを想像だけで書いたらコウモリみたいになってしまった。


作っている本人は何回も映像を再生してみているし、構想が頭に入っているので理解できる・違和感を感じないところも、設定も何も知らない人が初見で見ると全然伝わらなかったり引っかかりを感じたりする。
やはり「第三者の目」はとてもありがたく大事なものだなと思いました。

こういう制作物チェック用に自分の意思とは別の回路をもつ「第三の目」が自分にあったらいいのに…とか中二病みたいなことを思ってしまいました。

また、演劇とアニメーション(映像)の創作の違いの面白さも感じました。
演劇はその舞台上に四角い箱だけしかなくても、その箱に役者さんが座って、ハンドルを持つ動きをすれば誰でも「ああ、ここは車の中なのだ」とわかる、といったようにお客さんの想像力を利用して作られていますが、アニメーション(映像)は基本的に、そのカット内に必要な情報(建物、小道具、人物など)をすべてを描かなければならない。なので風に揺れる細かい草の動きひとつでも、そこにどんな意図があるのかと読み取ろうとする人もいる。ひとつのカットに対して隅から隅まですごく繊細にならなければいけないんだなあと思いました。

こうしていろんな人から貴重な意見・感想をもらった私は、10月の終わりから11月中旬まで、第三者に観てもらって伝わらなかったところを重点的に修正しながら、自分でも気になったところを直していく作業を行いました。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は作品完成へのラストスパート・公開前のバッタバタから公開までについてお話させていただきます。

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