深夜徘徊

運転好きな友人の影響で、ドライブを楽しむようになった。
幼少期、母が頻繁に車で山に連れて行ってくれたから、必然といえばそうかもしれない。

車には乗せれるだけの人を乗せたい。割勘すると1人あたりの値段が安くなるから、というのは建前で、本当はこちらがお金を払ってでも乗ってほしいと思っている。

私は会話が至極苦手だ。思考を言葉にしてペン先や指先に宿すのは簡単だけど、喉を通ろうとした瞬間に雑念が入るようで、描いた通りに話せない。しかし人の会話を聞くのは好きだ。言葉にはその人のバックグラウンドや、文字にはのせない本心が見える。自分が介入しない会話は心底気持ちいい。運転手役を務めると、ハンドル、アクセル、ブレーキ操作への集中を言い訳に殆ど話さなくても不自然ではない。いうなればラジオ感覚で同乗者の話に耳を傾けることができる。こんな娯楽はそうそう無い。

時間帯も大切だ。日中でも早朝でもなく夜である。みんな、夜は心がいつもより開かれるようで、普段とは違う様子で話してくれる。非日常感がそうさせてくれるのかもしれない。新たな一面を知ると不思議な優越感に浸れる。勝手に親密になった感覚になれる。相手方がどう感じているかは知る由もないが、等価交換と内心思いながら、こちらも過去の話をしたりする。何故か泥酔時と睡眠不足時の言動はまるで同様なので、かなり迷惑をかけているかもしれない。運転で赦されてほしい。

行先はなくてもいいが、あるとより楽しい。専ら海や山だ。街中を離れて自然に触れるのは単純に健康に良い。夜なら天候は関係ないから日中よりもずっと気楽だ。雨さえ降ってなければいい。いや、雨が降っていても、車体で水滴が跳ねる音が面白いからそれはそれでいい。

アルコールを介在せず人の存在を近くに感じられる遊び方を知れて、よかったと本当に思う。この時勢だから尚更。スピードは全てを解決してくれる。これから増していく暑さは、夜の魅力を引き出してくれるだろう。行先の開拓もまだまだやっていきたいなと思う。

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