最強だったわたし
誰の力も借りず、頼まれたことを完璧に片付け、周囲からの信頼を積み上げる。困難が立ちはだかったときでも、すぐに最善の方法を導き出す。己の才覚で、他人の手なんて借りなくても、なんでも一人でこなしてしまう。
そんなかっこいい人間に、なろうとしていた。なる必要があった。だから、人一倍頼まれごとを引き受けた。身を削って、いろんなことを成し遂げた。その結果、たくさんの人に褒めてもらったし、それなりの地位を確立できた。
私は、今まで生きてきた中で1番強かった。
あれから2年は経とうとしている。ときどき、クラスメイトだった友達と会う。近況報告はもちろんするけど、やっぱり思い出話に花が咲く。
「あのときの言い方はないわぁ」
「なんで直前であんなこと言ったん?」
「しょーみどうかと思ってた、あれは」
決まって出てくるのは、私が今までしてきた無茶ぶりの話だ。
強かった、はずだったのになぁ。
実際、一人で全てをやり通せたわけではなかった。メンタルはその都度簡単に崩れた。結果いろんな人の力を借りた。でも、そのことを認めたくなかった。「私は一人でやれる」「やらなきゃいけない」ひどい強迫観念に襲われていた。自分の首を自分で絞め続けた、自業自得な苦しさの中に生きていた。
でも、当時は自分が一番だと信じて疑わなかった。何をやらせても迅速に、丁寧に、それなりのクオリティで仕上げることができると思っていた。
ある程度月日が経った今だから思う。気持ちだけが突っ走るような人には、信頼も名誉もついてまわらないのだと。ちっぽけな過去の栄光に縋りつく人間ほどつまらないものはないと。
「あんたは思ってるほど強ない、しょーもない人間や」
高校生の自分と会えたら、一言伝えて殴ってやろうと思う。
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