緑の風

五月のはじめ。

冬が終わり、待ち望んでいた春にも慣れて、夏の始まりをほんの少しだけ孕んだ風を感じ取るとき。まるで新緑のようにも思えるその風は、日差しがつらくなりはじめた昼下がりの街を、宵の街でさえも包み込む。

ゴールデンウィークといえば地元の神社のお祭りが思い浮かぶ。和菓子屋でバイトしている私にとっては、連勤の息抜きにぴったりだ。小高い場所にあるその神社は、暮れゆく街の様子が少し見える。夜が追いかけてくるような空模様、そこそこ規則正しく並べられた自転車、焼きそばの匂い、祭り特有の喧騒に、溶けていなくなってしまうような感覚に陥る。

時期ならではの、病と称されてしまう憂鬱も洗い流してくれる。日常のなかに紛れ込む非日常を、大切に持って歩きたい気持ちになる、この頃。

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