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「ルックバック」、いい意味でめちゃ後味悪い映画だった。

藤本タツキ原作の映画「ルックバック」、
いい意味でめちゃ後味悪い映画だった。

振り返る、という意味だけでなく
背中を見ろ、という意味も
背中に受けた凶器も
とても印象的に映画化されていた

作画とアニメーションが美しくて
初期入場者特典に原作が付いてくる
クリエイターは全員みて
それぞれの感想を持って欲しい

原作
藤本タツキ「ルックバック」
(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン
押山清高
美術監督 さめしまきよし
美術監督補佐 針﨑義士・大森崇
色彩設計 楠本麻耶
撮影監督 出水田和人
編集 廣瀬清志
音響監督 木村絵理子
音楽 haruka nakamura
主題歌 「Light song」by haruka nakamura うた : urara
アニメーション制作 スタジオドリアン

スタジオドリアンのWORKSがめちゃいいからみて

【イベントレポート】「ルックバック」アニメーター井上俊之が語る、“アニメ史に残る”制作スタイルの裏側

https://natalie.mu/comic/news/581115

https://x.com/comic_natalie/status/1809243968611422225

スキップして帰る、それだけのシーンを
最後の1週間で1000枚描いている…。



迂闊な気持ちでみたら、殴られる。

あえて、カジュアルな気持ちで観に行ってしまった。
気持ちとして殴られてしまった。
後悔している。

筋書きは知っていたのに。
「漫画なんてね、みているだけの方がいいよ、描いちゃダメ。」
スキップのシーンも、タブレットで描かれる線画も、
線画の力、アニメーションの力、レイアウト、色、声優の仕事、山形弁。
どれもが非常にシンプルで、それでいてものすごく力強く、藤本タツキの世界、京本・藤野の世界を自然に描いていく。

先月の「トラペジウム」も少女たちの成長譚と葛藤を描くという意味では近い。アイドルの実体験をベースに作られた劇場アニメーション作品としてはとてもリッチでモダンな作り。一方で、「ルックバック」は非常に地味な絵なるはずの漫画に打ち込む少女たち。でもフィクションなのに途中から「実話なのでは」と感じるようなリアリズムがたくさんたくさん埋め込まれている。そういう「個」としての漫画家・藤本タツキが描かれていく。

「いい意味での後味の悪さ」は京本のキャラクターデザインによるところが多いと思う。
・下瞼のクマ
・人一倍努力家なのに、他者に対しては謎のハッタリをしがち
・そういう「言葉通りにとらえてはいけないセリフ」を言う時の視線、声の演技
・電話口での声
・空手救急車のシーンでの声
こういった細かなキャラクターデザインと演出、監督としての丁寧さが、京本というキャラクターに「絵を描くこと以外に、社会との接点を持っている才能」を見事に描いている。この演出が作品を藤本タツキという「天才」個人の英雄譚から、「絵を描いて作品を作る人」すべてにリスペクトを持って作品になっていると感じた。

具体的におすすめしたい視聴者像として、「小学校でいちばん絵が上手い」「同人誌の制作に夢中になる女子中学生やそのご家族」といった方々がある。将来の進路や、性別や、「チェンソーマン」のホラーアクションエンタテインメントが作り出すステレオタイプをいったん忘れて、無垢に「小学校でいちばん絵が上手い」そんな才能に届いてほしい。

描いて描いて描いて、描いて描け、とにかく描け、バカ。
そんな殴られ方をして、手が動き続ける人にしか辿り着けない世界はある。
後味がとても悪くなるので、映画を観た後は走って家に帰って、
描いて描いて描いて描きまくる予定にしておくといいと思う。

早く観に行ったほうがいい

作品や映画の味わいを全面的にネタバレするような解説もあるのでリンクは紹介しておく、観にいく前に読むのはおすすめしない。

▶︎『ルックバック』が与える“衝撃”の核に迫る 藤本タツキという傑出した“個人”の等身大の姿(リアルサウンド)

早期入場者特典の原作漫画もよかった。表紙の装丁が全くないのが集英社らしい。

漫画描いてる時に、こういう顔になるよね(顔を描いている)。


ネットで見かけた感想

天才少女・ハヤカワ五味さん

神保町の描写はよい。
編集者さんがいい人そうで良かったが、
京本はきっと怖くてしょうがなかったと思う。
藤野・京本の人生の分かれ目は、まさに神保町の描写が象徴的であるし、美しい雪解けシーズンが中心に描かれる山形の風景とも対比的。


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