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Roland V-8HDは一体何だったのか

諸事情により、現在予定が組まれている配信が終わり次第、愛機であるV-8HDを手放すことにしました。その本音は一番最後に書いています。

で、今何をしているかというと、ATEM Miniを使えるようにしています。といっても、今年の2月にはATEMでやっていたので、あのとき勉強したことを思い出しているんですけど・・・ATEMであればYouTubeに教材はいくつもあがっている。

【まとめ】V-8HDでハイブリッドセミナーをやるには

ハイブリッドセミナーができる配線図は、V-8HDをメインスイッチャーとして、キャプチャーボード兼テロップ合成用にATEM Miniを使った最終的にはこのような配線図に行き着きました。

自宅の配線図ですが、機材はすべて持ち運び可能ですし、自分が実現したいハイブリッドセミナーを実現可能です。参加者・演者ともにオンラインでもオフラインでもいい。

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ハイブリッドセミナーでは、オンラインでしゃべる人(Zoom演者or質問者)の画像や音声をオフラインの現地参加者がどう聞くかが最後の悩みのタネだった。会場にはどうしてもスピーカーが必要になり、何を使うかが問題になったが結局はプロジェクターのスピーカーを使うこととした(そのために、10W×4のスピーカーを備えた少しいいプロジェクターを使用している)。

スピーカーからは、Zoomの音声が流れるため、それが再び会場マイクで拾われてハウリングが発生する恐れがあったが、その問題は結局はZoomに備わっている強力なマイナスワンの機能(自動でスピーカーからの音声を消去したものが配信される)が備わっているので、Zoomを使う限りはハウリングは問題ないことが判明した。

ハイブリッドセミナーでは、リアル会場のスクリーン投影映像(スライドショーのみ)と、オンラインで配信される映像(PinPなど何かしらの合成された映像)を用意するため、V-8HDはHDMI出力が2系統自由に設定できるため、ハイブリッドセミナーには非常に適しているビデオスイッチャーと言える。

ATEM Miniを使ったハイブリッドセミナーの構成

ATEM Miniを使う場合、実は配信に使う映像はUSB-Cで出力するとしてもう一つHDMI出力を備えている。基本的には双方Program outだが、設定でPreview outにも設定ができるので、加工前後という制限はつくが異なる画像出力を出すことも可能。

それに、ここ最近、配信映像にPinPは不要なのではないだろうかという考えもある。PinPで小さく演者カメラを写したとして、効果はたかが知れている。スライドの内容によっては演者画像が不要なこともある。その場合、リアル会場のスクリーンに映し出す映像と配信映像は同じものでいいため、オペレーションは一気に楽になる。その前提で、ATEMで配信系を組んでみた。

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これまで散々苦労して試行錯誤し、高価なスイッチャーまで自費で購入しておきながら、まさかのATEMで組めてしまうという現実を受け入れるのには少し時間が必要だった(厳密には、気持ちの整理はまだついていない)。

数多くの制限はつくが、リアル会場とオンライン配信の画像が同じもので良い場合はこの構成図でもハイブリッドセミナーは可能である。

PCのHDMI出力をATEMにつないでいるので、Zoomをデュアルディスプレイにしピン当てをすることでリアル会場にもZoom演者の顔を写すこともできる。

簡易化された分、弱点も多くあり僕の本心としてはこの構成はおすすめしません。その理由を順にあげていきます。

制限1)音の微調整ができない

これは、会場のスピーカーをプロジェクターからではなく別にスピーカーフォンに設定している理由でもあるが、音の微調整ができないこと。マイクは、ATEM本体に3.5mmジャックで直接接続される。本体では音量のUP/DOWNのみ調整できるがオーディオメーターはついてない。ハイブリッドセミナーで、会場マイクの音の調整はしばしば問題となる。マイクの性能だけでなく、演者のマイクの取り扱い方だけでもイコライザーで高域や低域のcutをする必要が出てくる。そのために、オーディオミキサーを使用していた(例:Notepad-8FX)のだが、そういった調整はできない。どうしても調整が必要なときはATEM software controlを使う必要がある。

制限2)マルチビューでの確認ができない

実際にセミナーのオペレーションをしていると、マルチビュー画面が重要であることを思い知らされる。そのため、せっかくV-8HDにはマルチビュー画面が備わっているもののそれとは別にサブディスプレイで少し大きな画面でマルチビューをモニタリングしていた。

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「画面の確認なんている?HDMIケーブルつないでるから大丈夫じゃん」と思うかも知れませんが、実際セミナーをやっていると映像が来ていないことが多々あります。特に、演者ごとに講演PCが変わる場合は予め映像が来ていることの確認が必要になる。マルチビューモニタリングをしていないと、そういうトラブルに気づけず対処が遅れてしまいます。

なお、ATEM Mini Pro以上のモデルにはマルチビュー出力の機能があるのでサブディスプレイで確認は可能。

制限3)ATEM software controlがほぼ必須

画面の切り替え(スイッチング)程度であれば、ATEM本体のみで事足りるのですが、PinPやテロップ合成などする場合はATEM software controlが必須となります。このATEM software controlを使ったオペレーションが、ワンオペ配信ではかなり難易度は上がります。

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ATEM software controlはこのように機能を使うためにはデスクトップのかなりの領域を専有してしまう。ワンオペ配信の場合は、このPCはZoom配信に使っているホスト端末ですよね。片方に集中したらもう片方がおろそかになる。当然、ミラーリングでスクリーンを映し出すこともできなくなる。

制限4)アドリブに弱い

ATEM software controlは、実に多くのことができる。むしろATEM Miniのハードウェア本体のボタンいらねぇんじゃね!?ってくらい。反面、ハードウェアでできることはとても限られているため、どうしてもsoftware頼りになってしまう。

セミナーをオペレーションしていると、「もっとこうした方が良くない?」「このカメラを出したい」と思うことがよくある。その場合は、アドリブで映像を調整するのだが、そのアドリブにATEM software controlは弱い。マルチビューを備えていないので、実際の配信画像を確認しながらの調整になる。

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実際、アドリブでやろうとするとこんな感じになる。

左にあるのがATEM software controlのウィンドウ、右下はマクロを使うためのウィンドウ。後ろには映像確認のためにQuicktimeの画面を出していますが、それで確認しながらPinPのウィンドウの位置や大きさを調整しています。

V-8HDでは、ハードウェアについているノブを回して調整できる。いかにやりやすかったか、いざ使わなくなってわかるありがたみ。

制限5)トラブルに弱い

以上挙げた、音問題、マルチビュー(ATEM Mini Pro〜のモデルでは外部ディスプレイで可能になる)、アドリブはATEM software controlが必須になることからとっさに発生するトラブルには弱いと個人的に思います。ここでいうトラブルとは、トラブルが起きる予兆にも気づけず、対処が遅れるということ。

なんか、ネガティブキャンペーンみたいになってしまいましたね。でも、そのためにATEMではなくV-8HDを使ってきて、そこでできたこと・やってきたことを今回の機会にATEM Miniで再現してみてある程度はできるようにはなったものの、オペレーションしているからこそ構成の弱点にも気づくわけです。

もちろん、ATEM Miniにもいい点はあります。

利点1)価格

なんと言っても、価格差。

ATEM Miniシリーズは、

最小構成のATEM Mini(無印)だと4万円を切ります。どうあがいてもマルチビューが使えないので、正直おすすめはしません。

ATEM Mini Proだとマルチビューが使え、USB・SSDへの外部録画機能や直接ライブ配信ができるなど大きく機能が拡張されている。5万弱。

HDMI 4入力の最上機種であるATEM Mini Pro ISOにまで手を出すとそれぞれのHDMI入力+出力の計5系統の録画か可能になる。

8入力まで拡張するとATEM Mini Extremeは10万弱、その上位機種であるATEM Mini Extreme ISOとなると16万クラス。

一方のRoland V-8HDは20万を超えてくる。やりすぎと言われがち(?)なATEM Mini Extreme ISOですら5万近い価格差(ATEM Mini Proがもう1台買えます)。これを、どう取るか。

V-8HDを僕が購入したときはATEM Mini Extremeは発売されていなかったのですが、いずれにせよ取っつきやすいインタフェース、本体に備わっているマルチビュー(オペレーションによってはサブディスプレイでなく本体のモニターで十分)、ほとんどの画像構成がハードウェア単体で完結できることからV-8HDを選びました。

実際導入してみると、ライブスイッチングの魅力や「これもできるかな?」「これ、やってみよう」といった知識欲が刺激される感覚が呼び起こされました。

利点2)設定をシェアできる

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ATEM software controlの設定は、xmlファイルで保存可能。セミナーごとに音や画面の設定、組んだマクロを保存しておき、いつでもエクスポートできる。さらに。そのxmlファイルを共有すれば同じシステムを別の施設でも再現可能。この機能はV-8HDにはない機能。

さらに、設定できるマクロの数も多い。ATEM Miniのマクロに相当するのがV-8HDのpreset memoryだが、最大でも24個までしか設定できない。ATEM Miniのマクロが「操作」を記録するのに対し、V-8HDのpreset memoryは「状態」を記録するというのも違う。

【結論】Roland V-8HDは何だったのか

多くの制限は残るものの、結局V-8HDでできたことはATEM Mini(無印)でもできることか残念ながら判明した。もちろん、トラブルに弱くアドリブが効かないこのシステムは自分はすすんで使おうとは思わないが・・・。

V-8HDというスイッチャーにより、「これもできるかな?」「よし、やってみよう!」というさまざまなライブスイッチングが生まれた。ATEM Miniは、それを再現したに過ぎない。先に進むか、ゴールの位置からそれを目指すのかは大きく違う。たぶん、その違いだったんでしょうね。

ハイブリッドセミナーが普及するために

持ち運び・ワンオペでやるコンパクトハイブリッド配信システム(プロジェクターさえ現地で調達できればマジでカバンひとつ!)を構築しておきながら、配信技術もせっかく少しずつ身につけては来たが、次の課題は「誰でもできることに落とし込む」であった。この人にしかできないではなく、誰でもできること。

自分は自分で配信技術を磨きながらも、誰でもできるようにすることの両立というのは非常に難しい。技術を磨いてせっかくできるようになっても意味を成さないからだ。そこのバランスが難しく、結論としてV-8HDでこれ以上やることはなくなり、今自分が使うべきなのはATEM Miniだった。

手軽にできるって難しい。一応、ATEM Miniを使ったハイブリッドセミナー運用案はできたが、それでもPCいるし、ATEM Miniは最低いる。それでもスイッチャーだけで4万円。マイクやカメラもいる。仮に最低構成機材が10万だとして、この10万が果たしてだけでも手が出せるものなのかか価値観により差が出るだろう。

そう言われると弱いので、究極の譲歩と忖度をした配線図を組んでみた。

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もはや、スイッチャーとはなんぞやという世界。入力台数分のキャプチャーボードを用意すれば、OBS studioという無料ソフトを使えばできないことはない。

あまりにも妥協に妥協を重ねすぎて、もはや見向きもしたくない配線図・・・。さようなら。多分、愚痴しか挙げられないと思う(配信内容に制限、トラブル対処能力などなど)。

妥協や譲歩、忖度(もはやそれぞれの言葉の意味ってなんだっけ?レベル)を繰り返した構成だが、配信の成功を左右するのは使用機材ではない。

セミナー配信の成功を左右するものは、トラブル対処能力だと思う。

これに関しては、場数を踏むしかない。

V-8HDでやっている時も、Zoomを使った配信テストをこれまで何十時間と繰り返してきた(さすがに3桁は行っていないと思う・・・、いや100くらい行くかな?)。そんな中、数多くの音のトラブル、画面のトラブルに対処してきた。もちろん、マニュアル化をする上ではそっちに行かないように正当な道は示すのだが、少しでも道を外れると、システムを作った人はその脆弱性を自覚していたりトラブル発生時の対処をすでに経験しているので即修正できるのだが、マニュアルに従うだけだとわずかでも道を外れただけでトラブルが発生し、対処できなくなる。道を外れないための親切なマニュアル作りが必要だが、果たしてそういう人に「これでできなすよ」と言い切っていいのかどうかは悩んでいる。

ATEMかV-8HDか。。。結局は価値観や考え方の違うだと感じた。自分がやりたい、コンパクトワンオペハイブリッドセミナーだと、セーフティーネットやアドリブなども含めてV-8HDを選んだが、汎用性やsoftware controlを使いこなすのであればATEMでもいいと思う。ん?この話、今後予定されているセミナーセッションのネタバレか?笑

どこまで、「誰でもできる」を許容するか、議論は尽きない気がします。

もちろん、自分なんかよりもずっと前からもっと多くのトライアンドエラーを繰り返して道を切り拓いてきた先輩もいます。。。

というわけで、V-8HDは手放すわけですが。どうしよっかな〜〜。そこそこリセールバリューは高いらしい。

最近頻繁に何度も見ているこの配信。川井さん(あこがれの存在)とつながれていたのなら、連絡するのになぁ〜〜(配信の1:35:27の部分)。

今ならもれなく、V-8HD配信ノウハウ相談権(V-8 remote preset memory sheetやV-8HD対応オペレーションシートファイルテンプレート付き)付きでいかかでしょうか?笑

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