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「ひょうたんからこま」

思い出すと、わーーーー!!!って絶叫しながら窓を蹴破ってジャマイカとかに旅立ってしまいたい事って、みんなあるよね?そんな思い出が急にさっき蘇ったので記しておく。


もう30年近く前。中学2年のある日の音楽の授業。

教師は音楽専任の中年女性で、そんなに嫌な印象はなかった。ところが。

「みなさん。今度の授業では、みなさんに伴奏なしで独唱をしてもらいます。ただの独唱じゃつまらないから、今あなたが好きな曲を何か選んで歌ってね。もちろん歌謡曲でも英語の歌でも構いません」

クラスメイトみんなの前で、自分が選んだ歌をアカペラで独唱させられるー

これは、13歳前後の多感で自意識過剰な男女にとって、地獄以外何物でもなくないですか?今思い出しても震えるわ。狂気。

上位カーストのクラスメイト達は、当時流行していた槇原敬之やチャゲアスなどを。目立ちたくない脱個性メイトたちは、ビートルズとか童謡とかを選んでいたような記憶がある。そして、各々は人知れず自宅で歌の特訓を重ねた(はず)。

そんなわたくしは、その当時今より多分に自己顕示欲が過分で、なんか目立ってやろう。人と違う事をしてやろう。あわよくばいい格好してやろう。という唾棄すべきクソガキだった。やだやだ。で、選んだのがこの曲。

サザンオールスターズの「ひょうたんからこま」。

https://open.spotify.com/track/1T1cvbnHRL8Kyo9DLt0IGB?si=3nan4WHuQ9StJVcJY_mjDw

そもそもサザンはうちの母親が好きで、運転する車に乗るとしょっちゅうサザンがかかっていて自然に刷り込まれたんですね(アン・ルイスとかはさすがに早すぎて刷り込まれなかったけど)。

ベースを担当する関口和之、通称ムクちゃんが作詞・作曲、ボーカルを務めるこの曲が昔からすごい好きだったんですよね何故か。桑田さんがボーカルじゃないのに。

これは多分かぶらないし、サザンだから知ってる人もいるだろうし目立つんじゃないかしら!という欺瞞。欲望。練習。そして、その日が来た。

名前の順で一人ずつみんなの前に立って、死んだ目で震えながらそれぞれが選んだ歌を歌っていく。

アカペラなので音程が取れぬ者。歌詞が飛んで涙目になる者。不貞腐れて誰にも聞こえないような声で歌う者。様々な地獄が目の前で繰り広げられていく。緊張が高まる。

名前を呼ばれ、そこからはほとんど記憶にない。うまく歌えたのか、ダメだったのかすら覚えてない。だけど。その地獄の授業が終わってクラス移動の時。友人がわたくしに言った。

「誰の歌?変なタイトル。全然知らねぇって、みんな言ってたぞ」

誰も知らなかった。

急に自分の自我が崩れそうになって、半笑いでごまかしながら廊下を走った。その日から、この授業の事を思い出すたびに泣いた。何かに期待していた自分が恥ずかしくて。


サザンオールスターズのサブスク解禁で思い出した。「ひょうたんからこま」は今聞いてもマジで名曲だし、途中に入って来る桑田さんのスキャット?的な歌い方もめっちゃカッコいいので聞いてみて下さい。何にせよめでたい!


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