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『ない』の殻
note 36日目。
私は システムバスやシステムキッチン、洗面台などの住宅設備メーカーのショールームアドバイザーをしている。
新築で家を建てる人や、リフォームを考えているお客様がショールームにやって来る。
新築の場合は建物自体に住宅設備が含まれているから、特に問題はない。
リフォームの場合、お客様がまず気にするのは『お値段』。
お客様は相場を知らない場合も多い。インターネットで調べたと言って破格の予算を提示される場合もある。
お客様はよく『お金がない』『この金額以上出せない』と言う。
お客様の話し方や反応をちゃんと見ていると、分かることがある。
本当に予算を抑えたいとか、出来るだけシンプルな仕様でまとめたい場合、お客様の言葉に迷いはない。『この機能とこれだけついていたら、あとはいらない。』その場合は、もっと予算を抑える提案をする。
でも、中にはよく『リフォーム』や『住宅設備』を分かっていないために、『ない』と言っている (と感じる) 場合がある。
その場合、お客様の言葉や態度に『迷い』がある。
予算に合う金額のものを案内しているのに、浮かない顔をしていたり、グレードの高い設備に興味を示す。それは、お客様の
『ない』の殻。
私はちょっと変わっていて、その『殻』を感じるとパカッと割ってあげたくなる。
お客様はお金を持っていないのではない。本当にお金がなかったらそもそもリフォームしたいなどど思わない。
お金を持っていないのではなく、『損をしたくない』だけ。よく分からないリフォームというものに幾らかかるのか。
怖いから、無意識に『ない』と言ってしまう。
そんな時は、モヤがかかって『見にくい』ものを、ひとつひとつ ちゃんと『見える』ようにしてあげる。
大切なのは、お客様が『何を重視しているか』。
それを会話の中からアタリをつけて、わざと予算を大きくオーバーした設備を ”” とりあえず 楽しんで行ってください ”” と言って体感してもらう。
そこから興味を示さなかったアイテムや説明にノッてこなかったモノを抜いていって着地点を見つける。
『ない』の殻が割れた後のお客様は、楽しそうに打ち合わせに参加し始める。最初は あんなに警戒していたのにと可笑しくなる事もしばしば。結局、最初の予算を遥かに超えた提案をしているのに、あっさり決まってしまう。
こんなに提案してもらったのは初めてだとよく喜ばれるけど、実は あまり提案はしていない。
『ない』の殻を割ってあげるだけ。
あとは、お客様の方からどんどん進んでいってくれる。毎回、お客様の『殻』が割れた後の反応が楽しくてたまらない ( *´艸`)
だから、お客様を相手にしていて 気をつけなきゃと思うのは、どんなことでも簡単に『ない』を言わないこと。『ない』を言った瞬間、本当はあるはずの『モノ』や『可能性』が全部見えなくなってしまう。
欲しいものがなかなか手に入ら『ない』。
手助けしてもらえ『ない』。
教えてもらえ『ない』。
聞いたこと『ない』。
時間が『ない』。
お金が『ない』。
でも、どうやったら『ある』になるかを考えるだけで、思ってもいなかった方法が見つかったり、見えていなかっただけで 実は『あった』なんてことも割とある。
人の事は客観的に見えるから、どういうところでツマづいているのか分かる。でも、自分の事はなかなか分からない。
だから、とりあえず 何でも 『ある』の姿勢で。
ちゃんと、『ある』と思って毎日を過ごす。
今日も一歩前へ。
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