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【最新作云々⑥】孤島のビッグダディはシャアよりも強い?! 戦闘シーンは激アツながらギャグは超サムい...『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』をどう戦い抜くかな?

 結論から言おう!!・・・・・・・こんにちは。(=゚ω゚)ノ
 今日(6月21日)は「世界キリンの日」らしいですが、キリンといったら"キリンさんが好きです。でも、ゾウさんのほうがもっと好きです"松本引越センターのCMを真っ先に連想する、O次郎です。

※94年から放映されてたそうなので、おそらくこの子役の女性は今30代半ばぐらいでしょうか。

 今日は先週末に観た『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』の話です。
 当方、幼少期は「コロコロコミック」よりも「コミックボンボン」派だったこともあってガンダム大好きでありまして、初めて通しでTVシリーズを観たのが数あるガンダム作品の中でも最大の異端作とされる『機動武闘伝Gガンダム』、という世代です。その後、リアルタイム作品は追い駆けつつ、過去作品は映像ソフトで観返しました。
※ちなみにガンダム漫画が連載されていた「コミックボンボン」を読んでいた子どもはオタクに、しかもガンダムオタクになる、という通説アリ。

 今回も個人的にゴイスー!と思った点とムムムッと思った点を高くはばたいて大空をどこまでも書いてみようと思います。
 封切から既に二週間ということで感想も出揃った感が有りますが、極力既存の感想は見ないようにしつつ自分のそれをまとめましたので、意見の一つとして読んでいただければ之幸いでございます。ネタバレを含みますので未見の方は鑑賞後に御覧下さいまし。
 それでは・・・・・・・・・・・「僕の父は 日本一の日雇い人夫です!」

トップ画像にも使った予告編にある、ガンダムがザクにサーベルを振りかざすスローシーン
てっきり左門豊作のごとくにアムロの目にドアンが育てる孤児の子どもたちの姿が
ダブって見えたりする
んだと思ったよね?(*´罒`*)



Ⅰ. 作品概要

 安彦良和先生が監督、ということで富野由悠季監督のファーストガンダムとは本質的に似て非なる別物、ということを念頭に置いておいた方がよさそうです。
 一番大きな所としては本エピソードが挿入される時系列の違いとして、
〇ファーストガンダム - ガルマ戦死後、ランバ=ラルとの闘いに入る前
 ※リュウ=ホセイは未だ存命
〇本作 - オデッサ戦(黒い三連星のドム)とジャブロー戦(シャアのズゴック)の間の期間
 ※ファーストではジャブロー戦後、再び宇宙に向かう際に配属されていたスレッガーが既に加入済み。ソロモン攻略戦あたりから登場していたGMが既にホワイトベースに配備済み。

 となっており、敵方も高起動型ザクが実践投入済みだったりして両軍ともMSのバリエーションが豊富になっています。
 ドラマとしては老練で軍務に忠実なジオン軍サザンクロス隊側と、若く血気盛んで人情優先の地球連邦軍ホワイトベース隊側のコントラストが効いており、老・壮・青揃った実力派声優さんの力演も相俟って、単発エピソードに肉付けした翻案ものながら非常に説得力のある仕上がりになっています。
 また、『王道の狗』『虹色のトロツキー』といった歴史漫画を多く手掛けた安彦先生が監督しているだけあって、為政者の覇権争いに翻弄される市井の人々の受難や、自然生活の描写の背景にある文明批判など、安彦イズムが色濃く表れているのも特徴です。
 物語終盤は島の平穏が完全に瓦解し、一応の終焉を迎えますが戦は続いていく・・・という重苦しくもあるラストを森口博子さんの主題歌が優しく浄化してくれるのがなんともニクいところです。

五十代半ばというのにいまだにお綺麗だなや。( ^∀^)



Ⅱ. 個人的ヒャッハー!な点

・肉弾戦主体の無骨ででも流麗な戦闘シーン

高起動型ザク3機を相手にあちこちガタが来てるザクⅡで戦うというケレン味‼

 今回のホワイトベース隊のメインの相手はジオン公国軍精鋭部隊「サザンクロス隊」ですが、さすが精鋭部隊だけあって鬼のような強さです。武装に関しても対艦ライフルやヒートダガーといったように隊員各員で武装もカスタマイズされており、各キャラクターを効果的に色づけしています。アレンジが過ぎるかもしれませんが、まぁそこは演出優先ということで。
 ほぼ遮蔽物が無い狭い無人島での闘い、という状況もあって銃はあまり活躍せず、格闘武器での戦いがメインとなるため、ガンダムではあるもののさながらチャンバラ映画を観るかのような感覚があり、”決闘”志向の強い安彦先生の拘りを感じさせられるところです。

チャンチャンバラッ!チャ~ンバララ~~ッ♪

 また、かつての部隊の仲間たちに苦戦させられるドアンの窮地にようやく現れるガンダムは島への侵略者の撃退のみならずドアンの強迫観念をも終焉に導き、さながらデウスエクスマキナのようです。ガンダムの名を冠しているものの、ガンダムそのものは冒頭と最後に登場するのみで、あくまでドアンのザクが主役メカというスタンスが見えます。
 ドアンのザクⅡの鈍重ながら力強い動きはまさに彼の人間性そのもので、尚且つサザンクロス隊の高起動型ザクの俊敏な高速移動とのコントラストも鮮やかです。まぁ、高起動型ザクのスウェー移動がどうみてもボトムズに見えてしまうのが気になると言えば気になるのですが・・・。

このドアンの過去の回想シーンもすげーボトムズ感満載。
「アレ?肩が赤くカラーリングされてない?!」って思っちゃったもん…。


・サザンクロス隊の侮れない存在感

サイクロプス隊じゃないのでバーニィは居ません、悪しからず。

 結論から言ってしまうと、元隊員で脱走兵のドアン以外は本戦闘で漏れなく全滅してしまうのですが、使い捨てにしては各員ともよくキャラが立っていました。
 特に唯一の女性隊員であるセルマは、過去にドアンと関係が有ったことを匂わせつつも、それを描写せずに直接対決で散っていく様が逆に印象を掻き立て、なかなか上手い演出でした小説版ではお互いに家族が無いゆえに慰め合い、ドアンが島で「家族」を持ったことに憤って彼と剣を交えたようですが、愛するものを殺してでも取り返そうとする女の情念は空恐ろしいものです。
 戦闘狂でいかにもな咬ませ犬敵キャラのダナン伍長は分かりやすいのはいいとして、さすがに「シャアかドアンか」は話を盛りすぎでしょう…。
 また、ドアン脱走後に隊長に就任したエグバについてはラストに島のクレーターでのドアンとの一騎打ちという大一番が用意されている分、数カットでも昔の戦友時代のカットなり逸話なりを挟んでくれるとより深みが出たかと思うのでそれは勿体無いところ。
 ともあれ、ドアンの過去の象徴であるサザンクロス隊が今のドアンにとっての聖域である島を荒らしに訪れ、彼らと対峙することがそのまま過去の罪と対峙することになる、という展開はオーソドックスながら響きました。

・密やかな文明批判

”ダディの帰還”の図

 本作は戦闘シーン以外、島でのドアンと孤児たちとの自然を相手にした自給自足の生活ぶりの描写に相応の尺が割かれており、島に外部から訪れる者たちは敵への一大犯行作戦の橋頭保として島を利用としたり、他方では島の地下に眠る核弾頭を目覚めさせようとしたり、文明を持ち込む側が明確に悪として描かれています。
 特に象徴的なのは、終盤にドアンが外部との関わりを絶つために意図的に封印していた灯台の灯りをアムロが起動させてしまい、それを契機にジオン軍が侵攻してくる、という場面です。のどかな自然の島の秘密を狙って複数の武力が介入してくる、という構図は同じく安彦先生が監督した『巨神ゴーグ』を彷彿とさせます。

”争いを好まぬ僕に武器は無い”・・・なんつって。



Ⅲ. 個人的ムムムッ!な点

・連邦軍がガンダム以外弱すぎな件

いじめっ子かよ・・・。

 せっかくオリジナルの時系列を度外視してジムを登場させてるのにドアンにもサイクロプス隊にも名も無きモブジオン兵にもやられまくり…
 序盤のホワイトベースでの通信でエド中佐が「ジムが量産されるようになった以上、ガンダムの有意性はもはや云々」という話をされていましたが、説得力ゼロのやられっぷりです。簡単にやられるジムが居るのはいいですが、せめて一部は『機動戦士ガンダムUC』第一章のクシャトリアと接敵するスタークジェガンのように奮戦してほしかったものです。ジオン側もスナイパー装備のザクが居たことだし、ジムスナイパーを出すとかあってもよかったのでは?
 加えて、カイとハヤトのガンキャノンも瞬殺されるレベルで弱いのもどうなのか。アムロのような類い稀なる才能を持つパイロットではないとはいえ、オデッサ戦まで潜り抜けているならそれなりの技術と度胸は付いているはずで、この不甲斐なさはブライトさんの鉄拳制裁では済まされないレベル。
 どうやらWikiを観てみると、本作ではガンダムは任侠映画での鶴田浩二さんのイメージとのことで、それを考えるとガンダムの強さを強調するために周囲がモブ化して瞬殺されるのはある程度納得出来るところではありますが…。それにしてもガンキャノン二体がかりでサザンクロス隊のザク一体倒す、ぐらいの見せ場は欲しかったと思ってしまいます。

たとえ自分が主演じゃなくても、ゲスト出演でも常にトップクレジット、
それが昭和の大俳優なりよ。

 スレッガーさんのジムも最初の登場シーンこそそこそこ映えてましたが…。

スレッガーさん、イオ少尉に空中戦のやり方を教わってきて下さい…。



・ギャグがいちいちサムい件

 そして本作で一番私が言いたいのがココです。
 上述のスレッガーさん、乗っていたセイラさんのコアブースターが被弾したため島に不時着しますが、その衝撃でジムが山に激突して頭部がもぎ取れ敢え無く戦闘不能・・・・・・オリジナルの時系列を無視して登場させたジム&スレッガーの組み合わせを出落ちのギャグ描写に使う、という紛れも無い暴挙です。

「俺をキミの背中に・・・」というセクハラ発言でのビンタ、
というのもサービスシーンに含まれるのか。
彼女もミライさんも入浴シーン担当からは解放されてましたね。

 また、島に残されたアムロ救出のためにトンチのような形で出航命令を遅らせるブライトに対して涙目のエド中佐の姿・・・昭和のコメディーか…。

安彦先生の漫画を読むと、そのクラシカルなコメディー手法がチラホラ。

 誠に失礼ながら監督の安彦先生由来と思われるギャグの古さ、場違い感が随所に見られ、それらが作品のユーモアを損なっているのは否定の仕様の無いところのように思えます。
 ギャグ描写はせいぜい中盤にアムロの救出を訴えてトイレに籠城するカツ・レツ・キッカの幼児三人やハロあたりだけに任せておき、あとのギャグは控えるよう周囲のスタッフの方々が諫めるべきだったのではないでしょうか。
 作品全体が”文明から忘れ去られた島”というテーマのため、その部分では古臭さも上手く機能しますが、この点に関しては明確に時代にミスマッチだったように思えて残念というのが正直なところです。


Ⅳ. おまとめ

 そして、島にジオン軍が過去に設置した核ミサイル設備を起動させたサイクロプス隊の工作員を「ああいうのはやりづらいんだよなあ…」と呟きつつガンダムで踏みつぶすアムロについてですが、個人的には安彦先生のあの時期のアムロの解釈としてあれはあれで有りだと思います。
 子どもゆえの無邪気さと、子どもでも大人でもない時期の責任感から来る残酷さの顕われ、とでも言いましょうか。

次作の主人公が同じようなことを、より嗜虐性に満ちた形でやってることだしぃ・・・。

 エンディングは島の子どもたちの一人が迎えた誕生日の様子がクレジットで流れていましたが、戦火の中でも逞しく”日常”を送ろうとする子どもたちの物語の帰結として大変良かったと思います。 

ポケ戦」のエンディングを思い出した人もきっと多いハズ。
ずっとモノクロだったのに最終話のこのカットだけ鮮やかだったのがまた…(涙)

 個人的には、一年戦争が終わった後、孤児院出身であるドアンはおそらくは自らの犯した罪を子どもたちに洗いざらい話したうえで此度の戦争の責めを一身に受け、元の世界に子どもたちを送り出したのではないかと思っています。
 特にラストに続篇への引き演出も無く、あくまで島を巡る人々の物語として終わらせていたのも好印象でした。ビジネス面よりも「ガンダムの映像を作るのは本作が最後となる」という決意の安彦先生への敬意を製作サイドが優先させた、ということでしょうか。

しかしゴップ大将、マ=クベからの脅しには屈しない姿勢でしたが、
アンが核ミサイルに細工しなければヨーロッパ主要都市に核ミサイルが降り注いでいた訳で…。
もしそうなっていたらそれこそ敵軍の総帥の如く、
「せっかく減った人口です」とか嘯いていたのか。

 というわけで今回は最新公開映画の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』について思うところを語ってみました。思うところがございましたらコメントいただければ嬉しいです。
 今年10月から新作TVシリーズとして『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が放送開始予定、ということで今年はガンダム豊作の年になりそうでなりよりでございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




ちなみにゲームのジージェネシリーズGBA用ソフトの
SDガンダム GGENERATION ADVANCE』では
ドアンのザクが大フィーチャーされてて強ユニットとして登場しました。
オリジナルシナリオでドモンあたりとガッツリ絡んでたような?





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