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【趣味人噺⑪】〈その①〉80年代に活躍して消息を絶った伝説のホラー漫画家川島のりかず先生の作品をレビューしてみる、の巻。

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。(●´д`●)メ
 "ホラー漫画家"といえば、そういえば山咲トオルさんをテレビでとんとお見掛けしなくなったのはいつ頃だったかな、と物思いに耽るO次郎です。

00年代だから、自分が高校生~大学生の頃にはよくよくお見掛けしましたが。
ちょっと調べてみると、あまりに忙し過ぎたので徐々にレギュラーを降板しつつ休養に入り、
本数セーブしながら現在も芸能活動は続けられているとか。
トーク力とオネエキャラが印象的で、彼の漫画も読んだことは無かったですが
ホラー漫画家として印象付いていたのは何ゆえか・・・?

 今回はいつもの映画話から離れて閑話休題、マンガのお話です。
 直近の年末年始休暇期間にkindle本で気になっていた復刊ホラー漫画を購入して読んだのですが、なかなかに面白かったのでそれでは、とこないだ国会図書館にえっちらおっちら行ってきて同作者の作品の蔵書をまとめて閲覧してきたので、それらに関しての自分なりの感想のレビューというわけでございます。
 残りの蔵書は別館の方にあるようなので、そちらはまたの機会に読めたら後篇としてまた感想を書く所存でございます。
 80年代に活躍されていた漫画家さんなので、ノスタルジーに浸りがてらお付き合いいただければ幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・『青春!!タコ少女』!!

楳図かずお先生に影響を受けている、ということで、絵柄を見るとなるほど確かに、という感じで。
上記ラジオ番組放映時は僕は中学生でしたが聴いてた覚えが有ります・・・radikoなんてまだ存在しない時期ですから、実家の自室のラジカセ(これももはや死語か…)のアンテナを四方に向けての、ノイズや海の向こうの北朝鮮のラジオの混線と闘いながらの聴取でしたが……いや、ホントに。(゜Д゜)


Ⅰ. 漫画家川島のりかず先生について

 1950.10.8生~2018.2.25没。僕の両親と同年代ですが、享年68歳ということで些か早いですね。
 キャリアとしては、未だ十代の頃に『COM』で新人賞入選作でデビューされており、ふくしま政美先生のアシスタントを経て、虫プロアニメの動画を担当されたりもしており、80年代に入ってから漫画誌に読み切り作品を投稿、以後83~88年にかけて数十冊のホラー書き下ろし作品を発表されています。
 各作中の主人公は大概小学校高学年ぐらいなのでおそらくはターゲットもそのぐらいの少年少女かと思いますが、特徴としてドギツいスプラッター描写が多く、人体損壊(四肢や首の切断や目玉抉り)の見世物的即物性は青年誌向けとも思えるレベルで、まだまだ漫画に対する偏見も色濃い80年代という時代を考えてももし当時の小学生がお小遣いで買った氏の単行本の内容を親が見れば"子どもが読むには残酷すぎる"とお叱りを受けたやもしれません。

80年代半ばからは特にスプラッターホラーが流行ってた感があるので、
そうした時流を頼みにしていた部分はあるかもしれません。
しかし『バタリアン』、たしか幼稚園生の頃にTV放映で観て
このデロデロ具合観て大泣きした覚えが・・・
。( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
そして同時期のスプラッターといえば一作目の『ロボコップ』も。
こっちもその数年後ぐらいに何回目かのTV放映で観たんですが、
既に過去に同作を観ていた5歳上の兄から「マーフィの殺され方はグロ過ぎるから
お前はそのシーンは止めとけ
」と忠告され、大人しく従って問題のシークエンスだけトイレ休憩。
中学生ぐらいになってからようやく目の当たりにしましたが、
「アニキ、あの時は止めてくれてありがとう…」と内心感謝しましたとさ。(´・ω・`)

 また、その小学生同士が繰り広げるいじめの陰惨さの描写も目を見張るものがあり、それに対する復讐劇の淫靡な快感も相俟って『魔太郎がくる!!』的なカタルシスも其処彼処に感じられる作風となっています。
 200数十ページの書き下ろし単行本作品を2,3か月に一本のハイペースで発表されていますが、1988年に版元のひばり書房が出版を行わなくなったことで暗雲が立ち込め、新しい版元を探し続けるもなかなか見つからず、数年後には貯金を使い果たして遂に筆を折る決意を固め、郷里の静岡へ戻ってサラリーマン生活へと舵を切られたようです。
 御年四十を迎える頃で、働き盛りの中を道半ばにしての転職、しかも不規則な生活が常の漫画家から勤め人への鞍替えということで、その精神的・肉体的な重圧は如何ばかりであったろうと傍目ながらその労苦が偲ばれます。

※"放浪の漫画家"黒咲一人先生の『55歳の地図』は原稿の依頼が途絶えてしまった55歳の漫画家の半自伝的作品ですが、キャリアの頭打ちが早いなら早いなりの、遅いなら遅いなりの辛さがあるはずで…。

 さらには素人ながら察するに、連載漫画であれば担当編集者から連なる人脈や他の漫画家先生との横の繋がりでの延命も十二分に有り得たような気がするのですが、出版社に買い取ってもらう書き下ろし単行本をスタイルとされているとなかなかそれも難しかったのかもしれません。80年代末ならバブルが弾けて直後ということで出版業全体としてもまだまだ元気だった筈で、ホラージャンルはいつの時代でも一定の人気があることも考えると、パイプさえあったなら、とは思ってしまいます。

 その後、2010年代になってからようやくそうした書き下ろし恐怖漫画が注目されて川島先生の作品も再評価が進み、後ほど言及する『フランケンシュタインの男』の復刊にも結び付いたようなのですが、先生の存命中にそれが成されていればご本人のインタビューのみならずもしかすると新作も有り得たかも…と思うとなんとも口惜しいところです。
 尤も、その『フランケンシュタインの男』の復刊でようやく作品に触れ得たにわかの立場で何をかいわんや、という話ではあるのですが…。(´・ω・`)

 その編集後記に川島先生の略歴が掲載されていてこその情報ですが、それによると晩婚を経て奥様の連れ子の娘さんとお孫さんが養子となられたようで、「ときどき孫の絵を手伝ったりもした。孫が小さいとき、なぜ絵が上手なのかと聞かれたことがある。『漫画家だったんだよ』と言ってニコニコしていた。多分、嬉しかったんだと思う」という奥様の言葉がなんとも読んでいてじんわりと来ました。
 思いがけず家族に自分が身命を賭してきた過去を肯定してもらえてさぞや報われる思いだったのではないでしょうか。

 また、同じく編集後記に、川島先生が主戦場とされた”ひばりヒットコミックスシリーズ”の主たる読者は女の子だった、と記載が有ったのも大いに納得しました。
 主人公に女の子が多いのも然ることながら、漫画のグロ描写だったり性表現に関しては女性誌のそれのほうがわりかし振り切ってたりしてたように思いますので。
 小学校高学年から中学生になったぐらいの頃、遊びに行った友人の女の子の部屋に在ったレディコミ的な雑誌の掲載ホラー漫画の強烈さに肝を潰された覚えが有りますし、その数年前にも実家のどこかに4つ上の姉が購読してた雑誌の別冊付録漫画が在って、それも思い出すに流血や目玉を抉る描写が散見されたように思います。

あるいは、学校の廃品回収イベントで校庭に集められた
古本・古雑誌についても女の子の雑誌はおどろおどろしいものが多かったような…。

 また、そうした流血やいじめといったモチーフが作品間で繰り返し用いられることも多く、特に主要人物が発狂して幕を閉じるラストについては些か安いデウスエクスマキナを感じもするのですが、逆を言うと素材が似通っているがゆえに作品毎のその料理法というか味付けの違いが感じ取り易く、作家としての初期衝動を極めて大事にしつつそこに技術を注入していった感があります。

 前置きがすっかり長くなってしまいましたが、以下、先日国会図書館で閲覧してきた川島先生作品の蔵書の数々の紹介と個人的おススメ度のレビューでございます。極力発行年度順で列記しております。どうぞどうぞ。



Ⅱ. 川島先生の作品群、その一

①死人沼に幽霊少女が!! 〈1984.2刊行〉

[個人的おススメ度:★★☆☆☆]

 とある田舎町の朽ち果てた教会で暮らす一人のお爺さん。彼は早くに子を亡くしたうえ、このほど孫娘も町の底無し沼で事故死したばかりで、天涯孤独の偏屈者。町の人間も煙たがるばかりの彼の教会にある夜、素性の知れない少女が舞い込んでくる…。

 あの手この手の罠で少女を冥界へ連れ去ろうとする死神二人と、ようやく見つけた生きる希望を手放すまいと我が身を盾にして対するお爺さんとの攻防がメインですが、仇敵の死神二人がどこか間が抜けていて滑稽さもあるうえに人間でも触れることができ、さらには活動後期と比べると川島先生の絵のタッチが大分可愛らしいので、純然たるホラーというよりはホラーコメディーといった具合です。
 その後の作品で見られるスプラッター描写も殆ど無く、ラストも恐怖よりももの悲しい救いの色合いが濃いので、読み易くはあります。
 ただそのぶん作品自体のインパクトも薄めであり、全てがお爺さんの白昼夢やもというオチの持って生き方も些か弱いので、こじんまりとした印象は否めませんでした。

②ガラスの中の醜い顔 〈1987.9刊行〉

[個人的おススメ度:★★★★☆]

 舞台は数世紀先と思しき未来。
 主人公は才色兼備の女性科学者で、外宇宙の惑星探査から間も無く帰って来る宇宙飛行士のフィアンセがいる。彼との再会を待ちわびつつのとある日、科学実験の事故で主人公は最新医療でも整形不可の醜い傷を顔の半分に負ってしまい、絶望のあまり辞職したうえに戻ったフィアンセとの連絡も断ってしまう。
 自分の殻に引き籠る主人公を見かねた親友の女性がせめてもの慰みにとフィアンセを模したロボットを彼女に送り、最初は拒絶する主人公だったが…。

 川島先生には珍しいSFものであり、件のロボットやエアカーといったギミックのビジュアルはだいぶ厳しいものがある(失礼…)のですが、それを補って余りある人間心理の妙味の感じられる秀作です。
 即ち、主人公は自らの醜い傷を見てもなお、家族の反対を押し切ってでも結婚したいと迫るフィアンセを信じられず、自分に従順で変節の心配のないロボットに執着していくのです。
 フィアンセはたとえ今は自分を愛してくれていても何かの切っ掛けで醜い自分を見限るかもしれない。その点、ロボットは…。
 一度はフィアンセとよりを戻そうとするもロボットの扱いで仲違いし、ロボットと二人で逃避行を重ねながら日銭を稼ぐために見世物小屋で自分の顔を商売道具とします
 終盤にとある経緯でロボットに感情が芽生えるのですが、それによって却って主人公は彼の自分に対する揺るぎ無い忠誠と愛を疑うようになり、"心がある相手だからこそ信頼出来なくなり、互いに人間としてハンデを負っている相手だからこそ安心できる"、という真理が露悪的な形で顕れていて思わずニヤリです。
 数々の事件を起こして収監されたうえに愛するロボットを失った主人公は正気を失いますが、フィアンセはそのロボットの振りをして彼女の傍らに寄り添うことで愛を示したのでした…。

初代PSのアドベンチャーゲーム『雪割りの花』(1998)。
安アパートに住む大学生の主人公は秘かにお隣の女性に思いを寄せている。
その彼女の恋人が死んだショックで彼女が記憶喪失となったことで、
回復のために主人公は死んだ恋人のふりをすることになる、というお話。
やるドラ』シリーズの中でもかなり陰鬱な作品だったけど自分は結構好きでした。
本作のラストを読んで俄かに思い出したわけで…。


③生首が帰って来た 〈1987.10刊行〉

[個人的おススメ度:★★★☆☆]

呪いバトル勃発!!

 両親を早くに亡くした女子中学生の主人公はサラリーマンの兄との二人暮らしで、休みの日の兄との遠出が大の楽しみ。
 とある休日に出かけた山中での昆虫採集の最中に不気味な姉弟と出会うが、兄とその女性は徐々に惹かれ合っていく。
 最愛の兄との生活を脅かされたくない主人公は出来心から友人から教わった黒魔術に手を出してしまい、それが身の毛もよだつ惨劇の連鎖を呼び込むことに…。

 ということで主人公が兄のフィアンセに掛けた呪い(相手の髪を練り込んだダンゴをカラスに食わせたり、自分がナメクジを飲み込んだり……マジかよ)によって旅行先の海外でフィアンセはカラスの大群に啄まれて片目を失明し、反対にそのフィアンセから呪いを掛けられた主人公は生肉や動物を喰らう異形の獣と化していきます。
 その後は友人の助力でなんとか兄のフィアンセからの呪いを解こうとするも解けず人外と化していく主人公と、呪いによって心まで毒されていく兄のフィアンセの闇バトルが展開してくのですが、主人公に呪いを掛けられたと気付いてからの兄のフィアンセの形相の変化がメチャクチャ怖いです。
 ラストは壮絶なスプラッター描写で渦中の二人が刺し違え、二人の暗闘の経緯を何も知らず仕事から戻ってきた兄が事態を見て発狂するのですが、中盤に自分との生活に執着する姿勢をあらためて己の世界を見つけるよう主人公を諭す兄の件をもっと膨らませていたら傑作となり得たかも。
 ともあれ、主人公と兄のフィアンセとの陰惨な呪いを用いた昏い戦いがインパクト大です。

ヴィゴ・モーテンセンが若い! 
これも田舎で灰色の日々を送る少年が、憧れの兄を奪ってしまいそうな女性に罠を仕掛けて取り返しのつかない事態に・・・ということで思い出した作品。

④死人をあやつる魔少女 〈1987.12刊行〉

[個人的おススメ度:★★★☆☆]

そういえば、僕も保育園生の頃、毎朝階下から起きるよう叫ぶ母の声で目覚めてましたが、
いつも階段の手前で突っ立ったまま意識が飛んで気が付いたら階段下に立っていたので、
その幼少期の限られた時期・空間だけテレポートが使えていたのかも?(゜Д゜)

 主人公は女子中学生。とある大雨の日に傘を持っておらず、友人たちは止むまで校内で雨宿りしようとしていたものの主人公はその制止を振り切って走って帰ろうとしたところを彼女めがけて雷が直撃
 ・・・黒焦げで即死したかと思いきや不思議な光球が主人公の体内に入り込んで瞬く間に蘇生。元通りの身体になったばかりか不思議な超能力が備わり、空中浮遊が出来るようになったり、いじめっ子を返り討ちにしたり、さらには他人の病気を治したりとスーパーパワーを発揮するが、それに気付いた周囲の人たちとの軋轢も生まれることになり・・・というお話。
 前半は主人公がその超能力を用いることで最近巷間を賑わせているシリアルキラーの潜伏先を特定し、刃物を振り回す犯人と血で血を洗う死闘を繰り広げるスプラッター展開で魅せ(ちなみに犯人は死ぬものの主人公は四肢断裂レベルの重症も瞬く間に超回復…)、後半は事故死した親友の女の子を蘇らせたり、果てはとっくに亡くなっている彼女の両親や兄弟を墓場からゾンビ状態で蘇生させたりといったグロテスク描写でこちらの見世物根性を満たしてくれます(ちなみにそのゾンビ家族は元通りの人間に戻るのでご安心を…ていうか、火葬じゃなくて土葬なのがちょっと引っかかりますが)。
 しかしながらその集団蘇生を最後に超パワーを使い果たしたのか、例の神秘の源である光球が主人公の体内から抜け出てしまい、それ以後は主人公は全く超能力を使えない普通の女性に戻ってしまいます。
 本作のユニークなところは、それによって主人公が周囲の人々から総スカンを喰らったりいじめっ子から手痛い復讐をされたりあるいはそれまでの超パワーの反動が一気に押し寄せて急激に老化したりミイラになってしまったりといった安直なしっぺ返し展開は採らず、中盤であらかじめ成長した成人女性となった主人公が精神科医のもとを訪れてその数奇な過去の体験を語る、という時系列が前後する展開で含みを持たせているところです。
 同じく成長してごく普通のサラリーマンになっている弟(上記のシリアルキラーとは別の殺人鬼との死闘を主人公と一緒に経験済み)は主人公の話に対して懐疑的な医者とは対照的に主人公に対して全幅の信頼を置いており、どことなく近親相姦的な雰囲気も匂わせています。
 さらには主人公の超能力を知っても気味悪がらず寄り添ってくれた親友たちが主人公の自宅で主婦同士のお茶会の最中に忽然と姿を消したのかあるいはもともと最初から居なかったのか、そして現代の主人公の数週間前に失踪した夫は何処にいるのか…等々、序盤こそ超能力を扱っているとはいえそれにしても些かガバガバな展開が目立ちますが、ラストの浮世離れした夢うつつな幕切れはある意味で衝撃的であり、"いくらでも深読みができる"という意味で何回も読み返したい不思議な魅力も持った一本です。

⑤いじめっ子は死んだ 〈1988.1刊行〉

[個人的おススメ度:★★★★★]

上記は改題後再刊行時のタイトルであり、
改題前タイトルがこちらの『たたりが恐怖の学校に!!』〈1983.12刊行〉

 主人公は気が弱くて寂しがり屋の女の子で、友だちが欲しいものの自分からは中々打ち解けられず、クラスのいじめっ子グループの使い走りの立場に甘んじている始末。
 自分がいじめられたくないあまりにグループのツートップの男女の言い付けで他の子のいじめに加担するような主人公だったが、そのいじめっ子たちが一人また一人と事故死してしまう。そして彼らの死の背後には、決まって黒いフクロウのはく製の置物があった…。

 川島先生の単行本は内容が同じでタイトルが改題されて刊行されたものがいくつかあるようですが、本作もそのうちの一本です。
 翻ってそうした作品は人気タイトルだったのかもしれませんが、現況で読んだタイトルの中で個人的に最もお気に入りの一本が本作です。
 冒頭はそのいじめっ子グループのリーダーの男の子が、トラック運転手である父親(ちなみにシングルファーザー家庭)の運転で他所に引っ越す途中に運転ミスで誤って崖下に転落して事故死する場面からスタートします。
 川島先生の作品の特徴として、"冒頭にまずクライマックスの場面を見せて観客の興味を煽り、そこから時を遡って描写を重ねるものの実は冒頭シーンは物語の中間地点に過ぎず、さらに本当の驚愕のラストに向かって突き進んでいく"というプロットが多用されており、前述の『死人をあやつる魔少女』も本作もその形式を採用しているのですが、本作はそこにさらに謎解き要素が加味されています。

 即ち、"いじめっ子が黒フクロウの呪いで死んだ…しかしその背後に本当の黒幕が?!"という真犯人を追うミステリー展開となっており、しかもそれが多重構造となっていて最後まで読者を飽きさせません。
 上述の男の子の最期の言葉からして「本当の犯人の正体が誰かは言えねぇ・・・言ったら俺も父ちゃんもおしまいだ!!」というものであり、恐喝のみならず婦女暴行という生々しい題材を児童層向けの作品で描いているのが驚きですが、それも男児よりもよりセンシティブな内容を欲する傾向が強い(と一面で見られていた)少女が主たる読者であることを考えればむべなるかな、というものです。
 いつの時代も子どもは親の姿を見て処世術を学ぶものですが、時としてその無自覚性ゆえに大人以上の害毒を現出させうる、ということがよく表れています。
 幕切れは他の作品と比べるとやや呆気無い感は有りますが、それゆえに却って独特の薄ら寒さもあり、それも含めて個人的に推したい逸品です。


Ⅲ. おしまいに

 というわけで今回はいつもの映画・ドラマの話を離れての番外編で、カルトホラー漫画噺、その前篇でした。
 本当は今の時点で読了した10冊についてレビューするはずだったのですが、書いてて5冊分終わってすでにとんでもない文字数になってしまったので残りの5冊分のレビューは次回にするとします。

※ちなみに、今回過去作品を読んでみようと思う切っ掛けとなった昨年末に復刊(電子書籍版も有るのがありがたい!)された『フランケンシュタインの男』も次回分の感想記事に。

 実は今回行かなかった国会図書館の姉妹間の方にも川島先生の単行本の蔵書が十冊ほどあるようなので、それも読んで感想書くとなるとシリーズになりそうですが・・・・・・取り敢えず『コミックボンボン』の87年分以降も忘れないようにしよう。(*´罒`*)
※同じく、ちょくちょく国会図書館に行って読んでる本の感想シリーズです。以下の通り、こっちも読んでちょ。
【90年代あれこれ⑧】~夏休み企画、その2~ オタク、それもガノタの製造器と揶揄する勿れ!! 我が幼少期のバイブル「コミックボンボン」のいろいろとスゴイ...な掲載漫画5選(1981~1983年分)|O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)|note
【90年代あれこれ⑨】キラーコンテンツたるガンプラの牙城を脅かすはあのゲーム機... 我が幼少期のバイブル「コミックボンボン」のいろいろとスゴイ...な掲載漫画5選(1984~1985年分)|O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)|note
【90年代あれこれ⑪】我が世の春を謳歌するファミコンのフィーバーが誌面を牛耳らんとする中、長期連載も軒並み終了そして... 我が幼少期のバイブル「コミックボンボン」のいろいろとスゴイ...な掲載漫画5選|O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)|note
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




もう三日前だけど・・・武藤さん本当にお疲れさまでした!!!

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