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【最新作云々㉖】共依存を恐れた互いのの思いやりが悲劇を生む... 適度な距離感を模索しつつもついぞ持ち得なかった女性二人の物語の映画『マイ・ブロークン・マリコ』
結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
ガチャピンとムックならガチャピン派でしたが、周囲の友人達は「ガチャピンはなんでも出来て優等生然としたところが気に食わない」と一様にムック派だったことに鼻白んだ覚えがある、O次郎です。
※そして"ポンキッキ"といえば同時に思い出すのがコレ!! めんどくさくなった相手を短絡的に始末するってのがなんとも…当時のお二人がそれだけ"都合の良い相手"を欲していたという顕われでしょうか。
今回は邦画の最新映画『マイ・ブロークン・マリコ』です。
"大人の女性のためのWEBマンガ誌"「COMIC BRIDGE online」にて数年前に短期連載された漫画の映画化作品で、予告編を観ての"親友の遺骨を強奪した女性が旅をする"という筋立ての奇矯さに惹かれて鑑賞しましたが、原作未読の男性にとっても十二分に意義深い内容でした。
原作漫画での紙幅の都合も有ったのでしょうが、登場人物の背景や結末について敢えて伏せられたり曖昧にされている部分が多く、一方で物語としては然程入り組んでいるわけではないため、内容について特に各人の心情について考察するのが好きな人にはうってつけの作品のように感じました。
原作好きで映像化に抵抗感のある方々、あるいはレディコミ作品に抵抗感のある方々、判断材料の一つとして読んでいっていただければ之幸いでございます。ネタバレございますのでそのへんは予めご容赦くださいませ。
それでは・・・・・・・・・・・・同キャラ対戦!!
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ちなみにこのカラーのガチャピンのTシャツ持っとるぜよ。( ・ิω・ิ)
Ⅰ. 作品概要と物語の推移と
"遺骨と旅する女"というモチーフだけで絵画でも成立しそうな物語の奥行きを感じさせますが、その工程だけでいうとマリコが生前に行きたいと言っていた田舎の港町の海に行って帰ってくるだけであり、途中でひったくり犯や不審者に出くわすもののそれが主人公や物語に劇的な変化をもたらすということはありません。あくまで主人公シイノが親友マリコの死を受け止めて彼女への気持ちにどうにか折り合いをつけるまでの心の物語となっています。
そんな本作の中でまずもって僕が強烈に一本筋の通ったものを感じたのが主人公の男前ぶりです。中高の自分よりタバコを嗜み、化粧っ気が希薄で衣装も公私ともにフェミニンさを避けたスタイル。スマホは画面にヒビが入っていても気にせず使い、ビジネス以外の言葉遣いはぶっきらぼう。ラーメン・餃子・ビールとオジサン好みな食生活に、町中華や田舎の居酒屋に臆せず入り浸り、挙句の果てには野宿も気にしない・・・。
素材からして紛う事無き美人なのですが、それを利用したり謳歌しようという気概は感じられず、むしろそうしたアドバンテージを忌み嫌って放棄しているフシすらあります。
とどのつまり向上心ひいては"欲"が感じられず、しかし一方で執着や憐憫が無いゆえに淡々とノルマをこなすように日々を生きるだけの胆力は持ち合わせており、それは弱い者が強い者に媚び諂うブラック企業の中で上司にも同僚にも一切臆せず共感もしない姿からも明らかです。
そしてそんな体裁を一切気にしないロボットのように生きる主人公にとっての唯一の例外的存在であり、喜怒哀楽の貴重な対象が親友であるマリコ、ということになります。
主人公を人間たらしめていた、言い換えれば血の通った人間として生きさせていたマリコの死から物語が始まる、主人公の人間性が失われたところから主人子が人間的に慌てふためく、というところがなんとも強烈なところです。
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その際に彼女の父親との揉み合いを見越して持参するのは包丁ではなくなんとドス…。
そんなものを自宅に常備していたのが驚きですが、マリコの生前から彼女の庇護者たる覚悟として保持していたのかも。いずれにしても男前すぎる。(´・ω・`)
亡くなったマリコの死因は飛び降り自殺。アパートでの一人暮らしだったようですがどうやら家賃は滞納状態だったようです。薄給生活だったのかもしれませんが、父親から金を無心されていたのかも。
シイノとマリコが"親友"であったことは間違いないようですが、出会ってからこれまで、かなりの紆余曲折を経てきたであろうことが作中の折に触れての回想で明らかになってきます。
シイノが現在26歳で、二人の出会いが高校ということなので、およそ10年来の付き合い。学生時代から「Cちゃんと今すぐにでも一緒に住みたい!」と言われて不動産屋の物件情報を二人で眺めたりしていましたが、結局二人で住むことは無かったのか、それとも一度は二人で生活したもののシイノがそれを解消してしまったのか、そこは定かではありません。
シイノが少なからずマリコを疎ましく思っていたであろうことは間違いないでしょう。高校時代に自傷行為を見せられながら「Cちゃんが私から遠ざかったら私死ぬよ」と脅迫紛いのことを言われていますし、父親に肉体的そして性的にも虐待を受ける彼女を救えなかった自分の無力を会う度に突きつけられます。
また、マリコが独り立ちしてからも彼女は今度は彼氏の暴力に悩まされることになってしまい、必死で助けつつも時に自ら不幸を呼び込んでしまう彼女の言動に悲しみと同時に憤りも禁じえなかったであろうことは想像に難くありません。
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「"アンタが悪いんだ"って言って……でないとこんな目に遭うのおかしいよ。」
とは謂れなき有象無象の暴力に晒されてきた被害者の偽りのない本音としてゾッとしました。
高校時代からの親友であるマリコを大切に思いつつも"このままでは彼女も自分もダメになる"と距離を置こうとして完全には離れられなかったのがシイノの心の葛藤そのものでしょうし、マリコも自分のシイノへのどうしようもない依存心を解っていたからこそ父親からの虐待の過去を乗り越えて彼氏を作ってなんとかシイノと対等の一人の真人間になりたかったのではないかと思います。
しかしながら今度はシイノからマリコへの愛が問題です。シイノには過去にも現在にも男性の影が無く、また非常に男性的な言動からしておそらくは同性愛的な面もあるのではないかと思いましたが、かといってマリコの強烈な依存心を生涯を掛けて一手に引き受ける覚悟はそうそう付けられるはずも無く、一方でマリコからシイノへの思いは同性愛的なニュアンスは希薄なため、結局深くは踏み込めなかったのではないのかと。
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との言葉は額面通りの彼女の都合の良さへの批難であると同時に、
嫉妬心の裏にある彼女への愛の告白でもあったのではないでしょうか。
お互いがお互いのためを思って紡いだ距離感が真綿で首を締めるようにゆっくりゆっくり二人を追い詰めてしまったような気がしてならず、不憫でなりません。
そしてマリコの遺骨を抱いて旅に出るシイノですが、行き先の「まりがおか岬」の在る港町で寡黙な青年マキオに出会います。
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ひったくりにカバンを盗まれたシイノを発見し、宿代を恵んであげる。
結局居酒屋で吞むのに使っちゃって港の船で野宿してたけど…。
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彼も以前、その岬に飛び込んで自殺未遂したことが判明する。
理由については語られなかったが果たして。
マリコの時と違い、暴漢に襲われる女子高生を救うことができ、
マリコと同じように、その女子高生はシイノへ助けてくれたことへの感謝の手紙をくれました。
マリコが行きたいと願っていた海へ彼女を連れて行き、その遺骨と一緒に身を投げようとしたシイノでしたが、過去に同じように命を絶とうとしたマキオに救われ、見ず知らずの女の子の命と操を救うことができました。
非常に簡潔ですが、だからこそシイノに生きようと翻意させるには十分な出来事だったのではないかと思います。
そして物語のラスト、自宅に戻ってきたシイノはマリコから彼女への最後の手紙を受け取ります。マリコの父の現在の交際相手の女性が、遺骨を奪取までしたシイノのマリコへの思いの強さを慮って届けてくれたのでした。
その手紙の内容は具体的には明かされないままエンドロールへと移行しますが、それを読んではにかんだような笑みを見せるシイノの様子からしておそらくは、
「私は死ぬのではなく生まれ変わるのです。
いつか生まれるであろうCちゃんの子どもに。」
というような内容だったのだろうと思います。
しかしながら実際はどうだったのだろうかと考えると・・・
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ひょっとすると彼女は、その彼との子を身籠ったのかもしれません。
そして彼が一緒になってくれたとしても、彼に強烈に依存してしまうこと、そして何より、
自分が母親になること自分も父や母と同じように我が子を虐待してしまうのではないかということを恐れ、自ら命を絶ってしまったのかもしれません。
そうしたマリコの悲痛な決意までも読み取ったとすると、なんとも居た堪れないです。
登場人物が極端に少ない本作ですが、とりわけ主人公シイノの親類縁者が一切出て来ないことが気になります。既に他界されているのか、それとも彼女も親から不遇な扱いを受けて縁を切られているのかあるいは自ら切ったのか…。
シイノがその後、家族を持つにせよ一人を貫くにせよ、月並みな言葉ではありますがやはり、マリコの分も強く気高く生きてほしいと思います。
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原作者にとり、食べる=生きることそのもの、という描き方だったのかもしれません。
Ⅱ. 演者について一言二言
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自分の観る作品ではあまりお目に掛かれないことがしばしばでしたが、
本作でのいろんな意味で男勝りな役どころはかなりの好印象でした!
強烈な啖呵の切り方はやはり数年前のバカリズムさん脚本の
『地獄の花園』に由来するところでしょうか。
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演じるマキオは出演時間こそ少なく強烈な自己主張も無く、
主人公とは対照的なキャラクターでしたがなんとも優しく印象的でした。
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主役の永野さんより実年齢は4つも年上なのにとてもそうは見えなかったのは流石というべきか。
悲惨な成育環境ゆえに大人になっても不幸を呼び込んでしまうリアルなキャラクターが
なんともいじましく、見ていてしんどくもありました。
主人公が複雑な愛情を抱いたのもかくや、というところです。
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主演の蒼井優さんの出世作のロードムービー。
"人間関係に距離を置こうとしている"という点では本作と共通しているかも。
Ⅲ. おしまいに
というわけで今回は最新映画『マイ・ブロークン・マリコ』について書きました。
85分という短さとは思えない満足感で、物語の削ぎ落しによる妙味を強く感じさせられます。おそらくは観る年齢によって色々と違う発見があるだろうなと考えさせられる、一種独特の空気感です。
これを機に同監督の他の作品も観てみようと思いましたが、もしおススメございましたらコメントでご教示いただければ恐悦至極にございます。
今回はこのへんにて。
それでは・・・・・・どうぞよしなに。
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