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【名作迷作ザックザク⑲】吹き抜ける90年代の風を感じると高圧的なアニキへの愛憎が懐かしい貴方へ... 承認欲求をこじらせて背伸びしたあの日の僕が確かに居る『mid90s ミッドナインティーズ』(2018)

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。( *¯ ꒳¯*)
 本日からディズニープラスでプレデターシリーズ最新作の『プレデター ザ・プレイ』が配信開始ですが、数あるプレデター作品の中でも評価が低くて無かったことにされがちな『プレデター2』もアリだった、O次郎です。

主演は『リーサル・ウェポン』シリーズで一躍人気となったダニー・グローヴァー
他のシリーズ作品ではプレデターと相対するのは軍人や傭兵ばかりなのに対し、
専守防衛が旨の警官の立場で立ち向かったというのがなんともユニーク。
大都会L.A.のプレデターも意外と絵になるよ。
192㎝の偉丈夫には大口径のデザートイーグルはピッタリだが
如何せんレーザーサイト付きなのがオモチャっぽかった…。
ゲームの『バイオハザード RE:2』でもカスタムするとこの装備になったが、
オリジナル版のバレル延ばすバージョンの方がカッコよかったな。(・ω・)

 今日はハリウッドの青春映画『mid90s ミッドナインティーズ』(2018)です。いまだに各映画サイトで根強くトレンド入りしているのでチョイスいたしました次第です。
 内容を一言で言うと、"中学生の男の子が背伸びして粋がってみた90年代の一夏の思い出"です。特段強烈なテーマがあるわけではなく、主人公が大きく成長するワケでもなく、あの時代に"押さえつけられている"と感じる少年だった人たちの郷愁を誘うための作品、ということだと思います。
 青春映画は嫌いじゃないものの、先月公開されてから巷で大絶賛されている『リコリス・ピザ』の70年代感には生まれていなかったりジャストミートじゃなかったりで上手く乗れなかった方々(わたくしもまさにそう…)、読んでいっていただければ之幸いでございます。 
 それでは・・・・・・・・・・・・・・・プレデターキラー!!

ザ・プレデター』(2018)のラストより。
キングボンビー退治するためのメカキングボンビーみたいなもんよね。
これの続篇も作ってほしいんだけど、今回の『~ザ・プレイ』は1700年代初頭に遡るそうで。



Ⅰ. 作品概要と心ニクいシーンのあれこれ

 調べてみると本国公開が2018年10月に対して日本公開が2020年9月なのでハリウッド映画にしては珍しくというか丸二年近くタイムラグがあります。自粛の影響も有るかもしれませんが、製作陣やキャストがビッグネームに乏しいため、配給元が決まらなかったのかもしれません。
 
 で、内容ですが、いきなり主人公の少年が体格の良い兄に自宅で押し倒されて折檻されている場面から始まります。いささか物騒なシーンですが、この冒頭からしてもうこの少年=自分だと強烈に刷り込まれました…。
 僕は5つ上の兄と4つ上の姉がいる末っ子育ちですが、幼少期はまさにこんなシーンがしょっちゅうでした。態度が気に入らない、軽口に言い返したのが生意気だ、お前の所為で誰それから怒られた等々…何かにつけてよく引っ叩かれたものです。本作の兄弟のように確固とした体格差ではなかったですが、それでも長年刷り込まれた力関係で「オイ!!」と兄に呼ばれるとビクついたわけで。
 今思えば、その兄は厳格な父から度々折檻されており、その鬱積からして力の弱く立場の低い私に当たっていたのだと理解は出来ますが、いまにして"八つ当たり"というものにアレルギーに似た忌避感が染みついているのでなんだかな~とは思います。大仰な文面にはなってしまいましたが、父を嫌う兄の性格が実は父にソックリだったり、真ん中の姉は要領良く家族内のパワーバランスから逃れていたり、どこの家庭でも見られる程度の歪でしょうし、だからこそ本作が多くの人の胸に響いた由縁かと思います。

これも自分の幼少期にもよくあった休日の風景。
スーファミの『ストⅡ』や『ガロスぺ』で延々対戦して殆どは兄が勝つんだけど、
たま~に自分が勝っちゃうとムキになった兄が「もう一回だ!!」と、
同じキャラの組み合わせで兄が勝つまでやらされる始末。
かといっていわゆる"接待ゲーム"的に手を抜くとそれはそれで
「マジメにやれ!!」と怒鳴られる…っていうね。(廿_廿)

 そしてまた一方で、兄に認められたい、喜んでほしいと思ってしまうのもまたどうしようもなくリアリティー。
 本作では他にも、兄が自身の不在時について「絶対俺の部屋に入るな!!」と釘を刺すもののコッソリ侵入し、そこで兄のCDラックの中身を確認しつつ、後日兄が持っていなかったCDをプレゼントする描写が有りますが、これなんかはまさに上の兄弟に愛憎相半ばする末っ子心理そのものでこれまたグッと来ました。

かくいう自分も兄の泊りがけ不在時なんかには兄の部屋に忍び込んで漫画読んだりしてましたが、
たしか兄が中学生の頃の夏休みにボーイスカウトの行事で一週間ほど不在にすることがあり、
それならと彼のコレクションの中から小説にもチャレンジしようと読んでしまったのがコレ。
さすがに小学生にはしんどい内容というか、兄の人間性疑うぐらいだったもんなぁ…。

 その後、主人公は不意に入ったスケボー店で出会った不良少年たちと交友を深めることになるわけですが、この"家庭では年少ゆえに何かと小馬鹿にされるので、家族以外の年長と交友を持って粋がりたい"という少年心理も非常にシンパシーを感じるところです。

グループ内の元々の最年少の子とポジション争いになるのもスゲーよく分かる。

 一方で親から教わった元々の良識が有るので、門限にビクついたり服に付いたタバコの匂いに偽装工作したり、粋がりきれないのも泣かせるところで。・・・自分はせいぜい学校で禁止されてたゲーセンを覗くぐらいが関の山でしたが。

必至に近づくんだけど、内心で仲間になりきれないのもどこかで解ってる、というか。
仲間内でも裏で秘かに互いを軽蔑し合っていることを知ってショックを受けたり。

 そして、自分の煩悶を理解してくれない、友だちを悪く言う母親に憤る主人公に対して「他のヤツはもっと酷い状況だぞ」と年長のレイが優しく諭すシーンも秀逸です。複雑な家庭環境や依存症を抱える彼らですが、そうした過酷な状況とは本質的に無縁な主人公はグループにとっては"珍客"にすぎず、また双方にとって"珍客"であるべき、といういわば線引きの釘を刺しているようでもあります

成育環境が決定的に違う人間同士はつかの間の親交は得られても、
いつかは袂を分かつ時が来るもので。

 終盤の自動車事故はまさしくそうしたお別れの潮時の契機とも取れ、最後に主人公の病室にグループ揃って顔を合わせてはいますが、いつまでその親交が続くか、誰がどのタイミングでどういう事情で抜けていくかわかりません。
 メンバーの一人のフォース・グレードは本能的にそれが解っているからこそ普段から仲間たちをホームビデオで撮り続け、やがて離れゆく関係であっても確かに何がしかの価値が有ったのだと示そうとしたのだと感じます。

この構図が作中二回有りますが、なんとも来るべき"夏の終わり"の寂しさを去来させます…。
"な~つが過~ぎ~ か~ぜ~あ~ざみ~♪"



Ⅱ. 監督だったりキャストだったり

・監督 - ジョナ=ヒル

ウルフ・オブ・ウォールストリート』では主人公とともに
投資の狂熱に浮かれながらも最終的には狂い切れない小市民ぶりにシンパシー。

 コメディ俳優として順調にキャリアを重ねながらも近年は重厚な作品にも出演して演技の幅を広げつつ本作で満を持しての監督へ、ということのようです。
 本作でもクスッと来るシーンは有るには有りますが、全体としてはかなり繊細で時にシニカルといった心を抉るような印象が目立ち、根底に怒りとイメージからの脱却の意志が顕れているようです。

そこで個人的に思い出してしまうのが佐藤二朗さん
自身の監督作『はるヲうるひと』に纏わるエピソードとして
出資を募る際に"コメディーだったら乗ったのに"と、自身の俳優としてのイメージと
自分が撮りたいものとのギャップで悔しい思いをした
と仰っていましたが、
ジョナ=ヒル監督にも似たような苦労が有ったのかも、と思いを馳せました。


・イアン(兄)役 - ルーカス=ヘッジズ

個人的に白眉だったのは『ある少年の告白』(2018)。
自身の同性愛を告白したことで敬虔な牧師の父や母と衝突し深く苦しむ主人公の姿が辛い。

 キャストの中で唯一のビッグネーム。
 作中での出番は少ないながらも、片親家庭の長男として屈折したプライドを拗らせるその姿は強い印象を残し、個人的な兄への愛憎を大いに惹起してくれました…。( ゚ω゚)
 薬物依存に苦しむ『ベン・イズ・バック』での演技も記憶に新しいですが、ナイーブな役柄が本当に様になる俳優さんだと思います。



Ⅲ. おしまいに

 今日はハリウッド青春映画『mid90s ミッドナインティーズ』(2018)について語ってみました。
 どの世代の人にも何かしらをそれぞれの形で残す映画も良いのですが、本作のような濃厚な同世代感・追体験をさせてくれるシンパシー作品もやはり捨てがたくまさに年齢的にジャストミートだった自分にはピッタリな映画でした。
 私と同世代の方も、それから世代がズレていてイマイチ乗れなかった方も思うところございましたらコメントいただければ恐悦至極にございまする。

 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




「生ダラ」の闘牛企画、命懸け感が凄まじかったなぁ…


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