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【お茶師日記10】「肩書き」がないと…

2019年6月9日

一番茶終了

 工場は6月初めまで一番茶の番茶を製造して終了しました。私はお茶師としては2番茶までお休みです。しかし、幸い仕事がないわけではありません。社長から「今年はGAPを取るので手伝ってもらいたい」と言われていました。

 GAP(Good Agricultural Practice)とは、製品の安全性や環境や労働衛生に配慮した正しい生産管理方法を取り決め、認証を受けるものです。

事務仕事

 一番茶の最後の出勤日、夕方製茶がひと段落して事務室へ行くと、県の農林事務所の職員2人と社長が打ち合わせ中でした。社長は私を見て「交代!」(任せたという意味)、と荷造り場へ出て行ってしまいました。農林事務所の用件は2つ。1つはGAP取得について県の助成措置があるのでその申請の件、もう一つは雇用に関する国の助成制度についてでした。 
 とりあえず雇用の助成金の申請は、締め切りが間近で、いろいろな書類を揃え、申請書を提出しなければなりません。

 早速、翌日から家でパソコンに向かって雇用の助成金の申請書の作成にかかりました。まずはどんな制度なのか、要領、要綱を読んで理解し、申請のために必要な資料の作成を進めます。それと併せて必要な証明書をもらうため市の農業委員会と会社を行ったり来たり。つくづく役所というところは行くのに気が重いです。

肩書きがないと不審がられる

 最初に市の農業委員会事務局へ電話で問い合わせした時には「あなたはどちら様?」と聞かれました。私は会社の役員でも正式な社員でもないし、かといって行政書士でもないので、自分がなぜその書類の申請をしているのか説明が難しいのです。土地に関する証明なので相手からすれば「怪しい」と感じたのかもしれません。
 そこで、パソコンでそれらしく会社の名刺を作りました。役職はないので「製茶担当」としました。何の証明にもならない名刺ですが、これを持って窓口へ出かけて行きました。市の農業委員会事務局に知り合いはいないだろうなと思いましたが、幸い何代か前の市の農政の課長だった人が再雇用でそこにいて、私を覚えていて声を掛けてくれました。聞けば農業員会の事務局長は市の農林部長が兼務しているといいます。現部長は昔からの私の友達です。なんだ、早く言ってよ。 
 とはいえ、職員が特別な便宜を図ってくれるわけではなく、結局書類の修正を指示され、会社へ行ってハンコをもらい再提出して、翌日ようやく証明をもらうことができました。

再就職している人たち

 さらに法務局で登記簿の写しをもらい、商工会の発行する労災保険の証明書類をもらったりして申請書を整え、それを提出先である県の農業会議というところへ持って行きました。こちらの事務局には知り合いがたくさん。早速つかまって「今何をしているのか?」「何の用事できたのか?」と聞かれました。私から見れば、定年になったのに、いまだにネクタイ締めて(この時期は締めていませんけど)革靴履いて、フルタイムで一年中組織の論理で仕事しているあなた方が不思議ですけどね。

GAP認証の手続き

 さて、もう一方の「GAP」の認証取得についてです。我が社としては、会社単独ではなく工場に生葉を出荷してくれる生産者も含めて茶の栽培、収穫、加工について様々なルールを作り、協力を得て団体として取得する必要があります。5月末にJAで茶工場を集めた説明会がありました。すでに昨年GAPを取得している茶工場の生産者が講師を務めました。それによれば「GAPの取得のための書類作成は、自分が数か月かかりきりで作った。皆さんはコンサルタントにお願いした方がいいのでは」と、昨年作成した分厚いファイルを見せてくれました。ただし「コンサルタントにお願いすると100万円かかる」とも。
 そんなに大変なのでしょうか。それでも、そういう事務仕事は自分にもできるかもしれません。本当は机仕事より体を動かす仕事がしたくてここを手伝っているのですが、茶期以外に暇な私が役に立てるかもしれない、と「決意を新たに」?したのでした。


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