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つるとり【お茶師日記11】

2019年6月13日 

畑仕事

一番茶の工場勤務が終わって20日ほど、家で少しずつ事務仕事などをしていたが、副社長から「2番茶を刈る茶園の『つるとり』やってくれませんか」とメールが入った。
 「つるとり」とは茶株面のヤマイモのツルを除去することである。我が社は山間地にあるが、市街地に近い南部の丘陵地に茶園を借地して経営規模を拡大しつつある。そこに二番茶を摘採する茶園が3か所ある。
 茶園の中は、成園になってしまうと、地面をほぼ茶樹が覆ってしまうのであまり雑草は生えないが、いくつか厄介なものがある。その筆頭がヤマイモである。環境が適応しているのか、茶株の中から伸ばした茎がこの時期から茶株面に現れる。さらに二番茶後には多くなり、秋までほっておくと株面を覆ってしまう場合もある厄介な雑草である。
 ヤマイモのツルは、表面に出てきた部分を切っても、すぐにまた下から伸びてくる。根っこまで除去しなければならないため、手間がかかる。

出動!

 早速、薄手の長袖の作業着に肘までの腕カバーがついた軍手、帽子を身に着け、虫よけスプレーを持って現場へ向かった。暑いだろうな、蚊がいるだろうか、蜂がいたらいやだなあ。
 まずは家からものの10分で着く、市街地に近い茶園に向かった。畝間に入る。昨日の雨が乾いていないためズボンがびしょびしょだ。うっかり合羽のズボンを忘れてしまった。茶株面をみると、ところどころヤマイモのツルが這っている。ツルは細いが強靭なので、うまく引っ張ると根っこがそのまま抜ける。うまくいくと快感である。ただし茶株の内部で分枝に複雑に絡んでいるので、無理に力を入れると切れてしまうことも多い。茶株面に潜り込むように蔓を手繰って手を伸ばして根元を探り、なるべく下の方を持って引っ張る。スルっとうまく抜けると根元にむかごが付いていたり、小さな芋が付いてくる場合もある。これ、食べられないかなと思う。
 そんな作業なので一本処理するのに時間がかかる。また抜いたものは畑から除去したいのでビニール袋に収納していく。それも手間だ。

 午前中1時間半ほどかけて、たぶん2畝(せ)ほどある茶園の蔓を取り終わった。2畝(せ)とは200㎡(=2a)。10畝で1反(10a)。10反が1町(100a=1ha)。
 かつては茶園が2haもあれば専業で食べて行けた。だから「つるとり」もそれほど問題ではなかったのではないか。今は荒茶販売では5haでも厳しい。他の作業は機械化しても、これは手作業だからネックになるということではないか。
 午後からは別の茶園に行った。こちらはたぶん20aくらい。その半分を終えると夕方になったので本日の部終了。といっても朝から全く一人で作業しているので、休むのも終わるのも自由だ。誰とも話さず誰にも指示されず、ひたすらツルを取る。

2日目

 翌日は昨日の残りを午前中で終え、午後は動物園の敷地に隣接している茶園に取りかかった。午後の早い時間に終わると思ったが、この茶園は非常に蔓が多く、時間がかかってしまった。動物園の場内アナウンスが聞こえて面白い。5時になって、ずいぶん腰も痛くなったので、残りは明日、と決め終了。

一人仕事は気楽

 2日間、梅雨時としては涼しく、蚊にも蜂にも合わずに作業ができた。茶株面にカマキリやテントウムシ、シャクトリムシ、バッタ、蜘蛛はたくさん見かけた。

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