見出し画像

2022年アート鑑賞まとめ

あっという間に年の瀬がやってきて(サンタの鈴の音はいつの間にか過ぎ去っていた)、一年を振り返るシーズンになった。今年見に行った美術展はそんなに多くなかったなと思いつつ数えてみたら、なんと昨年の2倍超えだった。意外と濃い一年だったのだなと思うと同時に、忘却の速さに震えを感じた。記録は大事。

まずは今年見た美術展を挙げてみる。瀬戸市や豊田市が多いのは、シンプルに近いから。

1月 愛知県陶磁美術館 「昭和レトロモダン~洋食器とデザイン画」
   料理旅館「喜楽亭」(愛知県豊田市) ホー・ツーニェン《旅館アポリア》
   長久手文化の家 「アンデゴハンダン」展
3月 愛知県美術館 「ミニマル/コンセプチュアル」展
    旧祖母懐小学校(愛知県瀬戸市) 「瀬戸現代美術展2022 プレエキシビジョン」
4月 豊田市美術館 コレクション展「サンセット/サンライズ」
5月 名都美術館 「上村松園と伊藤小坡 二人のハンサムウーマン」展
6月 名古屋市美術館 「布の庭に遊ぶ 庄司達」展
    愛知県美術館 「ミロ展――日本を夢見て」
    旧山繁商店(愛知県瀬戸市) 高北幸矢インスタレーション✕旧山繁商店「落花、瀬戸千年。」
7月 豊田市美術館 「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」
8月 京都中央信用金庫 旧厚生センター 「ブライアン・イーノ・アンビエント・キョウト」
9月  瀬戸市新世紀工芸館 企画展 「73中田ナオト 松藤孝一」*
   愛知県陶磁美術館 「ホモ・ファーベルの断片 ―人とものづくりの未来―」
   菱野団地(愛知県瀬戸市) 「瀬戸現代美術展2022」
   国際芸術祭あいち2022 (愛知県美術館、有松会場、一宮会場、常滑会場)
10月 滋賀県立陶芸の森 陶芸館 「静中動:韓国のスピリットをたどる」*
11月 豊田市美術館 ゲルハルト・リヒター展
   みなとまちポットラックビル「パンク! 日常生活の革命 名古屋」*
合計 19件(*は記事にしていない展覧会)

一番大掛かりで気になっていたのが、やはり「国際芸術祭あいち」。「あいちトリエンナーレ」が名前を変えただけではあるが、今回は良い意味で世間を騒がせることもなく、地道に現代の先端をいく作品や作家を紹介していた。残念なのが、すべての作品をじっくり見て回る余裕がなかったこと。郊外会場はどこも一日がかりでないと見られない距離とボリュームなので、時間も体力もいる。

期待値がいちばん高かった「瀬戸現代美術展2022」は、場所との共鳴度がすばらしかった。ここ数年、使われなくなった施設を利用するタイプのインスタレーションが増えてきたが、空きスペースをただの展示用のハコとして扱うのではなく、その場所が担ってきた歴史や意味を取り込んだ作品でないと、コラボの意味がない。そういう意味でも、黒川紀章がデザインした菱野団地とうまくコラボした瀬戸市現代美術展は、「その場所でなければ意味がない」をうまく体現した展示だと感じた。

その他「刺さる」展示だったのが、ふたつ。
2019年のあいトリで見逃していた、ホー・ツーニェン《旅館アポリア》と、
瀬戸市内でも知る人ぞ知る旧山繁商店でのインスタレーション「落花、瀬戸千年。」
どちらもひとつの場所でひとつの作品、という贅沢なしつらえで、だからこそ一期一会的な感慨があった。

さらに、センス・オブ・ワンダーを感じさせてくれた展覧会もふたつ。ひとつは「布の庭に遊ぶ 庄司達」展。純粋に「見て感じる楽しさ」を味わえる良い展示だった。もうひとつは「ホモ・ファーベルの断片」。これは限界突破する陶芸作品が次々とあらわれて、センス・オブ・ワンダーどころかセンス・オブ・ヒャッハー!だった。

また、今年の動きで特筆するべきは、ただ見るだけでなく、人の話を聞きながら、あるいは話をしながら鑑賞する面白さにも目覚めたこと。
本来は、一人で静かに作品に向き合い、心のなかで対話しながら鑑賞するのが好きなのだが、昨年に『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』を読んで以来、語り合いながら見るのも楽しそうだなと思い始めた。自分の見たものを他人とシェアし、他人の視点を自分の中に取り込んで見る。結果、どんな変化が起きるのだろう? 好奇心がざわついた。

そんなわけで対話型鑑賞やギャラリートークが聞ける機会を探していたら、オンラインだったり、いつも通っている美術館で開催されていたりと、チャンスは意外とすぐそこに転がっていることがわかった。それまで目に入らなかっただけらしい。
いざ参加してみると、当たり外れがあるというか、正直なところ、メンバーと作品によって面白い回とまあまあな回がある。最高に楽しかったのは、1人の参加者に対して2名のガイドさんがついてくれた名古屋市美術館の鑑賞会。ガイドさんがうまく感想を引き出してくれるので、こちらも作品に対する思い入れをたっぷり語ることができて、自分でも驚いたし、新しい発見もたくさんあった。

きほど「当たり外れ」と安易に書いてしまったが、後から振り返ればどれも一期一会的な出会いで、長い目で見るとどの回も意味を持つのだろう。そして、来年はもう一歩踏み出す気満々で、すでに種はまいたところだ。


投げ銭絶賛受付中! サポート頂いた分は、各地の美術館への遠征費用として使わせていただきます。