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らせん2周目

コロナ禍の影響で中止になったり規模の縮小を強いられたりする展覧会がある中、逆に会期延長の恩恵を受ける展覧会もある。春先に出かけて感銘を受けた豊田市美術館「久門 剛史 − らせんの練習」展や「コレクション展 VISION Part 1 光について/光をともして」展ほか同時開催の展示がそれだ。最初の延長予定が6月22日まで。その後休館期間を経て、7月18日~9月22日まで再度延長するとのことで、思いがけず再び訪れることができた。夏休み(今年は短いのだが)を迎えた若い子たちが目にするチャンスが増えたとも言える。

「らせんの練習」の展示室に入ったとき、前回とは印象の違う部屋がいくつかあって不思議だった。こんなにシンプルな展示だったかと驚く一方で、以前はあまり気に留めなかった音響の展示にひっかかったり。今回は特に音と光のシンクロに気持ちを持っていかれた。また、時間の経過とともに様子の変わった展示もある。新しい発見が多くて、らせんのごとく、同じ場所に帰ってきたはずなのにいつの間にか一段高い場所に登っていたような気分だ。

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↑《Force》。鼓のような響きの音と泡粒のような電球の光は
きっちりとシンクロしてます

同時開催の「コレクション展 VISION Part 1 光について/光をともして」「電気の時代」は休館期間に一部展示品の入れ替えがあったという。そういえば「前回見たアレはどこへ?」と、ところどころで気になったが、一番大きな変化はオーディオガイドだった。以前は(どこの美術館でもあったように)専用のヘッドホン&再生機器のセットを有料で貸し出していたが、それがQRコードをスマホで読み取る方式になっていた。読み込んだ先は美術館のホームページ、オーディオガイドのコーナーで、そこに作品番号を入力すると音声ガイドが聞けるようになっている。スマホの扱いに慣れない高齢者にはつらいかもしれないが、無料だし自宅でも聞けるというのが嬉しい。

また、HPの展覧会情報には載っていないが、常設展示コーナーの小堀四郎の作品群が思いがけず良かった。コレクション展と連動し、光に関する作品を集めた展示がなされていたのだ。秋の夕暮れに輝く星、冬の早い日暮れ時に現れる星々、残照を受けて赤く輝く岩肌。ろうそくの光に浮かび上がる女性の姿と背後の闇。いずれも光の存在を強くわかりやすく意識させる。見事な構成だと思った。

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展示品の入れ替えといえば、隣接する高橋節郎館はすっかり内容が変わっていて驚いた。これまで見たことのない作品が8割。作品の配置もだいぶ変わっていて、衝立を展示していた場所に工芸作品が並んでいたり。休憩スペースも椅子の配置が変わっており、以前は長椅子が置いてあったところを、一人がけの椅子を間隔を開けて並べるスタイルへ。

本来なら次の展覧会に向けて準備をするはずであった休館期間を使い、コロナ対策を強化したり、展示品の入れ替えを行ったりしたのだろう。その工夫と努力には頭が下がる。実際、今後の展覧会については先行き不透明なようで、夏に催されるはずだった企画展は延期、続く秋の企画展タイトルには(仮)とついている。また年間パスポートは(恐らくいつ休館するかわからないので)当面の間、取り扱いがなくなる。コロナ禍は人災とも言われるが、天災とでも言うべきどうしようもない部分があるのも確かで、まだまだ厳しい時代だ。

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