一番初めは…というけれど
国際芸術祭あいちの郊外会場、有松の次は一宮を訪れた。ここは奈良美智や塩田千春など、大物作家による作品があるので、期待と緊張が入り混じっての訪問になった。
まず一宮がなぜ「一宮」と呼ばれるのかというと、
というわけで、一宮では「繊維の町」を意識した展示作品が多かったが、それだけではなく「STILL ALIVE」の本質に迫る作品もまた多く、収穫だった。
会場は旧一宮市立中央看護専門学校やオリナス一宮、市役所などが集まる真清田神社周辺部と、やや離れた尾西エリアに分かれており、今回は時間の都合で尾西エリアは残念ながらパス。それでもボリュームが多すぎて紹介しきれないほどである。
最初に立ち寄った一宮市役所では、いきなりこのエリアを象徴する作品と出会う。羊毛で作られた「樹」だ。これは作家一人の手によるものではなく、さまざまな人達との共同作品だという。
続いて、バリー・マッギーによるアートな公衆トイレ。都市部でよく見かけるスプレー缶による落書きとは違う。
旧名古屋銀行一宮支店である「オリナス一宮」では1階すべてを使って奈良美智の作品を展示。館内に大道具を使って展示スペースを作り、その中に各作品を置くやり方だが、2017年に豊田市美術館で開催された「for better or worse」展を踏襲した構成となっていて、懐かしかった。
商店街を抜けて昭和の香り漂う真清田神社の脇を通り、この日のメインとなる旧一宮市立中央看護専門学校へ。廃病院ではなく廃止された看護学校なのがポイント。「生命」や「生命力」にかかわる展示が多く、メインテーマである「STILL ALIVE」とうまく響き合っていたと思う。看護学校のすぐとなりには、老朽化のためやはり廃止されたスケート場があり、そこではアンネ・イムホフの映像作品《道化師》が上映されており、ライブ会場のようだった。
塩田千春《標本室》は、もうこれ以上ないくらい場所とテーマがマッチしている。赤い針金で彩られた臓器の禍々しく美しいこと。これだけでお腹いっぱい。
最後は、生まれてきたすべての生命を寿ぐようなこの作品で締めたい。
一宮は古くから繊維業で栄えた町で、大規模な七夕まつりは県内で有名。だけども、中心部の商店街は昭和の雰囲気を残したまま、シャッターを下ろしたままの店が多い。今回の展示会場となった旧看護学校や旧スケート場も市の中心部にありながら閉鎖した施設だ。使われなくなった施設をアート作品の展示会場として再生するのは良いが、その後が気になる。作品が去った後はどうなるのだろう。物理的な建物がなくなったとしても、何か後に残るものがあることを願う。
投げ銭絶賛受付中! サポート頂いた分は、各地の美術館への遠征費用として使わせていただきます。