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だからそれはクリープハイプ

出会ったのは、2017年4月16日。
某音楽番組に尾崎さんがゲストで出演していた。

〝クリープハイプ〟も〝尾崎世界観〟も、その日初めて認識した私が抱いた第一印象は「尾崎世界観って顔可愛いな」だった。(昨今なら顔ファンだのなんだの言われそうだ)
嫌なことがあったときにSNSで自分と同じような人を検索して探す、というような話もしていて「私と同じことしてる人っているんだ……」とも思った。
その番組は最後に楽曲をセッションする。そこで歌われていたのは、クリープハイプの『寝癖』。そこで一瞬にして尾崎さんの歌声に惚れた。

バンドを勧めるのに、そりゃないぜという文言


当時の私は中学2年生で、はっきり言ってクリープハイプの歌詞が刺さる人生のアレやソレは無いに等しかった。今考えれば人生で嫌なこと、悩むことなんて、体育のマラソンや定期テスト、親に怒られることくらいだ。
ただ、国語が好きだった。だから尾崎世界観にしか書けないような言葉遊びや、日本語の秀逸な使い方にワクワクして曲を聴いていた。



高校生の私は何度クリープハイプに救われただろうか。やはり高校生になると物事への感じ方も変わるし、色んなことを経験する。私の影響でクリープハイプを好きになったあの人は、まだ好きでいるだろうか。歌詞が刺さりに刺さってしまいしばらくクリープハイプを意図的に聴かなかったのは、あの人と別れたときが最初で最後だろう。ある日お風呂に入りながらなんとなく『手と手』を口ずさんで泣いてみたら、どん底まで落ち込んでいる自分がなんだか面白おかしくなってきて前を向けた。

正直、高校は大嫌いだった。学校の駐輪場から教室へ向かうまでの時間は必ずイヤホンで耳を塞いだ。もちろんイヤホンからはクリープハイプが流れていて、大丈夫だと思えるおまじないのようだった。
ペンケースには『』の歌詞蒔絵シールを入れていた。安心できるお守りのようだった。

〝クリープハイプの日 2021(仮)〟の頃はまだオンライン授業と対面授業を交互に行っている時期だったということを書きながら思い出す。9月8日は対面授業の日で、ノートの端に歌詞を書いたり、意味もなく「クリープハイプ」なんて書いたりして、いつもなら憂鬱な時間のはずが幸せな時間だった。
何度行っても、もちろん今でも、クリープハイプのライブに行けるというだけで浮かれてしまう自分が恥ずかしい。

何より深く記憶に残っているのは2021年の10月から11月。
とにかく辛かった。詳細は省くけどとにかく辛くて、きれいさっぱり消えてしまいたかった。毎晩『風にふかれて』を聴いては大泣きしていた。本当に限界だったし、どうかしていた。クリープハイプのおかげで首の皮一枚繋がっていたから、出会えていなかったらと考えると恐ろしい。
その後入院することになるのだが、入院中配信リリースされたのが『ナイトオンザプラネット』だ。体調も良くなってきた頃で、入院前ぶりにクリープハイプの曲を聴いた。涙が止まらなかった。なんで泣いているのか分からなかったけど、泣き続けた。同時に、尾崎さんの声とクリープハイプの音に無性に安心した。この1週間ほど前に、ホールツアーも決まっていた。生きなきゃなと自然に感じていたと思う。
このときのことを鮮明に覚えている。病室の空気とか廊下で看護師さんが忙しなく動いているあの感じとか、そんなところまで鮮明に思い出せる。あの日の感情は、なんだかすごく愛おしい。

ホールツアーの最後の曲が『風にふかれて』だったことは絶対に忘れない。自分の中でとてつもなく大きく意味のある出来事だった。


 



尾崎さんはよく、クリープハイプを好きだと言いにくいでしょと言うけれど私は全くそんなことない。クリープハイプを揶揄する人間なんてこっちから願い下げだ。好きでいられて誇らしいし、そう思わせてくれる4人には感謝してもしきれない。

クリープハイプは、自分がひとりで生きていくために必要だと思っている。同じ温度で、付かず離れずそこにいてくれる。ライブの日に降る雨や曇天に安心するなんて変な話だけど、実際なんだか安心してしまう。こんな温度感が好きだ。
そして、クリープハイプの曲は自分を認めてくれるものだと思っている。曲を聴いて感じるものがそのときによって変わってくる。ずっと好きな歌詞でも、鋭く刺さってくるような日があるのが不思議だ。それは確実に毎日を生きている証拠だと思っているし、自分で自分を認めるのは難しいけれどこうしてクリープハイプの曲が教えてくれている。

わざわざ言語化するのが恥ずかしい。そう感じるくらい当たり前にそこにいてくれている毎日が、1秒でも長く続いてほしい。





本当なら、ひとつひとつの楽曲に思い入れがあるしライブの思い出だってたくさんある。こんなもんじゃない。でも、あえて書かない多くの空白の部分にこそ存在感があるでしょう。


眠れず朝を迎えようとする布団の中から、愛を込めて。



#だからそれはクリープハイプ

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