化学実験教材の紹介〜デュマ法を用いた活動〜

理科教育 Advent Calendar 2019でお誘いを受けましたので、拙筆で申し訳ございませんが簡単に記事を書かせていただきます。これを見て興味が湧いた方は、ぜひ他の方の記事もご覧になってください。様々な角度から理科教育が語られており、とても充実したものになっています。

私の記事は実験の紹介です。私は大学時代から教材内容学を専門(と言っても修士ですが)にしてきました。現在は高等学校で化学や生物を中心に教えています。

現在の勤務校は就職希望者が3~4割存在する、全日制普通科です。受験化学を必要とする生徒はほとんどいませんし、理系を志す生徒もごく少数です。しかしながら、私は実験を非常に重視しております。それは「理論の表面だけ知っていることと、本当に見て・感じて・分かったという活きた知識は全く別物」ということを実感してほしいからです。なので、できるだけ多く、かつ実のある(と自分で勝手に思っている)実験を計画しています。

その活動の一端として、高校化学の定番実験である”デュマ法”の活動例を紹介します。高校化学を勉強した方なら、超がつくほどのド定番ですが、正確な数値を出そうと思うと結構難しいです。
実は、この実験をしようと思ったきっかけはTwitterのアンケートでした。また、Twitterで様々なアドバイスも頂きました。提案を頂けた方々、ありがとうございました。

活動① デュマのプロフ紹介

デュマは今から200年くらい前に活躍した化学者で、分子量(当時でいうところの気体の密度)の測定法を編み出したりしていました。このような化学者の紹介をできるだけ行います。当時の化学とはどのようなものだったか、なぜその研究が進められていたのか、その研究の着眼点は何か、などを時には教え、時には生徒たちが考え、化学(科学)の脈を感じます。

活動② 実験方法の考案と課題解決

デュマ法は初見ではありません。計算の練習もしました。でもここで再度図を描き、何を測定するかを考えてもらいます。それは前述した「理論の表面だけ知っていることと、本当に見て・感じて・分かったという活きた知識は全く別物」というところにつながっています。図や方法を覚えるのではなく、~のために、~をするということを明確にします。これはとても面白くて、考えていくうちに「実際、どうやって測定すんの?」って話になります。それを(できるだけ)生徒同士のやり取りから考えてもらいます。意外に化学が苦手な生徒でも、テストや計算が得意な生徒より早く、測定方法を提案できる場合もあります。それがまた下剋上っぽくて好きです笑

また、最終の目的は先生も分からないもの(本当は分かっていますが...)を調べて、先生を助けるというストーリーで行います。小さな仕掛けですが、これが生徒たちにとって燃えたようで、我々を助けるために一生懸命取り組んでいました。

活動③ 実験

実験では、実際に計画したことを遂行していきます。この時、アルミの蓋の質量も測定することを忘れないようにあしましょう。初めは、教員が手伝ったりもしますが、徐々に手伝う頻度を減らし、2回目の測定は完全に各自でするように見守ります。手伝いながら、試料をフラスコに入れた後、質量は量るか?等、簡単なやり取りもしながら、生徒たちの理解を深めていきます。(試料をフラスコに入れた直後は、もちろん測定不要です^^)

中の試料が湯で沸騰したり、気体になって見えなくなったり、冷却時に再度凝結したりと、見ても楽しい実験です。実験のポイントをいくつか挙げておきます。もし、実際にされる方がいましたらぜひ参考にしてください。

○試料はそこそこ分子量が大きくて、かつ比較的無害なものとして酢酸エチルがまぁまぁ良い値が出ました(分子量86~90くらい)。他に準備した資料はメタノール、エタノール、アセトンです。昔は四塩化炭素等が用いられていたそうですね...笑

○ご存知の方も多いと思いますが、質量の測定ミスが一番結果に響きます。なので、蓋もちゃんと測定したか?試料が全て気体になるまで待てたか?冷却時にしっかり水分をとったか?などが、操作上の粗として出やすいですのでお気を付けください。

○準備時には真っ先に湯を用意しましょう。結構な量の湯を使うので、初めからバーナーで加熱だと、結構時間がかかります。

活動④ 結果と考察

得られたデータから分子量を出すのは各班にお任せです。電卓、スマホ当然OK!スマホは気圧も測定できるので使用推奨です。各班(全6班)で2回測定しました。なので、全ての班を合わせて12回測定します。ですので、試料を4種類用意して、各班完全に重複しない様に測定します。(4×3=12通り)同じ試料を測定する班が3班できますので、この3班でデータをにらめっこ。意見交換をして、1つの値を提出します。この時に、データの正確性等を考えて、生徒たちがどのデータを用いたらよいかも全て生徒に決めてもらいます。

ここでも面白かったのが、1つの班だけなぜか質量の値を有効数字1桁で計算していました(1gで計算)。各班のデータを突き合わせて、この実験では超絶NGなことをしているということに気付けたようでした。こうやって、重要なポイントを体感しながら理解していくんだなぁと私自身も実感できました。

実際は、酢酸エチルが、アセトンが、メタノールでうまく測定できていました。エタノールだけ、値がうまいことハマりませんでした。なぜでしょうか...単に下手だったのか...。しかし、試料のうちどれがどれかは全て正しくサジェストしてくれました。生徒が情報交換している姿は本当にアツくて、知への欲求を爆発させていたような、そんな風にも見えました。最後は、振り返りと、測定法のポイントを再度共有して終了です。このあたりの測定法のミソの部分や、あるあるミスなどは実際に触れてみないと分からないと思います。(ので、触れてもらって私は満足でした笑)

以上がこの間行った活動の紹介です。定番実験ですが、実物に触れる大切さが実感できた授業となりました。百見は一触にしかず!

ここまで読んでいただきありがとうございます。この他にも、様々な実験をやってみようと思っています。また、チャレンジした実験はTwitter @nachu_scienceにも紹介していますので、もしよろしければ覗いてみてください^^(理科や教務のことについて書いてあることが多いです)

この後も理科教育 Advent Calendar 2019では様々な方の記事があると思います。ぜひ、見ていただいて理科教育について思いを馳せてください。

今日は今から忘年会です。最後に走り書きになってしましましたが、お誘いいただきありがとうございました。

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