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NAGAの本が面白かったので感想を書きます

はじめに

2024年4月某日、イモタレ、天鳳六段に降段。

鳳凰卓は506戦打ったみたいでした

鳳凰民のT●m●さんは言いました。

登山ガイド、買うしかない!ということで、たま子さん著の「人工知能は人間を超える―― 麻雀AI「NAGA」の鉄戦術」を購入したのですが、とても面白かったので、感想を書いてみようと思います。
※この本のことは、以下「本」とか「NAGA本」と呼ぶことにします。


イモタレの麻雀レベル

まず参考に、私の麻雀のレベルを書いておきます。

  • 麻雀が好きな一般のOL。麻雀を覚えて7-8年くらい。意外と経ってるなあ。

  • 天鳳歴4年半。1,900戦ほど打っていて現在は六段。安定段位は五段。(のどっち調べ)

  • たまに牌効率を間違える。基本はできてるっぽいけど、自分で振り返って気づくレベルの間違いも多々あり。

  • 数字が苦手。何点ツモったら何点入れ替わるかを頑張って考えてる。(覚えましょう。)

  • 本を読むのが苦手。読了した麻雀本はアサピンさんの「麻雀の失敗学」一冊のみ。

苦手なこともまあまあ多いのですが、分類するなら、おそらく中級者くらいにあたります。

NAGA本、おもろい

上記の通り、私は本を読むのが苦手で、麻雀の戦術本も数ページで挫折してしまうことがほとんどなのですが、NAGA本は数時間で読み終えることができました。
私がNAGA本を良いなと思った理由は大きく分けて3つあります。

  1. 人間ではないAI・NAGAの選択を知ることができるところ

  2. NAGAの選択について、人間目線で局面をピックアップした上で、体系的にまとめられているところ

  3. NAGAがなぜその選択をしたのか?という理由を、複数パターンを検証した上で結論づけているところ

AI・NAGAの選択を知る!

「AIってこう考えるんだ!」という発見があってシンプルにおもろい!というのが本全体に対する感想です。

著者のたま子さん自身も「意外だった」と書いている所が何か所かありましたが、NAGAの選択の中には、いわゆる現代麻雀のセオリーに反する?ものも一部あるようです。
現代麻雀で成果を上げた人たちを参考にしてるはずなのに、興味深いな~と思います。

というわけで、戦術本としては中級者向けだと思いますが、麻雀が好きであれば、麻雀AIに少しでも興味があれば、初級者・上級者の方が読んでも面白いんじゃないかなと思います。
当たり前の知識も含まれるかもしれませんが、本の中で「正解が分かりにくいゲームであるからこそ、このような新たな示唆にも耳を傾ける姿勢も大切かもしれませんね」(p.108)と書かれているように、一定の成果を上げたAIの考えを垣間見るのも良いと思います。

中級者向け戦術本として

2.と3.については、麻雀の戦術本として良いなと思った部分です。
この本の中には、AIであるNAGAの選択をひとつの基準に置いて、中級者に必要な麻雀戦術のエッセンスが詰め込まれています。

中~上級者向けの麻雀の本といえば、「確率」をひとつの基準として正解を導き出しているようなイメージがあります。
私はアサピン本しか読んだことがありませんのであくまでイメージですが。
そういうのが得意な人や好きな人は良いのですが、冒頭にあるように私は数字も数学も得意ではありません。
高校時代の確率のテストは全ての問題で樹形図を書いて90点を取った記憶があります。
普段、数字や確率で語られてもピンとこない部分も多いです。麻雀は数字と確率のゲームなので元の子もないんですが・・・。

一方、NAGA本では、難しい確率の計算は出てきません。放銃率の話がたま~~~に出てくるくらいです。
これはNAGA自身が「なんとなく」の選択を積み重ねて一定の基準を設けているからです。「なんとなく」を突き詰めてあんなに勝ってるんだなあ。
今回は、この「なんとなく」の基準を掴むために、実践譜を元に色々なパターンを検証して、分かりやすく言語化してくれています。
確率の代わりに「このパターンはこういう選択」「でも、このパターンだとこうなる」「つまりNAGAはこう考えてる!(ドン!)」という具体例を元にした構成になっているので、数字が苦手でも比較的読みやすいんじゃないかと思います。

(ちなみに、私は有識者の人たちが言う「放銃率」っていうのも正直よく分からないなと思っていたのですが、この本の中には放銃率の計算の仕方も書いてありました。大変ありがたいです。)

また、AIを基準にするというのは、確率までいかなくても、人間の主観や経験則ではない何かを基準に置いているということなので、なんだか信頼感があるなと思いました。

※語弊がないように追記すると、NAGA本の中で数字が軽んじられているわけではなく、むしろ「人間がNAGAの思考を読み取るためには数字言語を利用するしかない」と書かれています。
あくまで数字が苦手な私でも読みやすかったというだけで、当然ですが、麻雀において数字は大事です。

麻雀の振り返りって難しい

普段フリーを打っていると「あの場面、悩んだから検討したいけど、牌姿しか覚えてない・・・(牌姿もあやふや・・・)」ということも多いですが、天鳳を含めたネット麻雀では牌譜が残るので、実際の場面を振り返ることが出来ます。

いつでも自分が打った場面を完全再現できるのはネット麻雀の良いところ。
一方で、牌譜があったところで、麻雀の振り返りってすごく難しいなと感じます。

そんな中でNAGAはひとつの基準になり得ますが、NAGAを使いこなすのもコツが必要です。

私自身、NAGAを利用することがありますが、自分の牌譜を解析して、悩んだ部分を見返したとしても、点での振り返りになることが多いです。
「あの時これを切ったけど、難しかったな~。NAGAはどうするのかな?」と思って解析するのですが、「あ、NAGAはこの選択なんだ。へえ~!!」と思うだけで終わりがちです。あれ、もしかして私だけですかね?
とにかく私はそうなんですが、ただNAGAに解析してもらうだけではその場限りになってしまって、なかなか自分の麻雀に生かすところまで辿り着けません。(自戒です。)

また、麻雀はひとつの選択が結果に必ずしも直結するわけではないので、「たまたま」上手くいくことが稀によくあるし、
上手くいかなかったところや、自分が悩んだところ以外にも、実は損な選択や、検討すべき点がたくさんあると思っています。

そして、中級者に近づいて、知識が増えれば増えるほど、「的外れなことを考えてしまう」場面も増えやすいです。
本から一部引用します。

成績向上に重要なのは微差ではなく大差の徹底

p.8

うまぶり、やりすぎは勝てない上級者の第一歩です

p.69

耳が痛いですね。
自分のことを棚に上げて言いますが、これは「麻雀歴がある程度長い人あるある」だと色々な人を見て感じるし、一定のラインから更に雀力を伸ばす上で一番の足かせのように思えます。

・・・このように、自称中級者にとって、自分の麻雀の内容を振り返るのって結構大変だぞ・・・と思うのですが、NAGA本では「必要な場面で、必要な内容を、必要な粒度で」説明してくれています。とても分かりやすいです。

どんな場面を振り返るか?

NAGA本では、たくさんの局面が存在する中で、中級者から上級者に必要な要素をピックアップしてくれています。
自分で今までの牌譜をいくつもいくつも振り返らなくても、中級者が悩みそうで、なおかつ重要な場面が集まっています。ありがてえ。
著者のたま子さんは「天鳳月間三桁打数を43ヶ月」打ってるそうです。月100本を3年以上。途方もないです。

本全体は、「手組み」「仕掛け(鳴き判断)」「リーチ判断」「押し引き」の4つの章で構成されていて、各章の中で、いくつかのテーマに沿って話が進みます。
「仕掛け(鳴き判断)」の章であれば、「タンピンドラ1は鉄チー?リーチ受けのチーテン判断」「役牌ポン?スルーしてリーチ?微妙な手の鳴き判断」などのテーマがあります。

あ、これ確かに悩むよね~!という場面ごとに、NAGAだったらどうするのか、実践譜を元にして分析しています。

そこで何を考えるのか?

どこを振り返るのかも大事だけど、そこで何を考えるのかも超!大事です。

通常、NAGAが示してくれるのはあくまで「NAGAだったらどうするか?」という選択肢であり、「なぜその選択肢に至ったのか」という理由までは教えてくれません。
例えば、リーチ判断であれば「100%リーチしたい!」「60%リーチかな~」のように濃度を示すことで、おおまかな選択の優劣を参考にすることはできますが、
「なんでリーチなの?」という部分に関しては、結局「なんとなく」に留まってしまいます。「なんとなく」の蓄積なので当然ですが。

この本では、「なんとなく」の部分を体系化するために、テーマごとに複数のケースを取り上げて、NAGAが「どんな条件で、どんな選択をしてるのか」を解き明かしてくれています

例えば、「ホンイツ」がテーマであれば「役牌トイツなら?」「ドラドラなら?」「両面ターツがあったら?」のような条件で、NAGAがどれくらいホンイツを見るのか?のような感じです。

また、一部のテーマでは、「理科の対照実験」と同じ方法を用いています。
ひとつの局面に対して、少しずつ条件が異なる複数のパターンを検証することで「NAGAって何を基準にしてるの?」を探っています。

例えば、「愚形での追っかけリーチ判断」
「789の三色確定のカン8m聴牌」した場合に、
「先制の場合」「親リーを受けてたら」「子リーを受けてたら」「待ち枚数が4枚だったら」「待ち枚数が3枚以下だったら」「現物待ちだったら」・・・のような複数のパターンで、
それぞれNAGAの選択を検証することで、愚形追っかけの基準を探ろう!というような感じです。

NAGAを使ったことがある人は想像できると思いますが、これを1個1個検証するのは骨が折れる作業だと思います。本当にありがてえ。

天鳳を打たないあなた

NAGAは天鳳生まれ天鳳育ちのAIです。
天鳳をはじめとするネット麻雀は4着に対するペナルティが大きく、ラス回避が大事と言われますが、ネットだろうがリアルだろうが、どんなルールだろうが、四人麻雀の基本的な戦術は変わらないはずです。

特にこの本では、微差の選択ではなく大差の選択を取り上げているので、天鳳に限らずあらゆるフィールドで役立つ戦術本になっていると思います。

そこから学ぶことのできた本章の要素は、ネット麻雀・競技麻雀のフィールドを問わず、強者なら誰でも心がけている共通先述といえるでしょう。

p.39

「あるある!」ってなったテーマ

最後に、個人的に、特に良かったテーマをいくつかピックアップします。気になった人は本を買って読んでみてね。

バラバラの手でも諦めない!手役を「消去法」で見つけよう

ありますねえ~。愚形ターツ&孤立数牌&字&字&字&字&申し訳程度の両面ターツ・・・みたいな、え、何の方向性も見えなくない?オタ風切っていいの?役牌重ねるべきなの?なんなの????みたいな配牌。どうすんの?

タンピンドラ1は鉄チー?リーチ受けのチーテン判断

自分はタンピン形の両面両面のイーシャンテン、先制リーチを受けた時の押し引き。ふざけんなよ!

これもありますねえ~。自分の手のポテンシャル(メンタンピンドラ、出アガリ満貫から、ツモ裏で跳満や!)VSとはいえ、聴牌えらい説(リーチ相手にイーシャンテンの価値なし!)。毎回悩む。
私は今まで、特別な打点条件(マンツモ条件とか)がある状況を除いて、先制を受けたらほぼチーテンを取るようにしていましたが、NAGAは一体・・・。

役牌ポン?スルーしてリーチ?微妙な手の鳴き判断

役牌が対子の完全イーシャンテン。役牌ポンして聴牌を取るのか、スルーしてリーチを目指すのか。
リーチ打ちたいけど聴牌えらい。聴牌えらいけどリーチ打ちたい。うわあああ。

愚形リーのみは『3つの条件』をチェック 先制愚形リーのみ判断

形で打ってるとよくあるんだよな~。先制愚形リーのみ聴牌。変化もあんまり無いけど、愚形リーのみは悪みたいな風潮もあるし、何も考えたくないからリーチ!!!!でいいの?やっぱだめ?

対リーチ・イーシャンテン 高いけどノーテン、どこまで押せる?

仕掛けてイーシャンテン、どこまで戦う?

イーシャンテンの押し引きって超むずい。これくらい押そう・・・これくらい・・・で、『ロン』の恐怖に怯えながら押す感じ。
結果論で振り返るのは簡単だけど、どこで線引きすればいいかは未だによく分かんないんだよなあ。でも今日もとりあえず鳴いとこ・・・。

おわりに

本の感想を書くって難しいんだなと思いました。この量を書くだけで、結構時間が掛かりました。でも本当に良い本だと思ったので頑張って書きました。

冒頭に書いた通り、私は今月降段したことで「鳳凰卓」で打てなくなってしまったのですが、これが自分が思っていた以上に悔しくて、最近天鳳を打つ時間を増やしています。
実力不足なのは当然悔しいのですが、「鳳凰卓、楽しかったな~!」と思っているので、楽しい麻雀を打てる時間が減ってしまったことがとても悔しいです。

noteの中でも引用した通り、NAGA本は「成績向上に重要なのは微差ではなく大差の徹底」という観点で書かれています。
改めて自分の牌譜を振り返ると、この「大差の徹底」がまだまだ全然出来てない
私は数字に強いわけではないし記憶力が良いわけでもゲーム脳が優れているわけでもないですが、この「大差」といわれる部分を突き詰めることで、まだまだ麻雀強くなれるんだろうなあ、という感覚はあるので、NAGA本を参考にしつつ、たくさん打って振り返って、また鳳凰卓で打ちたいです。

ここまで読んでくれた人がいるかは分かりませんが、ありがとうございました。

おまけ

大事なのは大差の徹底だけど、微差の選択を検討するのも楽しいんだよね。ちょうど今朝、微差の選択に迫られたので、NAGAの選択と併せて載せておきます。

ラス目のラス前親番で、七対子赤ドラドラor二盃口赤

NAGAの選択はこちら。

ニシキ:3s切りリーチ
オメガ:3s切りリーチ
カガシ:3p切りリーチ
ガンマ:3p切りリーチ
ヒバカリ:3p切りリーチ

おしまい

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