hisを鑑賞して

この作品は、マイノリティの人々の生きにくさを題材にしている。LGBTQ当事者の人々は、周りに自分が当事者であることを打ち明けることは簡単なことではない。人々は性に対する固定観念を持っているからだ。そんな中で打ち明けた主人公は、多くの人々に受け入れられて初めて認められた気持ちになった。主人公が住民の前で堂々とカミングアウトするシーンでは観る側に勇気を感動を与えている。またそれに対する住民の反応の優しさは、世の中のカミングアウトできなくて悩んでいる人々に希望を与えることが出来るのではないか。
また、シングルマザーの大変さについてもたくさん描かれていた。収入を得るために仕事をしなければいけない、でも子供の面倒を見なくてはいけない。そんな状況ではどちらかが疎かになっても仕方の無いことだ。しかし裁判では「母親の自覚があるのか」「子供は本当に幸せなのか」と容赦のない言葉を浴びせられる。社会的地位の低いといわれる人々の、一般的な正論に反論できない苦しさを感じる。
裁判のシーンでは、弁護士の悪意のない言葉の暴力が強く描かれていた。観る側にも固定観念にしか過ぎないものでも、共感してしまうような内容を多く盛り込んでいた。
序盤の主人公が川で寝ているシーンがある。そこでは、引きのカメラアングルで、人物の全体を中心に映していた。これは、主人公の孤独感を出すためだ。田舎暮しの設定ということもあり、画面の中には天気のいい空と山、静かに流れる川だけ、と無駄なものがない。そのため静寂の中にいる主人公だけを観ることになり、世界で彼しか居ないというような孤独感がでるのだ。周りにごちゃごちゃした物があるとほかの所に目がいってしまってそのシーンが何を伝えているのかが分かりにくくなる。
マイノリティの人々の生きにくさがテーマでもあるが、なによりこの作品で一番伝えたいことは、人と人との繋がりの大切さなのではないか。全ての問題はこの事につながっている。人は一人では生きれない。助け合わないと生きていけない。「誰かにあって影響を受けるのが人生の醍醐味」という台詞がある。つまり、色んな人から学んで色んな感性をもってこそ人生なのだ。この作品は、一つ一つの台詞に重みがありながらも希望をもてるようなものが多く、自分を見つめ直すきっかけになる映画だ。

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