若きオーエルの悩み

春、それは様々な人間関係が生まれては消える季節。

社員同士の交流のための新入社員を交えた全社での研修旅行を終え、私は疲弊していた。少なくなった歯磨き粉のチューブみたいに、私の僅かなコミュ力を絞りに絞ったのでもう終わった頃には絞りカスしか残っていなかった。途中、よほど冴えない顔をしていたのか他部署の初対面の新卒にタメ口を使われる始末。まあ年齢は上だけど社歴で言えば大して変わんないから別にいいけど。

最近、忙しくて事務作業(というかほぼ雑用)に手が回らないとのことで、他部署にヘルプで派遣され完全アウェーの中挙動不審で仕事をしている。他部署のフォローで自分のところの業務の精度に自信が無くなってきたところに新人教育をしろと言われ、未だに顔と名前を覚えられない新人に空元気で接する私。私は何をしているんだろう、と漠然とした不安と虚無感を抱えながら毎日オフィスへと向かう。

「そろそろまた旅行のスケジュール決めたい!」
既読をつけないためにスマホの通知センターでメッセージを確認すると、憂鬱で肩がずしんと重くなったように感じた。
前職にいた頃によく飲みに行っていた人たちとのLINEグループの通知だった。
私が仕事を辞めてからも何度か一緒に遊んだ。最初は楽しかったけれど、だんだん私のわからない職場での話や愚痴についていけなくなった。何より、私が仕事を辞めた原因の1つである元上司の話が出てくるのが嫌だった。そして職場の愚痴がひと段落したかと思うと、私だけがわからない韓流アイドルの話で盛り上がっている。

「私がわからない職場の話とか元上司の話とかされると不快なのでやめてください。」とハッキリ言えたらどれだけ楽だろうか。かと言ってそれ以外でみんなが楽しめる話題を私が提供できるのかと言われると自信が無い。「同じ職場」というつながりでしかなかった私たちには、それ以外に共通の話題なんて無いのだ。
いつしかその集まりが辛くなって何かと理由をつけて断っていた。あんなにお世話になった人たちなのに薄情だなと思う。自分から距離を置いてるくせに、それで向こうから縁を切られるのは嫌だと思っている自分が本当に醜いなとも思う。先述した旅行も、「私も行きたいです」と言っておきながら本当は行きたくなくて、「会社でまたコロナが流行っていて旅行ダメって言われたんです。」という理由をつけて断って、一度流れたものだった。
また当たり障りのない「断る理由」をこじつけるのか?移動時間や宿での時間、私がつらい話を我慢しながら過ごすのか?
未だに答えは出ず、LINEの通知は残ったままだ。

答えのない人間関係という悩みと、どんなに嫌な人であっても「嫌われたくない」と保身に走ろうとする自分への嫌悪が混ざり合っていく。夏の澱んだドブ川みたいな心が綺麗になる日は来るのだろうか。

まあ思い立ってこんな日記書いてるぐらいだし一生心にドブ抱えて生き続けるのかもしれない。

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