くるりのこと


私がくるりをきちんと聴きだしたのは本当に最近だ。いつぐらいって2014年からだ。去年だ。最近過ぎだ。

それまでの私の中でのくるりは、メンバーがコロコロと変わるバンドという印象で、ベストは持っていたものの、そこまで聴きこんでいる訳でもなく、時折気が向くとipodで流す程度だった。が、昨年リリースされた「Liberty&Gravity」という曲に思いっきり射抜かれた。更にそのタイミングで毎年行っているフェス、WORLD HAPPINESSに出演すると知り、ああこれも縁なのだ、と思いやっとこ既発のCDをじっくり聴いた。

そしてフェス当日、ライブを観てがっつりやられた。初めて観たくるりのライブは、変な言い方しかできないけれどとても「音楽」だった。当たり前のことなのだけれども、かれらから発せられる音がこちらに届きそれを私は楽しんだ。すごく誠実な音楽だった。ただ楽しく楽器を鳴らして歌えばいいというものではなく、音楽にまっすぐ向き合っていて、且つ楽しんでいる。うううまく言葉にできなくてもどかしいけれど、一言で言えばとても良いライブだった。

その後発売された「THE PIER」というアルバムも本当に本当に素晴らしくて、心があちらこちらに旅して、懐かしい気持ちになったり開放感に包まれたり、こんなにじっくり聴きこんだアルバムは久々で、慌ててアルバムツアーのチケットを申し込んだ。ライブ会場の中野サンプラザでは音が正面からドーン向かってくる感じだった。そしてその音が、ライブのあの興奮とか高揚感とは別にじわじわ染みてくる感じがするのだ。湖に投げ込まれた石が広げる波紋のように。曲が鳴るたびに新しい波紋が広がる。その揺らぎや余韻を感じるのがとても気持ちいい。こんなライブは初めてだったと思う。


私の中での音楽は、目には見えず触れもせずけれどもどうにも感情をゆさぶるあやふやなものだ。あやふやだけれどどうしたって魅力的だし良くも悪くも影響されるもの。そんな私にとってのくるりの音は、染み入るように響く。形がないその音に心の中のどこか端を引っ張られてじりじり伸ばされる。見えないそれを捕まえたくなるけれど、捕まえなければもっと遊んでいられる・・・と思ったりする。不思議だけれどそう感じるし、そんな風に自分の中へ入ってくる音はなかなかない。こんな音に出会えることは幸せなのだと思う。嵌って良かったくるり。これからも末永くお世話になります。

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